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執筆者:奈良派爺さん
特集

日本最古の神社 大神神社(三輪明神)

執筆者:奈良派爺さん
執筆者:奈良派爺さん

大神神社の概要

1.ご由来
大神神社(おおみわじんじゃ)は、古事記や日本書紀にその創祀が書かれており、まさに神話の時代から伝承されている日本最古の神社の一つです。
神社の社殿は、一般的には本殿と幣殿と拝殿で構成されており、ご祭神は本殿に祀られており、人は拝殿または拝殿の前から本殿のご祭神にお参りする形式となっています。
しかし、大神神社には本殿はなく、拝殿からご祭神が鎮まる三輪山に祈りを捧げるという原初の神祀りの姿を現在に伝えているのです。これも、大神神社が日本最古の神社だと言われるゆえんです。

二の鳥居
二の鳥居

2.ご祭神
古事記や日本書紀の伝承では、大国主神の別の御魂として、大物主大神が顕現されて、三輪山に鎮まられてとされており、ご祭神はこの大物主大神です。
大物主大神は、国造りの神様として、農業・工業・商業等すべての産業振興や、方除・病気平癒・造酒・製薬・交通安全・縁結びなど、世の中のあらゆる幸福を増し進めてくださる人間生活の守護神として尊崇を集めています。

3.ご祭神が鎮まる三輪山
三輪山は奈良盆地にある山の中でもひときわ形の整った円錐形の山で、高さ467メートル、周囲16キロメートルの大樹に覆われた山です。先に記したご祭神の大物主大神が鎮まれる神聖な山です。この三輪山には神霊が実際に鎮まるとされている磐座(いわくら)と呼ばれる岩が点在し、これが信仰の対象となっているのです。
神社の古い縁起書によれば、この三輪山の山頂の磐座に大物主大神が、中腹の磐座に大己貴神(おおむなちのかみ)が、そして麓の磐座には少彦名神(すくなひこなのかみ)が鎮まると書かれています。そこから、ご祭神は大物主大神ですが、配祀神が大己貴神と少彦名神となっています。

大神神社の見どころ

1.拝殿
三輪山に鎮まるご祭神を拝礼する拝殿は、文献によれば鎌倉時代に創建されたとのことですが、現在の拝殿は、徳川四代将軍の家綱によって再建されたもので、国の重要文化財に指定されている建造物です。
大神神社の拝殿の奥は禁足地として、普段は神職さえ足を踏み入れない神聖な場所であり、この禁足地と拝殿の間には、結界として神聖な三ツ鳥居が立っており、これも重要文化財に指定されています。各種の祭礼が行われていない日には、参集殿で申し込めば拝観することが可能です。残念ながら私が訪れた日は、月次祭の日であったために、お参りの人が多く、拝観することは出来ませんでした。

拝殿
拝殿

2.己の神杉(みのかみすぎ)
拝殿に向かって右斜め前に、己の神杉と呼ばれている大きな杉の木が立っています。この杉の木には、大物主大神の化身とされる白蛇が住むと言われていることから、この名前で呼ばれているのです。
己の神杉の前には、蛇の鉱物とされている卵やお酒が供えられています。この杉の下部には大きな空洞があり、そこから白蛇が姿を現し、それを見た人は幸運に恵まれると言い伝えられています。

3.狭井(さい)神社
拝殿から北に向かい、そこから三輪山の山裾に沿った道には、「くすり道」との石碑が立っており、これが狭井神社への参道となります。この「くすり道」には、薬業関係者が奉納した薬木や薬草が植えられています。
狭井神社は、大神神社の荒魂(あらみたま)をお祀りしている摂社です。ご神威が強く、病気平癒の神として信仰を集めています。この狭井神社の祭礼の4月18日に営まれる鎮花祭は、上古からの由緒を持っており、別名「薬まつり」として知られています。
本殿に向かって左側に、御神水井戸とよばれる井戸があり、参拝者は自由に飲むことが出来ます。また境内では、御神水をペットボトルに入れて販売もされています。病気で参拝が出来ない方のために、これを買い求めて持ち帰るのも良いでしょう。

狭井神社
狭井神社

4.三輪山登拝
狭井神社の境内の右手に、三輪山の登拝口があります。狭井神社の社務所で登拝料300円を納めると、白い襷をいただくことが出来、これを肩から掛けて、神聖な三輪山に登ることが出来るのです。往復で2時間ほどの時間を要するとのことです。
山中の道幅が1~2メートルと狭いことから、コロナ禍で登拝が中止されており、2023年2月初旬時点でも残念ながら登拝は禁止になっていました。コロナが終息して、登拝が再開されれば、是非登って遠くからでも磐座にお参りできればと思います。ただし、神様が鎮まる神聖な山なので、写真撮影等は禁止されています。

久延彦神社からの眺望(大鳥居がよく見えます)
久延彦神社からの眺望(大鳥居がよく見えます)

大神神社とウサギのご縁

1.卯の日神事(大神祭)
大神神社の祭礼のひとつに、大神祭がありますが、この祭礼は「卯の日神事」とも呼ばれています。これは大神祭が、崇神(すじん)天皇8年の卯の日に始まったことが由来で、現在も毎月卯の日に神事が執り行われています。ここから、卯(ウサギ)は大神神社では神縁深い干支とされています。
また、大物主大神はご祭神の項で説明したとおり、出雲の大国主神と同一神であると考えられており、その大国主神が因幡の白兔(いなばのしろうさぎ)を助けたという有名な神話も、大神神社がウサギと関わりが深いことの理由だと推察されます。

2.ご縁のウサギを象徴するもの
大神神社とご縁の深いウサギですが、この象徴は二カ所で見ることが出来ます。まず一つ目は、二の鳥居を過ぎて、拝殿への階段を上る手前の参道左に「夫婦岩」と呼ばれる二つの岩が置かれており、多くの参拝者がお参りされています。この「夫婦岩」の側には、向き合う二羽のウサギが描かれた絵馬が多数奉納されています。「夫婦岩」は夫婦円満や良縁の象徴で、多くの神社では夫婦円満や良縁祈願の絵馬にはハートがデザインされていることが多いのですが、ここではウサギがデザインされているのです。

夫婦岩の側に掛けられている絵馬
夫婦岩の側に掛けられている絵馬

もう一つは、拝殿に向かって左側にある「参集殿」の前には、可愛い「なで兎」が置かれています。身体の不調な部分をなでると治癒するとして、多くの参拝者が列をなしているほどです。

なで兎
なで兎

「卯の日神事」や「ウサギの絵馬」「なで兎」と、大神神社がウサギと縁の深い神社なのです。ウサギ年である今年こそ、大神神社にお参りするのにふさわしい年だと言えるでしょう。

大神神社の防火訓練

大神神社では、1月25日に職員や巫女や地元消防署や消防団を含めて100人余りの人が参加して防火訓練が行われたと、巫女が装束のままバケツリレーしている写真と共に、ネットニュースや一部の新聞で報じられました。大神神社には重要文化財の拝殿や三ツ鳥居などがあり、非常時には初期消火を神社の職員や巫女など、自分達で対応しようと毎年行われている訓練です。
1月26日は文化財防火デーで、この日の前後には多くの神社仏閣が、同様の訓練を行っています。この文化財防火デーは、昭和24年1月26日に現存する世界最古の木造建築物である「法隆寺」の金堂が炎上し、貴重な内部の壁画が焼損したことを契機に制定されたものです。神社仏閣に参拝する私達も、火気厳禁はもちろんのこと、貴重な文化財を傷つけることがないよう、改めて心に刻みたいと考えさせられるトピックスです。