
大安寺で癌封じのご祈祷を拝受しました

大安寺の概要
1.大安寺の歴史
JR奈良駅からバスで4つ目の大安寺バス停から、東に徒歩10分程の所に、大安寺はひっそりと建っています。境内も狭い小さな寺院ですが、実はこの大安寺は奈良でも最も古く、またかつては、東大寺に次ぐ大寺で、南都七太寺の一つとして隆盛を誇っていました。
この大安寺は、もとは藤原京にあった百済大寺が、平城京遷都に伴って、この場所に移り、大安寺となったものです。南大寺とも呼ばれる官寺で、大安寺式の大伽藍を誇っていました。
しかし、次第に衰退し、江戸時代・明治時代には全ての伽藍が失われ、廃寺同然になっていたそうです。
太平洋戦争後になり、ようやく復興の機運が生まれ、現在では最盛期の約1/25の寺域で、南都七大寺の中でも最も小さな寺院となっていますが、南都の古寺として静かな宗教空間の再興が続けられています。もともと、官立の寺院として奈良時代には国家の安泰と国民の健康と幸福を祈ることが大きな役割であったことから、悪病・難病封じに力を入れており、現代の悪病難病の最たるものである癌封じの寺として、信仰を集め、少しずつ賑わいを取り戻しつつあると言えます。
2.大安寺の見どころ(伽藍と仏像と境内の小さなだるま)
大安寺には先に書いたとおり、昔を偲ぶことが出来る歴史的建造物がなく、最も古い本堂も明治時代の建造物です。したがって、建造物には見るべきものはありません。しかし、一方で本堂に祀られているご本尊の十一面観音立像は、天平時代のもので重要文化財に指定されています。その他にも、天平時代の馬頭観音立像や楊柳観音や聖観音立像や不空羂索観音や四天王立像など、多くの重要文化財が所蔵されています。大安寺の古寺としての見どころは、この貴重な仏像だと言えます。
現在はこの大安寺は真言宗の寺院となっているため、それほど広くない境内ですが、四国八十八カ所のお砂踏み霊場巡りも設けられていますし、後に説明する笹酒にちなんで、ちょっとした竹林も造られており、参拝者をもてなす工夫がなされています。
また、至る所に、おみくじが入れられていた「小さなだるま」が置かれており、気持ちをほっこりとさせてくれます。写真の乳房の形をした美流孔塚(みるくづか)は、乳癌の方が撫ぜると良いとされています。
癌封じのご祈祷体験
1.ご祈祷の申し込み
癌封じのご祈祷を受けるには、予約は必要なく、当日寺務所で申し込みを行うことで受けることが出来ます。
申し込み用紙は、癌などの病を患っている場合と、健康だが癌などの重い病を患わぬように、健康の維持を祈願する場合で異なります。
いずれも、住所・氏名・年齢(数え年)を記すのは同じですが、癌などを患っている場合は、それにプラスして手術等の予定があれば、それを記載するようになっています。私は健康なので、健康維持を願う人向けの用紙に記載して申し込みました。
祈祷内容には、当日のみの祈祷の一座祈祷、そして1年祈祷や特別祈祷等があり、その種類に応じて、初穂料が異なります。1年祈祷では、癌などを患っていて、後日手術等が決まった際には、電話連絡すれば、その手術が成功するように、改めて祈祷してもらえます。したがって、多くの方がこの1年祈祷を受けておられます。
この申し込み用紙に必要な事項を記載して、祈祷料を添えて受け付けの方に出すと、祈禱に当たっての注意事項を書いたチラシと、祈祷時間が告げられます。祈祷時間は、平日は10時30分、11時30分、13時30分、14時30分、15時30分からとなっており、毎回定員が20名で、自身が申し込まれたタイミングで次の祈祷時間の申込者が20名に満たない場合は、次の開始時間にすぐに祈祷していただけることになります。
2.ご祈祷の流れ
ご祈祷は本堂で営まれます。ちなみに、ご祈祷を受けない方で、本堂内を拝観したい場合は拝観料が必要です。
大安寺は真言宗の寺院となっていることから、その御祈祷は真言宗の作法に従って行なわれます。奈良時代の大安寺は、南都六宗の一つの三論宗の寺院でした、しかし、この三論宗は教義が難解で、奈良時代後半には次第に敬遠されていきます。ただし、この三論宗から次代の真言宗や天台宗が誕生したとされています。大安寺の経堂において、空海が膨大な経典の解読等に没頭した縁から、学問的な南都六宗の三論宗から、庶民に近い真言宗の寺院に移行されたのです。
具体的な僧侶によるご祈祷は、最初に護摩壇に座られた僧侶の前に並べられた法具を作法に則り叩き、次に声明が高らかに唱えられます。そして10分余り経つと、その場でご祈祷を受けている方の、住所・氏名・年齢が読み上げられ、病を患っていない人に対しては健康祈願が、そして癌などを患っていて手術日が決まっている人には、その手術が成功することをご本尊に祈願されます。この際に、ご祈祷を受けている人は、氏名が呼ばれると、前に進んで順番に焼香し、ご本尊に手を合わせます。
これが終わると、僧侶が太鼓を両手で叩きつつ、声高らかに般若心経が唱えられます。太鼓の音は腹に響くほどで、高揚感が湧き起り、ご利益が得られる強い想いが感じられます。そして最後に、僧侶がお参りしている方の所を廻り、教本を背後から両肩に当てて、ご本尊の力をそれぞれに移す儀式が行われ、ご祈祷は終了します。
そして最後にご祈祷を受けた各人が、ご本尊の前に進んで合掌し、小さな竹の盃に、ご祈祷済みのお酒か水を竹筒から注いでもらい、それを拝受してすべてが完了となります。所要時間は30分弱でした。本堂を出ると高揚感と清々しさが感じられました。
3.授与品(お下がり)
ご祈祷を受けた方には、寝室に貼るお札と、身に付けるお札(お守り)が供与されます。また、供物のお下がりの意味でご祈祷済みの「笹くず湯」の元が授けられます。また、笹酒をいただいた竹の杯も持ち帰ることが出来ます。
大安寺の癌封じ祭り
大安寺では、先に記したご祈祷の最後にいただいたご祈祷済みの笹酒だけをいただくことが出来る機会があります。このお祭りについて紹介します。
1.光仁会 癌封じ笹酒祭り(1月23日)
奈良朝最後の天皇である光仁天皇は、皇太子の時代に大安寺に何度も詣で、そこで竹を切って盃とし、そこにお酒を注いて温めて優雅に楽しまれたそうです。この光仁天皇は当時としては非常に長寿で、62歳で生涯を閉じられました。そこから、健康長寿に効能がある笹酒が誕生したのです。
また光仁天皇のお子様の桓武天皇は、光仁天皇の一周忌法要を大安寺で営まれたと「続日本書紀」に記述があり、そこから毎年1月23日に青竹づくしの祭儀の光仁会が行われています。このお祭りでは、ご祈祷済みの笹酒の接待が行われ、「癌封じの笹酒」として広く知られています。
2.竹供養 癌封じ笹酒夏祭り(6月23日)
古来中国では陰暦の5月13日は、竹を植えると良く育つとされる竹酔日または竹供養の日とされて来ました。この故事にちなんで陰暦の5月13日に当たる現在の6月23日に癌封じ笹酒夏祭りが催されています。ここでも、ご祈祷済みの笹酒が授けられます。
いずれのお祭りの日にも8時から16時まで、拝観料500円を払って境内に入ると、笹酒を拝受することが出来ます。多くの方が参拝され、この行事は関西のテレビ局のニュースでもしばしば取り上げられています。
- ・JR奈良駅・近鉄奈良駅より大安寺行・シャープ前行・白土町行バス乗車
- ・大安寺バス停下車後、徒歩10分(バスの進行方向へ南進し、大安寺南交差点を右折し直進 大きな看板が出ています)