※文章中の画像をクリックすると拡大画像が表示されます。
執筆者:くるうさぎ
取材旅行

いも~れ!いのち輝く奄美大島、3泊4日の旅

執筆者:くるうさぎ
執筆者:くるうさぎ
魅惑の青い海、奄美大島の崎原ビーチ
魅惑の青い海、奄美大島の崎原ビーチ

◆1日目
1.いざ、初めての奄美大島へ! 2.魅惑のきょら海工房と、平家の落人を祀る平行盛神社 3.まぶしい青い海で、奇跡のウミガメスイム 4.楽し懐かし、島唄ひびく名瀬の夜

◆2日目
1.島人の暮らしを見守る、ユタ神様 2.まるで天国、崎原ビーチ 3.生き物たちのいのち輝くナイトツアー!

◆3日目
1.朝やけの浜辺でビーチコーミング~星の砂を探せ~ 2.フェリーでGO!お隣の加計呂麻島へ 3.伝泊『夕日と港の見える宿』で奄美料理クッキング!

◆最終日
1.ぶらり、笠利町さんぽ 2.延長戦決定!奄美パークへ 3.田村一村記念美術館~奄美を愛した画家~ 4.念願の鳥刺しと、最後の思い出アダンオンザビーチ

◆おまけ
おうちでトライ!奄美名物、夜光貝磨き

◆1日目

1.いざ、初めての奄美大島へ!

その日、奄美大島はほぼ晴れ予報。
ただし乗継便で経由する鹿児島が、大雨で悪天候。
そのため『使用する機体の到着が遅れ、条件付き運行となっています』というアナウンスがひっきりなしに流れている中部国際空港に、現在、私たちはいます。
今回の取材旅行のメンバーは、私、夫、次男の三人。
初めての奄美大島旅行ですが、始まりから軽い洗礼を受けています。
着けるの、奄美大島…?!

  • 翼のハートに気分が上がる?!
    翼のハートに気分が上がる?!

幸い、多少の遅れはあったものの、飛行機は無事離陸。
機体はけっこう揺れました。あの飛行機が上下に揺れる感じは何度乗っても慣れず、一人ひじ掛けにしがみつく私。
そんな中、窓側に座った次男が、飛行機の翼にハートが描かれているのを発見!
気分が上がる…と言いたいところですが、そんな時に限って揺れるんです。
トータルでも2時間足らずのフライトなのに、到着した時には心底ほっとしました。

では、空港でレンタカーを借りて、いざ、奄美大島の旅へ!(急に元気)
まずは、ホテルに荷物を預けにいきましょう。
今回の旅行の1・2泊目は、ホテルコーラルパームス。

安心感のあるリゾートホテル
安心感のあるリゾートホテル

『いもーれ!奄美大島』というホテルの看板を過ぎて、駐車場へ。
いもーれとは、いらっしゃい、という奄美ことば。あもーれ!ではありません。
ホテルコーラルパームスは、施設には年季が入っているものの、きれいなビーチも目の前にあり、安心感のあるリゾートホテルです。
チェックイン時間はまだ先でしたが、お掃除が済んでいるのでお部屋に入れますよ!とキーを頂いて、部屋に入り、荷物を整頓します。
それにしても、朝4時起きのせいでおなかが空いた!
さっそくランチに繰り出しましょう。

2.魅惑のきょら海工房と、平家の落人を祀る平行盛神社

ランチに訪れたのは、『きょら海工房 笠利店』。
『きょら』とは奄美の言葉で、美しい、きれい、という意味だそう。
案内されたのは、店内席。

この眺め、まさにきょら海!
この眺め、まさにきょら海!

ちょっとこの景色、素敵すぎるでしょう!
本当に名前の通りの美しい海が目の前に広がっています。
テラス席も捨てがたいですが、涼しい店内から
海を眺めるのもまた贅沢。
私たちがオーダーしたのは、この4点。 ・鹿児島産あおさとサーモンのピザ 1,980円 ・黒豚と彩り野菜のペペロンチーノ 1,320円 ・きょら海サラダ 880円 ・さとうきびジュース 440円 特に、あおさとサーモンのピザ。これはお勧め!
モッツアレラチーズが美味しくて、あおさの塩気とぴったり。
さとうきびジュースは、えぐみもなく自然な甘みが口に広がります。奄美だけにね!

  • あおさとサーモン、合います!
    あおさとサーモン、
    合います!
  • 素材そのままの色と味、さとうきびジュース
    素材そのままの色と味、
    さとうきびジュース

景色だけでなく、フードもレベルが高かったきょら海工房。
この旅への期待が高まります…!

さてその次は、平行盛(たいらのゆきもり)神社へ!
え?いきなり場違いな感じの名前が出てきたぞ!と思いましたか?
そう、平行盛はあの平清盛の孫。
奄美には、平家の落人が、この島に逃れてきたという言い伝えがあり、彼らを祀ったゆかりの神社が3つもあるんです!

  • 南国の風景に建つ鳥居
    南国の風景に建つ鳥居
  • 遠く奄美の地で眠る、平家の落人
    遠く奄美の地で眠る、
    平家の落人

壇ノ浦の合戦で敗北した後、平資盛(すけもり)、有盛(ありもり)、そして行盛は奄美まで落ち延びて、この地を征服。
資盛は諸鈍、有盛は浦上、行盛は竜郷町戸口に城を築き、敵に備えたといいます。
壇ノ浦から奄美大島は、直線距離でも700km以上。
よくぞここまでたどり着いたものですよね。
南国情緒漂う奄美大島に落ち延び、本土からの襲来に備えつつも、やがて奄美大島に溶け込み島の人間として生きていった彼ら。
この美しい島は、新天地に見えたでしょうか。

神社内の看板には、行盛は漁業や農業(田植えなど)の技術を伝えたと記されています。
境内には草がけっこう生えているので、ハブに気を付けてお詣りしてくださいね!

3.まぶしい青い海で、奇跡のウミガメスイム

さて午後の予定は、奄美で最初のアクティビティ、ウミガメスイム!
アオウミガメを見られるというシュノーケリングツアーです。
事前に、90%以上の遭遇率を誇るというON SHORE(オンショア)さんのツアーに申し込んであります。楽しみ!

今日の海は少し波があり、訪れるポイントが沖合からビーチへと変更に。
ビーチエントリー(砂浜から海に入っていくこと)は、波打ち際に座って足にフィンをつけ、海に背を向けて後ろ向きに歩いていきます。
泳げる深さになったら、前を向いてGO!
インストラクターのカナさんが救難用の浮き輪を持って引っ張り、はぐれないようそれにつかまって泳いでいきます。

100年ほど昔、この海岸では何か海藻を養殖していたのだそう。
そのために岩などを撤去して平らにしたため、水底は見通しが良い砂地が広がっています。
海藻の養殖をしなくなってからは、生えてくる海藻を目当てに亀さんが食事にくるようになったのだとか。
「ここの亀さんはとても人に慣れてるから、平気で寄ってくるよ!ただし、絶対にさわらないようにね」
とカナさんからの注意があります。

お食事中のアオウミガメ
お食事中のアオウミガメ

水深3mほどまで深くなったところに来たら、いました!
亀さんがせっせと海藻を食べています。
「しばらくすると、呼吸をしに上がってくるよ!その時がシャッターチャンス!」
カナさんの説明を聞きながらアクションカメラで撮っていると、突如、亀さんが水面に向けて上昇を開始。
なんと、こちら目掛けて上がってくるではありませんか!
私たち家族はびっくり。
手が届く距離まで近づいてきたので、私たちの方が焦って距離を取りました。
横を泳ぎながら、夢中で写真を撮ります。

まったく人を怖がらない亀さん
まったく人を怖がらない亀さん

しばらくして、亀さんはまた海底へ。
「じゃあ、そろそろ他の亀さんを探しながら、岸に戻りましょう」
とカナさん。
岸まで泳ぎついて立ち上がると、思った以上にフラフラです。
泳いでいたのは、40分ほどでしょうか。

車で移動し、ツアーで手配されたネイティブシー奄美のシャワールームで着替えました。
初っ端から奇跡のような経験をし、興奮冷めやらぬ私たち。
逃げるどころか寄ってくるということは、亀さんたちは、この海の人たちが自分を脅かさないことを知っているのですね。奄美の人たちの努力の賜物なのでしょう。

この先もずっと、こんな平和な海でありますように
この先もずっと、こんな平和な海でありますように

これからも彼らが安心して泳げる海であってほしい!そう強く願います。
カナさんは何度も口にしていました。
『私たち人間は、海にお邪魔している立場だからね』
その感覚を、忘れないようにしたいものです。
カナさんと別れ、奄美大島随一の繁華街、名瀬に向かいます。

4.楽し懐かし、島唄ひびく名瀬の夜

名瀬は、奄美大島で一番の繁華街。
空の玄関、奄美空港が北東部にあるのに対し、名瀬は鹿児島からフェリーが通う海の玄関。
港町らしく、居酒屋もたくさん集まっています。
その中で、私たちは民謡居酒屋『島唄まぁじん』にお邪魔しました。
こちらでは、美味しい奄美料理を頂きながら、島唄ライブを楽しめるんです!

島唄ライブが行われる島唄まぁじん
島唄ライブが行われる島唄まぁじん

夫お気に入りの島もずく、島豚と島豆腐サラダ、タコから揚げ、角煮などを注文します。
お酒を飲まない夫氏と、飲めない私なので、お酒は頼まず。
ドリンクメニューには、ミキとくびき茶という飲み物がありました。

・ミキ…お米と甘藷、砂糖で作られた伝統の飲み物。神様へのお供え物として作られていたそう。 ・くびき茶…ツルグミという植物を使った、昔から飲まれている健康茶。 むむ、これは気になる!

ミキとくびき茶、どっちがおすすめですか?と店員さんにきいてみたところ、
「ミキは甘酒みたいな感じですね。くびき茶はかなり癖があるので…」
ということだったので、ミキを頼んでみました。

  • ミキ。真っ白でとろりとしている
    ミキ。真っ白でとろりとしている

グラスを近づけてみると、ちょっと酸っぱいような、ツンとした香りがします。大丈夫かな?
口に含んでみると、とろりとしていますが、意外なほどすっきりとした甘さです。甘酒より飲みやすい!

  • 豚飯と玉子おにぎり。どちらも美味しい~
    豚飯と玉子おにぎり。どちらも美味しい~

豚飯は奄美名物の鶏飯の原型なのだとか。スープがかかっていてさらりと食べられます。 家庭の味、玉子おにぎりにはランチョンミート添え。

ウミガメスイムでおなかを空かせた私たちがどんどんお料理をたいらげていると、年配の男性と女性がお店に入ってきました。
そう、今夜の島唄ライブの唄い手さんと、三線担当の方でした!

島唄ライブが始まりました。
奄美では、生活の中に島唄があります、と唄い手の女性は語りました。
何百年も前から、親から子へと受け継がれてきた唄たち。
そのメロディは、先生が少しずつアレンジしていくので、習う先生によって少しずつ異なるのだとか。

どの歌も、初めて聞くのにどこか懐かしい。
労働歌である『よいすら節』や、大会で優勝した牛の周りで『わいど!(よくやった!)』と飼い主がねぎらう『わいど節』などなど。
唄い手さんが振りを教えてくれるので、みんな唄に合わせて踊ります。

最後は『島のブルース』。
歌い手さんが振りを教えてくれます。
手首をくるりんと内側へ、福を招く。
みーぎ、ひだり、はらって、チョン!

  • 唄い、踊り、いのち輝く
    唄い、踊り、いのち輝く

『島のブルース』は1963年リリースの、三沢あけみが歌う大ヒット曲。
作詞作曲の渡久地政信は奄美大島出身。
彼が手掛けた歌は、奄美や沖縄民謡がベースとなっています。
懐かしくおおらかで、なのにどこか切ないのは、ふるさとを想う心を感じるからでしょうか。

♪ながぁ~い~黒髪~ し~まむ~すぅ~め~

奥の座敷では総立ちで、老いも若きもにこにこと踊っています。
指笛を真似している人も。子供たちも、赤ちゃんもお父さんの胸に抱かれて参加。
両手を貝のように組み合わせ指笛を吹く人も。

奄美大島は、時代によって琉球王国や薩摩藩に支配されてきました。
そんな中でも、声を合わせ心を合わせて皆で歌い踊り、いのちを輝かせ人々は生きてきたのです。
島唄まぁじんで過ごした時間は、現代人が忘れているものを思い出させてくれるようなひとときでした。

◆2日目

1.島人の暮らしを見守る、ユタ神様

ユタ神様を知っていますか?
ユタとは、奄美群島や沖縄の、女性の民間のシャーマン(巫女)のことです。
いわゆる霊能力者であり、神様の声を伝え、暮らしの中の問題などを解決する役割を負ってきたのです。

今回、松井さんというユタ神様を紹介して頂き、訪れることができました。
神社仏閣や民間信仰に興味のある私ですが、実際に神秘的な力を持つという方にお会いするのは初めてで、楽しみなような、少し怖いような気持ち。
ユタ神様のもとへは、焼酎と塩を持っていきます。

茅の輪のある高千穂神社
茅の輪のある高千穂神社

レンタカーで夫に送ってもらい、約束した9時少し前、松井さんの家の近くの高千穂神社へ着きました。
せっかくなので、お参りして茅の輪くぐりをします。
坂道をのぼり、電話で指示された細い道を入っていくと、そこに松井さんが立っていました。
修行者の着るような白装束に身を包んだ、小柄でチャーミングな目元をした年配の女性です。

通された和室に祭壇があり、しめ縄と天照大御神の名前の軸がかかっています。
私が言われた通り塩でお清めをすると、祭壇に向かい、松井さんは酒をふり祝詞を唱えます。

○○県に住んでいる?
年齢は××ですか?
干支が丑年のご家族がいますね?

事前に何も話してはいないのですが、松井さんはどんどん質問してきます。
全てが当たっているわけではありませんが、かなりの的中率です。

・私の性格は、真面目だけれどもちょっと抜けている(見抜かれている…!) ・最近始めた仕事は向いているので、どんどんやればよい ・主人もとても几帳面、仕事についての情熱はあるものの悩みがあるが、これはあまり真正面からいろいろ言ったり深刻になったりせず、ねぎらいながらも受け流すくらいがよい ・子供は二人で、丑年と戌年の男の子

ある程度、観察によって推測できる部分もあるでしょうが、それ以上に鋭い指摘が飛んできます。
一通り家族の話が出て、アドバイスを頂いたところで、松井さんは私のほうに向きなおり、
『それで、いままで出てきたことのなかで、あなたが一番心に引っ掛かっていることは何かしら』
と言います。

私は、反抗期の長男のことを話しました。
今回の取材旅行にも誘いましたが、彼は拒否して家に残りました。
近くに住む夫の両親に事情を話して頼んできていますが、やはり寂しい。
多感な時期だけに、様々な葛藤があるのを感じながらも、うまく接することができないのが悩みなのです。

チーン!と鉦を鳴らして祝詞を唱え、再び向きなおって松井さんは言いました。
『長男さん、この方はとても頑固ね。真面目でいろいろと才能はあるけれど、自信が足りなくて、まだ発揮できていないだけ。でも、自分の納得したことでないと、てこでも動こうとしないのね』
まさに、長男の性格の核心をついている言葉でした。
『彼に対しては、とにかく褒めること。上から言って押さえつけてはだめ。どんどん褒めてあげてください。親があれこれ言わずに、彼が自分の信じた道を行くのが一番です』

私は深く頷きました。
素直に耳を傾けることができる自分がいます。
『それからね、次男さん。こちらはすごく主張が激しい子でしょう。この子の場合はね、わかるまでとことん説得しなさい。それで大丈夫な人ですから』
これもまた、次男の性格を正確に言い当てています。

『大丈夫、ふたりともいい子たちですから。あなたも一生懸命だし、ちゃんと通じていますよ』
やさしく諭すような口調に、思わず涙がこみあげてきます。
心の奥底に引っ掛かっていたものが、ほどけていくようです。
謝礼をお渡しし、松井さんの家を辞します。

  • ユタ神様の言葉に、心ほぐされる
    ユタ神様の言葉に、心ほぐされる

ひとつ気づいたことがありました。
『神様がこう言っている』ということは、松井さんは一言も言わないのです。
押しつけがましいことは何一つ言わず、こうした方がいいんじゃないかしらね、こうするといいと思いますよ、という気持ちに寄り添うアドバイスを下さるのです。

物事を見通す神秘的な力や、鋭い洞察力と的確な指摘。
それらの働きも大きいのでしょうが、きっとそれだけではありません。
威厳はあるけれどやわらかい物腰、あたたかく包み込むような口調と微笑み、そういったものに人々は心をほぐされ、頼れる存在としてユタ神様は長いことこの島で尊敬を集めてきたのではないでしょうか。
ハイビスカスの咲く坂道を下りながら、私は気持ちが晴れ晴れとしてくるのを感じました。

2.まるで天国、崎原(さきばる)ビーチ

夫に迎えに来てもらい、家族で崎原ビーチへ向かいます。
ここは、控えめに言って天国のよう。

見てください、崎原ビーチの美しさ!
見てください、崎原ビーチの美しさ!

水色のベンチや、沖合にフォトスポット用の白いボートなどあり、おっしゃれーなビーチです!
人も少なく、ゆったりと海遊びを楽しめます。

  • アダンの木の下の、青いベンチ
    アダンの木の下の、
    青いベンチ
  • 写真を撮ったり、飛び込んだり
    写真を撮ったり、
    飛び込んだり

ここで、読んで下さっている方にお願い!
小さなお子さんには、必ずライフジャケットをつけてあげてください!

この旅行とほぼ同時期に、奄美大島のビーチで海難事故がありました。
お子さんが流され、救助したご家族が亡くなるといういたましい事故です。
ライフジャケットは多くのホテルでレンタルもしていますし、レンタカー屋でオプションとして貸出しているところもありますので、ぜひご利用を。
川や海によく行く我が家でも、中学に入るまでは毎回必ずつけさせていましたよ。
そのおかげで助かったと思う場面も、実際ありました。

浮き輪は一度外れるとつるつると滑り、案外危ないです。
しかも、風があると意外と早く流されていくので、風にも注意。
風速6m/秒を越えると危険ですよ。
それに、旅行中は何かと無理をしがち。
ビーチの様子、ご自分とご家族の体調をしっかり観察し、絶対に無理をしないでくださいね!

海上保安庁のHPに、詳しく書いてありますので、海のレジャーの前にぜひご覧くださいね。
楽しい旅行を無事に終わらせ、素晴らしい思い出にできるように…

海上保安庁公式HP 海で遊ぶときの注意
https://www6.kaiho.mlit.go.jp/watersafety/swimming/02_attention/

さあ、12時を過ぎました。 まだまだ波と戯れたいですが、楽しみにしているナイトツアーが控えています。 ナイトツアーは19:30から。帰りは12時近くなる予定。 それに備えて、ホテルに帰ってゆっくり休みましょう。 ビーチのシャワーを借りホテルへ戻ると、思ったより疲れがたまっていたのか、三人ともぐっすり眠ってしまいました。

3.生き物たちのいのち輝くナイトツアー!

さて、16:30になりました。
ナイトツアーの出発点、中南部の黒潮の森マングローブパークへ向かいます。
ツアーは19:30集合なので、その前に夕飯を食べたい!
昨日のウミガメスイムの時にカナさんがお勧めしてくれた鳥刺しが食べたくて行ったお店が予約でいっぱいだったため、『そばくろう』へ。

つばくろうならぬ、居酒屋そばくろう
つばくろうならぬ、居酒屋そばくろう

開店直後でまだ誰もいません。鳥刺しはメニューにないけれど、刺身の大盛ともずく酢、おろしそばなどをオーダー。
お刺身は脂がのっており、甘エビも新鮮。
甘みがあるけれどさらっとした奄美の醤油がまた合います。
蕎麦がまた、細くて繊細で、ご主人の性格を表しているよう。

  • 奄美で初めて食べたお刺身、美味!!
    奄美で初めて食べたお刺身、美味!!
  • 繊細な手打ちの山芋とろろそば
    繊細な手打ちの山芋とろろそば

旅行中はどうしても外食ばかりで胃腸が疲れがちですが、温かいそばやうどんならおなかに優しいですね。
どんどんお客さんが入ってきます。人気店だ!

さて、黒潮の森マングローブパークに集合します。
ここはいろいろなショップのナイトツアーの発着地になっているようで、ジープやミニバンなどが集まってきています。
みんなお客さんを乗せて、順番に出発。
私たちも黒潮の森マングローブパークのネイチャーガイド川内さんと合流し、ツアー車に乗り込みます。

車で10分ほどの金作原(きんさくばる)原生林へ。
奄美大島の貴重な生き物たちが住む、天然の亜熱帯広葉樹が広がる自然保護公園です。
自然保護の観点から、平成31年以降、資格を持つネイチャーガイドと一緒に入ることが義務付けられました。
ツアー車も30分に1台ずつ入ることと定められており、生き物たちの生態が乱されないよう配慮されています。 ナイトツアーは、金作原の道を巡って約3時間。
ガイドの川内さんによると、なかなか生き物に出会えない時は、5時間もかけたことがあったそうです。

  • 奄美大島でしかみられない標識!
    奄美大島でしかみられない標識!

ナイトツアーで最初に見たのは、アマミノクロウサギの標識。
アマミノクロウサギは、奄美大島と徳之島にしか生息していない固有種のため、奄美地方にしかないレア標識なのです。

・モダマ

  • 40cmはある大きな豆、モダマ
    40cmはある大きな豆、モダマ

ジャックと豆の木のモチーフにもなっているという巨大な豆。
奄美大島で生えているのがここだけだそう。
島の外から流されてきた実が根付いたもので、大昔この場所が海の底だったという証拠なのだそう。ロマンですね。

・アマミノクロウサギ

  • 国の特別天然記念物、アマミノクロウサギ
    国の特別天然記念物、
    アマミノクロウサギ
  • こんな感じで探します
    こんな感じで探します

普通のウサギは一度に4~8匹の子を産みますが、アマミノクロウサギは1匹しか生まず、大事に大事に育てるそう。
一時期は5000匹にまで減ってしまったんです、と川内さん。
原因は、ハブ退治のために輸入されたマングース。
始めは5、6匹だったマングースがどんどん増えて、固有種のネズミやアマミノクロウサギを襲い、一気に減ってしまったそうです。
数十年マングースの駆除を続けた努力が実り、アマミノクロウサギは現在2~3万匹まで回復しているそう。
これで安泰かと思われたのですが、今度はノネコが増えつつあり、現在も対策が続いています。

奄美大島には、絶滅危惧種のカエルが3種。
・ハナサキガエル…渓流などに住む、手足が長いスマートなカエル。 ・オットンガエル…別名ウシガエル。田んぼでよく鳴いているのは、外来種のアメリカウシガエル。 ・イシカワガエル…日本一美しいカエルとして有名。 カエル好きの次男は、ナイトツアーでその3種を見ることを楽しみにしていました。

  • とても足長なハナサキガエル
    とても足長な
    ハナサキガエル
  • オットンガエル。オットンはお父さんの意
    オットンガエル。
    オットンはお父さんの意

リクエストに沿って、川内さんが2種とも見つけてくれました。
残るはイシカワガエルのみ。
しかし一番見るのが難しいカエルだそうで、川内さんが把握している住処を探しても、なかなか見つからず。
次男のために、川内さんが足元の悪い沢まで降りて探してくれました。
「いたよ!一緒に下まで行ける?」
呼びに来てくれた川内さんに、次男がおそるおそる沢に下り、ついていきます。
「うわ!いた!きれい…」
小声ながらも興奮した次男の声が聴こえてきます。
川内さん、ありがとう!

とうとう会えた!美しいイシカワガエル
とうとう会えた!美しいイシカワガエル

他にも、素早すぎて写真が取れないトゲネズミ、姿は見えねど声は聞こえるリュウキュウコノハズクなど、夜の生き物たちにたくさん出会うことができました。
川内さんのおすすめの季節は、3月。
奄美大島が一番美しい季節なのだといいます。
ホエールウォッチングも、ナイトツアーも、珍しい植物の花も見られるよくばりな季節だそう。
皆さん、ここテストに出ますからね!

昨日のウミガメスイムのカナさんもそうでしたが、やはり専門知識を持っているガイドさんとのツアーは大事。
少人数だからこそ徹底した説明を受けられるし、細かいコンディションに対応できる。
奄美大島のネイチャーガイドさんの質の高さを感じました。
ご旅行の際はぜひ、ナイトツアーに参加してみてくださいね!

◆3日目

1.朝やけの浜辺でビーチコーミング~星の砂を探せ~

朝起きると、夜中に雨が降ったようで、水平線に雨雲が残っています。
今朝の散歩の目的は、星の砂探し。
ホテル内に、『このビーチには星の砂があります。探してみてね!』との掲示を見つけたのです。
薄紫とピンクに染まる柔らかな朝焼けの中、砂浜で星の砂探し開始!

ビーチコーミングという言葉をご存じでしょうか。
コーミングはCombing。櫛(comb)で髪をとかすように、念入りに捜すこと、の意。
美しい貝やビーチグラス、ごくまれにメッセージボトルを見つけることも。ロマンですよね~!

  • 美しい朝焼けの浜辺
    美しい朝焼けの浜辺
  • こんなものが見つかりましたよ
    こんなものが
    見つかりましたよ

ビーチコーミングは朝イチで行くのがお勧め。
夜のうちに打ち上げられたものが見つかります。
今朝は、変わった巻貝や、小さなシャコ貝などが見つかりました。
左の巻貝は、後で調べたら海の貝ではなく、オオシママイマイという奄美大島固有種のカタツムリの殻でした。
山から流されて、しばらく漂っていたのでしょうか。

30分ほど探しましたが、星の砂は見つからず…。
フロントの方に聞いたら、やはりなかなか見つからないそうです。 黒い紙の上に砂を広げると、わかりやすいんですって。

さて、奄美大島滞在も3日目。
今日は、奄美大島のすぐ南西に位置する加計呂麻島へ。
ホテルから1時間半かかる奄美大島の南端、古仁屋港へ向かいます。

フェリーかけろまで加計呂麻島へ
フェリーかけろまで加計呂麻島へ

フェリーは時間通り出航。
加計呂麻島は海を挟んですぐ目の前。20分で到着です。

2.フェリーでGO!お隣の加計呂麻島へ

加計呂麻島に着いて実感したのは、海がきれいなことと、山が海まで迫っていること。
平地がとにかく少なく、小さな島にいるとは思えないような細い山道が続きます。
勝手にリゾートのようなイメージを抱いていたのですが、加計呂麻島の自然は骨太でした。

ここでの目的は、大屯(おおちょん)神社。
平行盛神社に続く、平家の落人の神社です。
祀られているのは、平資盛。

  • 加計呂麻島にある大屯神社
    加計呂麻島にある大屯神社
  • 大屯神社の由来が語られる
    大屯神社の由来が語られる

加計呂麻島には、諸鈍シバヤーという800年の歴史を誇るお祭りがあります。
シバヤーは、芝居のこと。

諸鈍シバヤーの案内板
諸鈍シバヤーの案内板

このお祭りは、本土からこの島に逃れてきた平資盛を慰めるために始められたものだということです。 ということは、資盛は島の人たちから慕われていたということなのでしょうね。
諸鈍シバヤーは、毎年旧九月九日に行われ、2023年10月も開催予定です。
平家の落人を慰めるお祭り、ぜひ一度見に訪れたいものです!

3.伝泊『港と夕日のみえる宿』で奄美料理クッキング!

午後のフェリーで古仁屋港に戻り、ひたすら58号線を北上、再び笠利町を目指します。
3泊目の今日宿泊するのは、伝泊。
こちらも、奄美大島に行かれるならぜひ、お勧めしたい宿泊施設のひとつ。
キャッチコピーは、『奄美に暮らすように泊まる』。
伝統的な奄美の家を宿泊用に貸し出している『伝泊 古民家』と、伝統的な島の家に着想を得たラグジュアリーな『伝泊 The Beachfront MIJORA』との二つのラインがあります。

『伝泊 古民家』のほうは、奄美大島の笠利町に8か所、加計呂麻島に2か所(準備中がさらに2か所)、さらに徳之島に6か所。
『アダンと海みる宿』『はたおり工房のある宿』『サンゴ石垣と庭木の宿』などと銘打たれた、島での生活が思い浮かぶ魅力的な古民家ばかりです。

伝泊 公式ブランドサイト
https://den-paku.com/

今夜私たちが泊まるのは、『港と夕日のみえる宿』。
チェックインは、本部である伝泊奄美ホテルで行います。

伝泊 奄美ホテル。ここでチェックイン
伝泊 奄美ホテル。ここでチェックイン

実際に泊まる施設はここから車で5分ほど。
スタッフの方が先導してくれます。

  • こちらが、港と夕日がみえる宿
    こちらが、
    港と夕日がみえる宿
  • 裏庭には、バナナが植わっている
    裏庭には、
    バナナが植わっている

台風の風を逃がし被害を防ぐため、軒下が風が通る造りになっているのですが、これは現在の建築基準法に適合しないため、改築ができないそうです。
そこで、保存のために宿泊施設として貸し出しているのだそう。
これは素晴らしい試みですね。

間取りは伝統的な奄美の住居そのままに、水回りはきれいにリフォームされており、快適に過ごすことができます。

  • 中に入れば、奄美の伝統の間取り
    中に入れば、奄美の伝統の間取り
  • キッチンもきれい!
    キッチンもきれい!
  • 古民家だけど、おしゃれな読書スペースが
    古民家だけど、
    おしゃれな読書スペースが

奄美料理を体験できるプランを選択していたので、スタッフの方が食材のセットを持ってきてくれました。
もう、容れ物からしてとってもおしゃれ。

  • 奄美料理のレシピと食材
    奄美料理のレシピと食材
  • 左:油そうめん 中:玉子おにぎり 右:味噌だれ野菜炒め
    左:油そうめん
    中:玉子おにぎり
    右:味噌だれ野菜炒め

本日の奄美料理はこの三品。
・油そうめん
沖縄のそうめんチャンプルーのようですが、なんと材料に、いりこが入っています!
いりこが水分を吸ってやわらかくなり、ベースの白だしと味がなじんでおいしい。
カルシウムもしっかり摂れちゃうので、家でもやってみよう!

・野菜炒め
普通の野菜炒めに地物野菜のハンダマを加え、特製の味噌だれで味付け。
ハンダマは葉が紫色のキク科の野菜で、沖縄や奄美で健康野菜として親しまれているとか。
石川県では金時草と呼ばれています。
ビタミンA、B2、鉄分があり、紫の色はポリフェノール。体によさそうです。

・玉子おにぎり
具は、いかみそと梅干。
いかみそは、いかを炒めて奄美の島味噌、島ザラメ、かつおぶし粉やピーナツ粉、ごまなどと和えたものだそう。
甘めで美味しく、ごはんが進みます!
きっとおつまみにも最高。
玉子おにぎりは、おにぎりを作り薄焼き卵で巻く。シンプル!
簡単なのにおいしいのは、いかみそと島の塩のおかげかな?

自分で作った奄美料理、どれも美味しくいただいたら、夕焼けを見に行きましょうか。
外へ出て、ゆっくりと暮れていく港の夕景を眺めていると、本当に島で暮らしているような気持になってきます。 この充足感はきっと、伝泊ならでは。

港の夕景
港の夕景

夜、キッキッ、キッキッと何かの声が聞こえました。
『得体のしれないものが鳴いてる!』と本部フロントに電話をかけてくるお客さんもいらっしゃるのだとか。
安心してください。これはヤモリの鳴き声です。
漢字で家守と書く、小さな家の守り神なんですよ。

◆最終日

1.ぶらり、笠利町さんぽ

とうとう、奄美大島での最後の日が来てしまいました。
チェックアウトまでの空き時間で、笠利町を散策することにしました。

  • 奄美の伝統的なサンゴの石垣
    奄美の伝統的な
    サンゴの石垣
  • 植木と調和している
    植木と調和している

目についたのは、奄美大島の伝統的な塀だというサンゴの石垣。
サンゴといっても、奄美のビーチによく打ち寄せられている、平たいもの。
それのずっと大きなものがみっちりと積まれているのです。
生垣のハイビスカスの花と、美しく調和しています。

現在ではブロック塀の家が多いですが、すべて台風の風を防ぐための、生活の知恵。
家の周囲に必ず樹木が多く植えてあるのも、その一つなのでしょう。

レンタカーを返す前に、あやまる岬へ。
こんなフォトスポットが用意されていましたが、次男は『俺はいいよ』と辞退。
彼もそろそろ、親との旅行はしてくれなくなりそうです…。

ドラえもんが出してくれそうなフォトスポット
ドラえもんが出してくれそうなフォトスポット

展望台までの道を歩いていると、熟れて地面に落ちたアダンの実にヤドカリが群がっています。
中にはこんな大きなヤドカリも!大きさが8センチほどもあります。強そう。

  • 大きなヤドカリが道を横切る
    大きなヤドカリが道を横切る

あとで調べてみたら、天然記念物に指定されているムラサキオカヤドカリでした!
人間から逃げようと、わっせわっせとアダンの落ち葉に潜り込んでいるところです。

奄美での、最後の海を焼き付けよう
奄美での、最後の海を焼き付けよう

展望台からの眺めは最高。
こんなきれいな海の奄美大島、また戻って来たい!

あやまる岬に別れを告げ、レンタカーを時間通りに返却し、奄美空港へ。
空港の売店で、長男や夫の両親へのお土産を購入。
『まえだ屋』さんで、夜光貝磨きキット(¥980)を見つけ、自分用に購入しました。
奄美パークで見た夜光貝みたいにきれいに磨けるかな?

あとはフライトを待つばかり。気になるのは鹿児島の天候です。
ずっと天候不順が続き、便に遅れが出ているよう。
離陸予定時間を過ぎて20分、アナウンスが流れます。
『11:50発のスカイマーク××便は、鹿児島での視界不良のため、欠航が決定いたしました…』
思わず手元のチケットを確認。間違いなく××便です。

急いで空港会社のカウンターへ戻り、スタッフさんに確認。
『引き返しまたは福岡へ着陸』の条件付き運行で乗るか、夜便に振り替えるか。
ちょっと悩んで、決断しました。
「夜の便に振り替えお願いできますか?」
素晴らしかった奄美旅行、まさかの延長戦に突入です。

2.延長戦決定!奄美パークへ

欠航が決まってから30分ほどで振り替え便の発券が済み、再びレンタカー屋へ走ります。
とにかく、車がなくては何もできないのです。
幸い空いている車があり、借りる手続きができました。
よかった!

さあ、延長戦でどこへ行きましょうか。
まず空港からほど近い奄美パークへ。
奄美パーク内には、奄美の郷と田中一村記念美術館があります。
どちらも見ごたえがあるので、共通回覧券の購入をお勧めします!

奄美を学べる、奄美の郷
奄美を学べる、奄美の郷

奄美の郷は、奄美群島の紹介コーナー。
特に興味深かったものをご紹介します!

・夜光貝
厚い真珠層を持ち、食用だけでなく装飾品として昔から使われてきました。
九州の古墳や正倉院、韓国の大伽耶王陵からも、夜光貝の形をうまく生かした匙(さじ)が見つかっています。
その美しさから、遠く海を越えて取引されていたのです。

見事に磨かれた夜光貝と、貝から作られた匙
見事に磨かれた夜光貝と、貝から作られた匙

・伝統的な住居の展示
奄美地方の家が再現されており、フォトスポットにもなっているのでおじいと一緒に撮ることもできますよ!
ここの特徴は、中に上がれること!
機織り機や奄美の祭事の料理模型などがありますので、じっくりご覧あれ。

おじいと写真を撮ろう!
おじいと写真を撮ろう!

・手で触れてみよう、奄美の楽器

  • 触れてみよう、奄美の三線
    触れてみよう、奄美の三線

おじいの家の中でぜひ見ていただきたいのが、素敵な三線。
なかなか触れる機会がないと思うのですが、ここでは手に取ってつま弾くこともできるのです。
ヘビの皮が張られており、胴には保護のためか、きれいな刺繍をほどこした帯が巻かれています。
首は美しい漆塗り。
ああ、こんな素敵な楽器を弾きこなせたら素敵だろうなあ…。

3.田村一村記念美術館~奄美を愛した画家~

三線に触れてうっとりしたら、お次は田中一村記念美術館へ。

  • 田中一村記念美術館
    田中一村記念美術館
  • 奄美の伝統的な倉庫、高倉を模した展示室
    奄美の伝統的な倉庫、
    高倉を模した展示室

栃木県で彫刻師の息子として生まれた一村は、画家を志し、東京美術学校(現・東京美術大学)に入学。
同期には、あの東山魁夷、加藤栄三、橋本明治らがいます。
しかし、一村は家事を理由に退学してしまいます。
生活の為に絵を描き、展覧会への入選と落選を繰り返しながら、自分が心の赴くままに描く絵が認められないことに苦しみます。
弟や母を早くに亡くしながらも、一村はやがて紀州や四国、九州へと創作の旅に出ます。
それは生活のためではなく、画壇に認められ名声を得るためでもなく、自らの求める絵を創り出すためでした。

一村は、奄美に移住し、紬の染色工として必死に働きながら絵を描くという生活を始めます。
彼が知人に宛てた手紙には、胸を突かれるような痛切な響きがあります。
“その時芽生えた真実の絵の芽を、涙を飲んで踏みにじりました…(中略)…やっと最近6カ年の苦闘によって再び芽吹き…”
“この軌道を進むことは、絶対に素人の趣味なんかに妥協せず、自分の良心が満足するまで縛りぬくことです” “私がこの島に来ているのは…(中略)…私のえかきとしての生涯の最後を飾る絵を描くために来ていることがはっきりしました”
写真には、蒸し暑い部屋の中、作業をする痩せた一村の姿が映っています。

特別展示室には、一村が奄美で描いた絵が展示されています。
奄美の自然に魅せられた彼の作品は、濃厚な南国の香りたつような蒸し暑さや、植物たちが繊細に、しかしくっきりと描かれ、彼が『自分の求める絵』をはっきりとつかみ取ったことが伝わります。

『御殿のようだ』と評した小さな家に引っ越し、たった11日で心筋梗塞のため死去。
69年の生涯でした。
奄美での作品は、すべて未発表のまま残されていたといいます。
ここを訪れるまで、田中一村という画家について知らなかった私ですが、ここを訪れてよかったと思いました。
奄美を愛し、奄美を描き、奄美に死す。
そんな、田中一村というひとを知ることができてよかった、そう感じます。

  • 奄美を愛した画家、田中一村の像
    奄美を愛した画家、田中一村の像

私には珍しく、ミュージアムショップでフレームアートを購入しました。
残照の中、繊細な蘇鉄の葉のかたちを浮かび上がらせた一村の作品を、家に連れて帰ります。
奄美を愛する心と一緒に。

4.念願の鳥刺しと、最後の思い出アダンオンザビーチ

さて、遅めの昼食を食べましょう。
そうだ、昨日食べられなかった鳥刺し!
ということで、鳥刺しが食べられるという『ひさ倉』というお店に行くことにしました。

ひさ倉。鶏飯の有名店です
ひさ倉。鶏飯の有名店です

もちろん、鶏飯と鳥刺しをオーダー。
一日目の夜に、島唄まぁじんで豚飯は食べましたが、そういえば鶏飯は食べていなかったので、ちょうどよかった!

  • お好みの具をのせ、鶏だしをかけていただきます!
    お好みの具をのせ、鶏だしをかけていただきます!
  • 鳥刺しは臭みもなく、歯ごたえ抜群
    鳥刺しは臭みもなく、歯ごたえ抜群

あつあつのごはんの上に、細かく裂いたささみと、錦糸卵、甘く似たしいたけ、紅ショウガ、ねぎ、のりを乗せ、鶏ガラで出汁をとったスープをかけます。
暑い季節にもさらさらと食べられて、栄養もたっぷり。これは癖になりそう!

鳥刺しは、見た目は本当にお刺身のよう。
鶏肉というから少し臭みがあるのかな?と思っていましたが、まったく臭みもなく、歯ごたえがあり美味しい! 次男が気に入ってどんどん食べていました。

さてここで、レンタカー返却まで残り2時間となりました。
もう明日に備えて、どこかでレジャーシートを敷いて休もうかと考えていましたが、海大好きの夫がおもむろに、 「最後に、行きたいビーチがあるんだけど」
と言い出します。ギリギリまで粘るつもりだな!

やってきたのは、龍郷町のアダンオンザビーチ。
奄美で一番海に近いホテル、ネイティブシー奄美の真ん前に位置します。
波がまったくなく、今までで一番静かで透明度の高いビーチに大興奮。
「帰り支度を考えると、もうあと1時間もないけど、これは泳ぐしかない!!」
と、シュノーケリング好きの我が家は繰り出します。

穏やかで美しい、アダンオンザビーチ
穏やかで美しい、アダンオンザビーチ

湾の奥のため波がないので、水深5mくらいのところまでフィンなしでも泳いでいっても、恐怖心なし。
昼過ぎの魚が少ない時間でしたが、深い所にはたくさん魚がいましたよ!
ここは、ネイティブシー奄美の管理ビーチのため、他の事業者がここでツアーを行うことはできません。
個人で来るか、ネイティブシー奄美のツアーに参加しましょう。

文字通りギリギリまで最後の奄美の海を楽しんだ後、5時にレンタカーを返却。
そのまま空港まで送ってもらいます。
鹿児島の悪天候もおさまり、乗り継ぎ便も運航確定となりました。よかった…。
夜便は無事飛び立って、視界が一面雲に覆われます。
一瞬だけ、眼下に奄美大島の影が。
さよなら奄美大島。きっとまた来るね!

  • 奄美大島、きっとまた来るね!
    奄美大島、きっとまた来るね!

◆おまけ おうちでトライ!奄美名物、夜光貝磨き

奄美空港2Fの売店、まえだ屋さんで購入した夜光貝磨きキット。
旅行から帰った翌日、さっそくやってみました!
キットの中身は、カットされた荒削りの夜光貝、紙やすり5枚、説明書、根付紐。
夜光貝を水につけながら、紙やすりの荒い順から使い、磨いていくのです。

  • 夜光貝磨きキット¥980
    夜光貝磨きキット¥980
  • さあ、始めましょう
    さあ、始めましょう

磨く時間は、全部で65分。
水につけていると、つやつやして見えるので、もういいんじゃない?と感じるのですが、水気をふき取ってみるとまだまだ光沢がない!
やはり、説明書どおりにやりましょう。
気長に磨いていると、だんだんと真珠光沢が出てきて、うれしい!

  • 貝を濡らして、根気よく磨いていきます
    貝を濡らして、
    根気よく磨いていきます
  • 時々タオルで拭いて、磨き具合を確かめましょう
    時々タオルで拭いて、
    磨き具合を確かめましょう
  • 付属の根付紐に通して、完成!
    付属の根付紐に通して、完成!

最後の紙やすりを丁寧にかけていくと、本当につるっつるになります。
タオルで拭いても光沢がある状態になったら、できあがり!

夜光貝は、魔除けの力を持つと言われているとか。
私は愛用のバックパックにつけてみました!
これからも、奄美大島を含め、たくさん旅ができますように。

3泊4日の奄美大島の旅、いかがでしたでしょうか。
自然が豊かなだけでなく、今あるものを守り、未来につないでいこうとするたゆまぬ努力が脈々と受け継がれています。
それは奄美を愛する心から生まれ、これからも、その心に触れた人に広まっていくに違いありません。
何度でも行きたくなる、いのち輝く島。
あなたもぜひ、奄美大島にいもーれ!