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執筆者:マルハナバチ
特集:初穂料

歴史ある大神宮での車祓いをレポート!
熱田神宮(名古屋市熱田区)

執筆者:マルハナバチ
執筆者:マルハナバチ

♪やっさしぃい~もりには~しんわが~いきて~る~♪
(『森は生きてる。』作詞:阿木曜子 作曲:宇崎竜童)
地元の方にしかわからない、熱田神宮会館のCMソングから始まりました!
歌い手は初代が宇崎竜童さん。現在はMs.OOJAさん。阿木曜子さんといい、豪華な顔ぶれです。

こんにちは!愛知在住、主婦ライターのマルハナバチです。
今回は、名古屋市熱田区の熱田神宮で車のお祓いに行ってまいりましたので、レポートさせて頂きます。

初詣には毎年200万人が訪れるという熱田神宮
初詣には毎年200万人が訪れるという熱田神宮

私事でございますが、我が家では実に13年ぶりに車を買い替えました。
これからも安全にドライブできるようお祓いを受けておきたいと考え、地元の大神宮である熱田神宮にて車祓いのご祈祷をお願いしようと思い立ちました。
さっそく、予約!
スマホでぽちぽちと熱田神宮公式HPを調べると、予約不要、当日受付とのこと。
車祓いは8:30~16:00、受付順に行われるとのことなので、朝イチをめざし行くことにしました。

まずは、熱田神宮を簡単にご紹介しましょう。
熱田神宮とは、名古屋市は熱田区にある、三種の神器のひとつである草薙剣(くさなぎのつるぎ)をご神体としてお祀りしている神社です。
日本神話の英雄である倭建命(やまとたけるのみこと)が、美夜受比売(みやずひめ)とこの地で出会い、出立の際に草薙剣を授け、それが熱田神宮の創祀となったとされています。
実際の創建は、仲哀天皇元年(一説に358年)であるとも、大化2年(646年)であるとも言われているとのこと。
いずれにしても1300年以上の歴史ある大神宮です。
(熱田神宮創建に関して語り始めると止まらないので、また別の機会に…)

また、源頼朝の母である由良御前は熱田神宮の大宮司、藤原季範(すえのり)の娘であり、頼朝公の出生地はなんと名古屋。ご存じでしたか?
また織田信長が桶狭間の戦いに臨んでここで願掛けをし、圧勝したのちに塀を奉納しています。
紐解いていくと次々と有名人に結びついていくのは、長い歴史をもつ神宮ならではですね。

CMにもある通り、倭建命と美夜受比売の愛の物語が伝わる熱田神宮で、神前結婚式を挙げることもできます。
ワタクシも参列したことがありますが、雅楽の流れる中、巫女さんたちが鈴を手に舞う様子が神々しく、花嫁の白無垢が緋色の毛氈と緑の森に映え、本当にとても素敵な式になりますよ~!
ご興味のある方は熱田神宮公式HPから、熱田神宮会館をぜひチェックしてください。CMソングもね!

さて、お祓い当日。
国道19号線で熱田神宮へ。
神宮の周囲は交通量の多い道路に囲まれており、熱田神宮に近づくと、市街地に急に森が出現したかのような気持ちにとらわれます。古くから『あつたの杜』と親しまれる鎮守の森、街中のオアシスなのです。
今日の目的は車祓いなので、車祓い専用の駐車場の入り口を探しましょう。
運転しながらでもわかりやすいよう、立派な看板が出ていました。

車祓の祈祷殿への入り口
車祓の祈祷殿への入り口

警備員さんの誘導で、森の中を縫う道を進みます。
その静かさは、鳴きかわす鳥の声と木々の葉擦れが聞こえてくるほど。
すぐに車祓い専用駐車場が見えてくるので、車を停めます。

  • 森の中を進む道
    森の中を進む道

入り口で渡されたボードの紙に、車祓いの初穂料の金額、氏名と住所、車のナンバーを記入します。
ここには載っていませんが、車祓いは6000円、8000円、10,000円のコースがございます。
合わせて厄祓いのご祈祷を受けることもできるとのこと。

  • ボードに住所などを記入
    ボードに住所などを記入

記入したら祈祷殿横の受付で、巫女さんに初穂料とともにボードを提出。
『諸願成就』『神恩感謝』と印刷してある襷を渡されます。
私たちは次の9:30の回とのことなので、5分前に祈祷殿前の待合に襷をかけた状態で集合です。

  • ご祈祷を受ける本人が襷をつけます
    ご祈祷を受ける本人が襷をつけます

車祓いの祈祷殿の前には既に3台の車が停まっており、先の2台がご祈祷を受けていて、シャンシャン…と巫女さんの振る鈴の音が高らかに響いていました。
もう1台の方は、私たちと一緒の回で受けることになるようです。

立派な祈祷殿
立派な祈祷殿

9:25になったので、祈祷殿前の立派な待合に向かいます。
広く落ち着いた内装の待合室で、室内の手水舎も設けられています。奥には無料のお茶コーナーも。

ご祈祷の前に手を清めましょう
ご祈祷の前に手を清めましょう

一度にご祈祷を受けるのは2台のようで、私たちの前に来ていたのはご家族連れ。お父さんと娘さんが襷をかけています。娘さんは免許取りたてかな?
時間になると、巫女さんが祈祷所内に案内してくれます。
「これより先は神事になりますので、動画および写真撮影はお慎み下さい…」

この中でご祈祷を受けます
この中でご祈祷を受けます

祈祷殿内部に通されると、巫女さんから玉串を渡されました。
浅黄色の袴を履いた若い神主さんがまず、口上を述べ、巫女さんがお供えを神前に捧げます。
そののち紫の袴の神主さん(中堅の神職の方の色ですね!)が現れて、いよいよご祈祷の始まりです。
「かけまくもかしこき…」
厳かに祝詞が始まり、○○市○○の里に住まう△山△男…このたび車を購い…とご祈祷と受ける人の素性と安全祈願を述べていきます。
頭を垂れて聞いているうちに、十ウン年前の子供のお宮参りの際は、番地まで読み上げられていたことを唐突に思い出しました。
今は個人情報に配慮されているのか、神主さんも町名までしか読み上げません。時代ですね。
祝詞は続き、熱田神宮の祭神である熱田大神つまり天照大神に交通安全をお祈りします。
どうかこの車でも無事に、たくさん旅行ができますように!
巫女さんのアナウンスに促され、慣れない手つきで玉串を神前に捧げます。

ご祈祷が終わると、巫女さんからお守りと撤饌(てっせん)つまりお供えのおさがりを頂きます。
紫色の袴の神主さんはここで退場。
私たちは若い神主さんと巫女さんに先導され、外の車に向かいます。
車の前で、若い神主さんが祝詞を唱え、巫女さん二人が鈴をふり、車を清めます。
ちゃんと前の扉をあけて、内部まで。
シャンシャンと鳴る鈴の音は、周囲の空気だけでなく心をも清めてくれるようです。
「これにてご祈祷はつつがなく終了いたしました。本日は熱田神宮へのご参拝ありがとうございました」
と若い神主さんから挨拶があり、車祓いは無事終了です。

さあ、本日のメインイベントである車祓いは済みましたが、せっかくなので、本殿にお詣りしていきましょう。
車祓い用の駐車場からは直接行けないので、いったん外に出てから一般駐車場へ。
大鳥居をくぐり本殿に近づいてくると、人波が見えはじめます。

古色蒼然とした大鳥居
古色蒼然とした大鳥居

信長塀のまわりにも人だかりがあり、皆さん順番に写真を撮っています。
『桶狭間の戦いでの出陣の際、織田信長が熱田神宮に願文を奏し大勝したので、その御礼として奉納した壁である』という立て札が。

織田信長と言えば比叡山の焼き討ちなど、神も仏も信じていないイメージがありませんか?
確かに悪名高き比叡山の焼き討ちでは、死者は数千人におよび、女子供までも虐殺されました。
比叡山延暦寺は、その開創より多くの名僧を輩出し、日本仏教の母山と呼ばれています。
しかしそれだけではなく、朝廷ですら制御ができないほどの権勢を誇り、僧兵という武力を持ち、長い歴史の中でしばしば朝廷や幕府と対立しています。
そんな比叡山延暦寺が宿敵朝倉義景と浅井長政を匿い、再三の説得にも応じなかったため、信長もついに焼き討ちという手段に出たのです。

熱田神宮の信長塀が物語るのは、比叡山延暦寺を焼き払った同じ人間とは思えないエピソード。
信長は、その名を広く知らしめた桶狭間の戦いのまさに当日の朝、熱田神宮に立ち寄っています。
彼が無謀とも言える奇襲に臨み、この地方の人々の信仰を集める熱田神宮に先勝祈願をしたのは何も不思議なことではないでしょう。
お寺や神社とは対立することもあったものの、戦場で命のやりとりをする武将たちはみな、神仏に対する篤い信仰心を持っていました。
信長もまた、熱田神宮をはじめ愛知県津島市の津島社、福井県の織田劔神社を庇護し、社殿の建設など熱心に支援を行っていたといいます。
彼が奉納した、土と瓦を積み重ねしっかりと塗り固められた築地塀という形式の塀。
現代も人々を惹きつけてやまない、織田信長という人物像の大事な一面を物語っているようです。

  • 信長が奉納した築地塀、信長塀
    信長が奉納した築地塀、信長塀

戦国時代に思いを馳せた後は、いよいよ本殿に参拝。
参拝の列に並んでいる間にも、横を数十人のグループが通り過ぎていき、奥でご祈祷が始まります。

ずっとこんな平和な光景が古から続いてきたかのような熱田神宮ですが、太平洋戦争の末期、この地も米軍の激しい空襲を受けています。
名古屋大空襲のひとつ、熱田空襲です。
熱田区には日本軍の爆撃機を製造していた愛知航空機や、その親会社で多く兵器を製造していた愛知時計製造、住友金属工業の工場があり、それを狙ったものです。
熱田神宮も被害を受け、一部の社殿が焼失しました。
また終戦後、上陸した米軍にご神体が奪われることを恐れ、一時、草薙剣は飛騨一宮水無神社に移されています。
必死に守ろうとした人々がいたからこそ、熱田神宮は戦火に失われることなくいまもここに在るのです。
これからも永くこの大神宮が、この地に鎮座ましますように。
そんなことを思いながら参拝しました。

本殿へ向かう参拝者の長い列
本殿へ向かう参拝者の長い列

さて、気づけば11時を過ぎています。
せっかくですから、遅めのモーニングでも参りましょうか。
今回は、熱田神宮から車で5分ほどの距離にある隠れ家的カフェ、『ハウセストライフカフェ』さんにお邪魔しました。
名古屋市南区の住宅街の中にある、とっても素敵なカフェなんです。

こんなところに?という場所にあるカフェ
こんなところに?という場所にあるカフェ

駐車場は2台。店舗兼住宅で、住宅部分もまあセンスが素敵。
店内に入ると、テーブルが3つとおしゃれ~なインテリア。

センスが津波のように押し寄せて来る~
センスが津波のように押し寄せて来る~

このお店のモーニングは、無料でバタートースト、シュガートースト、ほんのりシナモンシュガートーストを選べます。
今回はカフェラテと、+580円のおめかし小倉トーストに。

見てください!素敵なのが出てきましたよ~!

小倉トーストがこんなおしゃれに…
小倉トーストがこんなおしゃれに…

こんなおしゃれな小倉トースト、初めて見た。これはもう立派なスイーツですね。
ラテに添えてある小さなバームクーヘンとくるみもまた嬉しい。
おいしいカフェラテに、甘いいちごとあんたっぷりの小倉トーストがよく合います。
他にもグラタントースト、彩りサラダオープンサンドイッチなど、モーニングメニューが充実。
ハウセストライフカフェ、ぜひ訪れてみてください!

さて、帰宅後に、熱田神宮で頂いた封筒の中をあらためます。
まず、交通安全お守りと、車に貼るステッカータイプのお守り。そして、撤饌と書かれた箱。
箱の中身は、和三盆のお干菓子でした。
お守りとお札は、車内に置いておこうと思います。

  • お守り、車用のお札、撤饌の干菓子
    お守り、車用のお札、撤饌の干菓子

そして、熱田神宮のご神印はこちら。

  • あっさりとしたご神印
    あっさりとしたご神印

書いて頂きながら、え、これで完成?と思ったのは内緒ですよ。
お寺は墨のあとも麗しい御朱印が多いけれど、神社のご神印は大きな神社でもあっさりとしたものが多いですね。

さて、車祓いのレポート、いかがでしたでしょうか。
人の心の根っこにある、神頼みの気持ち。
それは、自分の限界を知り、大いなる何かを頼る気持ちです。
いくら科学が進んでも、自力ではどうしようもないことに直面した時、何かにすがりたい、頼りたい気持ちはなくなることはないでしょう。
日本におわします八百万の神々は、その気持ちを実にあっさりと受け止めてくださいます。
節目節目でこうしてご祈祷を受け、気を引き締めて謙虚に物事に向かうのもなかなかいいな、と感じた今回の車祓いレポートでした。
(了)