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執筆者:奈良派爺さん
灌仏会・花まつり特集

お釈迦さまの誕生日を祝う春の仏教行事の灌仏会について

執筆者:奈良派爺さん
執筆者:奈良派爺さん
春のイメージ 満開のソメイヨシノ
春のイメージ
満開のソメイヨシノ

旧暦の4月8日は仏教を開いたお釈迦さまの誕生日です。このお釈迦さまの誕生日を祝い、日本では桜の季節も終わりに近づく新暦の4月8日(または月遅れの5月8日)に「灌仏会(かんぶつえ)」が行われます。今回は、この灌仏会についてご紹介します。

■ 灌仏会(かんぶつえ)とは

灌仏会の「灌(かん)」の漢字は、難しい漢字ですが、訓読みは「そそ(ぐ)」で、液体を注ぐことや水が流れ込むことの意味を持つ漢字です。
灌仏会では、小さなお釈迦さまの立像(誕生仏)を盆の真中に立て、その盆を花で飾られた御堂の中に安置し、参拝者は小さな柄杓で盆の甘茶をすくって誕生仏に注ぎます。ここから、この行事を灌仏会と呼ぶようになったのです。
また、花で飾られた御堂は花御堂と呼ばれ、ここから灌仏会は「花まつり」とも呼ばれています。
日本で最初の灌仏会(花まつり)は609年4月8日に、奈良の飛鳥寺の飛鳥大仏(釈迦如来像)の開眼供養として行われたのが初めだとされています。

■ 誕生仏とは

誕生仏の例
誕生仏の例

幼名ゴータマ・シッダルダのお釈迦さまは、現在のネパールにあるルンビニーという花園で誕生されました。この誕生に関しては、以下が伝承されています。
ゴータマ・シッダルダは、天界から6本の牙のある白い像に乗って降り、母親のマーヤー夫人が受胎されたと言われています。また、お釈迦さまが誕生された時、九龍が出現し、お釈迦さまに5種の香水(こうずい)を注ぎ、身を清めました。そして、お釈迦さまはすぐに7歩あゆみ、右手で天を指し、左手で地面を指し、有名な「天上天下唯我独尊」と唱えられたと伝えられています。この右手で天を指し、左手で地面を指し、「天上天下唯我独尊」と唱えられたお姿を表したものが、「誕生仏」なのです。

石造りの誕生仏が祀られている風景
石造りの誕生仏が祀られている風景

また灌仏会で甘茶を誕生仏に注ぐのは、お釈迦さまが誕生された際に、清めに使われた5種の香水を代用したものです。さらに、花御堂に祀られる誕生仏として、白い象に乗られたお姿もよく見かけますが、これも先の逸話を表現したものです。
写真の誕生仏は、珍しい石造りですが、しっかりと誕生仏のお姿を表しています。ちなみに、この誕生仏は大阪の一心寺の近くに常時祀られているもので、甘茶の維持が大変なので、甘茶の代りに水かけ不動尊と同様に、お水をかけて、いつでもお参りすることが出来るようになっています。

■ 東大寺の灌仏会

灌仏会(花まつり)は全国各地の多くの寺院で行われます。皆さんの身近なお寺でも、きっと催されていることでしょう。
例えば、奈良市内の有名な寺院でも、4月8日には東大寺の大仏殿で、興福寺では南円堂の前庭で営まれます。また、元興寺では月遅れの5月8日に営まれます。
この記事では具体的な例として、東大寺の灌仏会について、少し詳しくご紹介します。東大寺では4月8日に大仏殿において、仏生会(灌仏会)が営まれます。午前8時から9時にかけて僧侶による法要が営まれ、それに合わせて大仏殿の前に設えられた花御堂で参拝者は、8時から15時頃まで少しくすんだ50cm程度の金色の誕生仏に甘茶かけを行うことが出来ます。

春の大仏殿(灯篭の奥に花御堂が設けられます)
春の大仏殿(灯篭の奥に花御堂が設けられます)

東大寺には国宝の誕生仏がありますが、もちろん実際の仏生会で使われる誕生仏は、それを模した仏像だと思われます。国宝の誕生仏は像の高さが47cmで、現在多くの寺院に祀られている誕生仏と比較して少し大きなサイズで、奈良時代に作られたものです。この誕生仏は、大仏開眼供養のために作られたという説もあります。国宝の誕生仏は東大寺ミュージアムで公開される時期があり、この際に見ることが出来ます。
奈良市での桜の開花は、例年東京に比較して1週間程度遅いものの、最近では開花が早まっており、4月8日では満開を過ぎ、名残の桜が見られる程度でしょうが、開花が遅い年なら、写真のように桜が綺麗な大仏殿のすぐ前に設けられた花御堂で甘茶かけが出来ると言う幸運に恵まれる可能性があるかも知れません。
ちなみに、大仏殿及び周辺の写真は2~3年前の3月25日頃に撮影したものです。東大寺の大仏殿周辺は奈良公園周辺でも桜の名所となっています。仏生会にタイミングが合わなくても、東大寺周辺の素晴らしい桜の景色は、是非楽しんでもらいたいと思います。そして、大仏殿を訪れられる際には、この仏生会(灌仏会)にも思いを馳せてもらえればと思います。

  • 大仏殿南東側の春日野園地の桜風景
    大仏殿南東側の
    春日野園地の桜風景
  • 大仏殿裏側の桜風景
    大仏殿裏側の桜風景

■ 終わりに

灌仏会(仏生会、花まつり)は、多くの寺院で行われており、有名な寺院に出かけなくても、身近なお寺でも行われており、ぜひ一度は参加していただきたい行事です。特に小さなお子さんが仏教に接する機会は、地蔵盆とこの花まつり程度であり、お子さんにも体験させてあげたい春の仏教行事と言えます。