
母の日だョ! 「母」が付く寺、大集合!

贈り物より、思い出。
母の日は、毎年、5月の第2日曜日。
固定の日付ではないので、「いつだっけ?」と直前になって慌てがちですが、
皆さん、準備はお済みですか?
私はこの時期になると、「今年はどんな贈り物をしようかな?」と結構、悩みます。
お花、お菓子。家電にエプロン。旅行券にアフタヌーンティーのチケット。
定番グッズから、一風変わったお品まで、今では色んな商品が出ていますが、
毎年、贈り物をしていると、だんだんと贈り物の選択肢が減ってきますよね。
(もちろん、毎年同じものでも問題ないのですが・・・)
いっそのこと、今年は贈り物をやめて、一緒にお出かけなんて、いかがでしょうか。
母の日だョ! 「母」が付く寺、大集合!
今回は「母の日」にちなんで、「母」と名の付く寺院と周辺スポットをご紹介していきますよ!
が! その前に少しだけジックリと「母」という漢字を眺めてみましょう。
「母」という字をよく見ると、「女」という漢字が入っていることが分かります。
「女」に二つの点を加えると、「母」になりますね。この二つの点は乳房を表しています。
何ともダイレクトな表現ですが、漢字の成り立ちを眺めてみると、色々な発見があって面白いですね。
では、さっそくですが、「母」の付く寺を探してみましょう。
- ① 東京都墨田区
- 木母寺(もくぼじ)
- ② 千葉県富津市
- 佛母寺(ぶつもじ)
- ③ 埼玉県本庄市
- 佛母寺(ぶつもじ)
- ④ 福岡県北九州市
- 佛母寺(ふつぼじ)
- ⑤ 愛知県名古屋市
- 長母寺(ちょうぼじ)
- ⑥ 香川県仲多度郡
- 仏母院(ぶつもいん)
探してみると、思ったよりも沢山、出てきます。
ただご紹介するのでは面白くないので、今回は特に名称に注目してみたいと思います。
お寺さんのお名前ッ!
① 東京都墨田区 木母寺(もくぼじ)
東京都墨田区にある木母寺は、天台宗のお寺。
平安時代の中期に建てられた念仏堂が起原で、もともとは「梅若寺」と名付けられていたそうです。
木母寺を語る上で、絶対に外せないのは、「梅若伝説」。次のような伝説が伝えられています。
梅若伝説とは?
京都の貴族として生まれた梅若丸は、
五歳の時、父を亡くした。
比叡山延暦寺に預けられて、
「彼ほどの稚児はいない」とまで称賛された。
しかし、それが却って周囲の妬みを買ってしまった。
梅若丸は、人買にさらわれ、連れまわされた挙句、隅田川のほとりで、生涯を閉じる。
まだ12歳であった。
翌年、狂女に身をやつした母親が、梅若丸の所在を探し求めて隅田川に至った。
渡し守から梅若丸の死を知らされた母親は、悲しみに暮れ、念仏を唱えた。
すると、今は亡き梅若丸の姿が束の間、現れて・・・消えた。
忠円阿闍梨はこの話を聞いて、梅若丸を弔うお堂を築き、母親はその場に住んだ。
しかし、ある日、我が子の後を追って、対岸の鏡が池に身を投げてしまった。
何とも悲しいお話ですよね。
亡霊でも何でもいい、一目でも会いたい。
そんな風に、京都を飛び出して、狂女となった母の哀しみ。
念仏を唱えて、やっと再会できたのに、抱きしめることも叶わない辛さ。
想像するだけで、涙が込み上げてきます。
もともとは「梅若寺」と名付けられたお寺でしたが、天正18年(1590年)、徳川家康によって「梅柳山」の山号を得ました。また、慶長12年(1607年)に、前関白近衞信尹が参詣された際、柳の枝を折って筆代わりにし、「梅」の字を分け、「木母寺」と改めたそうです。
ちなみに、「梅」は酸味があるため、古くから妊娠中の悪阻に効果があるとされていました。
「梅」と「母」は、つながりの深い漢字なのですね!
② 千葉県富津市 佛母寺(ぶつもじ)
千葉県富津市の佛母寺は、臨済宗妙心寺派の寺院。
千葉県の観光名所・マザー牧場に隣接しています。
御本尊には、お釈迦様のお母様、摩耶観世音菩薩をお祀りし、安産や子授け、縁結びにご利益があります。寺号からも御本尊からも、「母」に所縁があることが分かりますね。
この佛母寺は、創建に特徴があります。実は創建されたのは、昭和52年(1977年)と非常に新しい寺院です。開基は実業家の前田久吉。前田久吉は、産経新聞や関西テレビ、東京タワー、マザー牧場等を創設した人物として知られています。
マザー牧場の由来は?
とかく「マザー牧場」の「マザー」の意味するところが気になって、調べてみたところ、前田久吉の意外な生い立ちを知ることになります。
前田久吉は、明治26年(1893年)、大阪の天下茶屋に生まれました。
家は貧しく、母親は口癖のように「我が家に牛が一頭いれば暮らしも楽になるのに…」と話していたとのことです。
晩年、その母への思いを込めて、「マザー牧場」と命名し、その牧場に隣接して佛母寺を建立されたそうです。
財政界の重鎮となっても、苦労した母の姿を忘れることがなかったのですね。
③ 埼玉県本庄市 佛母寺(ぶつもじ)
埼玉県の佛母寺は、高野山真言宗のお寺。
もともとは、佛母寺の南側にある金鑚(かなさな)神社の別当・百蓮寺でしたが、廃仏毀釈により無住となっていました。
現在の場所に再興されたのは、明治18年(1885年)。同23年(1890年)、佛母寺に改称されています。
佛母寺の御本尊は、准胝観世音菩薩(じゅんでいかんぜおんぼさつ)。
准胝観世音菩薩は、沢山の仏様を生み出したと言われています。
准胝観音とは?
准胝観音は、准胝仏母、または七倶胝仏母(しちくていぶつも)とも言われています。
准胝とは清浄を意味し、七倶胝とは七億を指します。つまり、七億の仏の母として、除災・延命・求児・除病などにご利益があるとされています。
④ 福岡県北九州市 佛母寺(ふつぼじ)
北九州市小倉北区にある佛母寺は、黄檗宗の寺院。
寛文5年(1665年)、小笠原藩初代藩主忠真は、足立山の麓(現在の小倉北区寿山町)に、小笠原藩の菩提寺「福聚寺」を創建しました。
寛延元年(1748年)、小笠原忠真の継室・永貞院の守仏を安置するために、福聚寺の分院として「佛母庵」が建立されました。以後は福聚寺の末寺としての扱いを受けていましたが、明治維新の時に独立し「佛母寺」となりました。
⑤ 愛知県名古屋市 長母寺(ちょうぼじ)
長母寺は、臨済宗東福寺派の寺院。
治承3年(1179年)、山田重忠が母である長母院の菩提を弔うために創建しました。古くは天台宗の寺院でしたが、無住国師が来往し、山号・寺号が現在のものに改められました。
長母寺縁起によると、山田重忠は熱田明神から夢のお告げを受けて、建立に至ったとされています。
長母寺と山田重忠
山田重忠は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけての武将です。人物については、『沙石集』において、次のように記されています。
尾州ニ山田二郎源ノ重忠ト云シハ、承久ノ時、君ノ御方ニテ打レシ人ナリ。弓箭ノ道、人ニユルサレ、心モタケク、器量モ人ニ勝レリケル者也。心ヤサシクシテ、民ノ煩ヲ思ヒ知リ、万ヅ優ナル人ナリケリ。
記述からは、とても称賛していることが伺えます。
山田重忠は、母の菩提を弔うだけではなく、父のために長父寺(現在の大永寺)、兄のために長兄寺(現在の長慶寺)を創建したとも伝えられています。
沙石集を編纂したのが無住であることを差し引いても、信仰心の篤い人であったことは間違いなく、傑出した人物だったのではないでしょうか。
⑥ 香川県仲多度郡 仏母院(ぶつもいん)
本日のラストを飾る寺院は、香川県仲多度郡にある仏母院。真言宗醍醐派のお寺です。
仏母院は、もともと弘法大師を出産された玉依御前の屋敷跡。
また、縁起には玉依御前が産土神・熊手八幡宮に御祈願され、弘法大師を身籠られた場所だと伝えられています。
境内には見どころがいっぱい!
・胞衣塚(えなづか)
境内には、弘法大師の臍の緒を埋めた塚があります。
古代より、安産や子授けの御利益があるとして、信仰を集めてきました。
・産湯井戸
弘法大師が誕生された際、産湯の水を汲み上げた井戸が残されています。
・童塚
弘法大師が幼少期、一新に泥仏を作り祀られた場所として言い伝えられています。
令和5年(2023年)は、弘法大師がお生まれになって1250年のアニバーサリー・イヤー。生誕の地である善通寺市や高野山ではお誕生日の6月15日を中心として、様々なイベントや法会が執り行われる予定です。
母の日は、おかあさんといっしょに!
本日は、母の日にちなみ、「母」の付く寺院について取り上げてみました。
子を想う母の気持ち。母を想う子の気持ち。
それらは、古今東西、変わらないものなのではないでしょうか。
面と向かって「ありがとう」と気持ちを伝えるのは照れくさいものですが、お出かけに誘ってみれば、きっと喜んでくれるはず。
遠方で難しい場合は一本の電話を。今は亡きお母様には、手を合わせるだけでも。
近くにいるだけが、そばにいることではありませんからね。きっと。
- ホーム - 木母寺 公式ホームページ(天台宗 梅柳山 隅田川厄除大師)(mokuboji.org)
- 佛母寺・寺院案内 (butsumoji.com)
- マザー牧場とは│マザー牧場について│マザー牧場 (motherfarm.co.jp)
- 高野山真言宗 準別格本山 龍蓋山 佛母寺 (butsumoji.jp)
- 観音院について | 京都・嵯峨野 真言宗御室派 観音院 (kannon-in-kyoto.org)
- 黄檗宗 準提山 佛母寺|北九州市小倉南区城野 さくら陵苑 (sakuraryouen.com)
- 長母寺本堂(ちょうぼじほんどう) (pref.aichi.jp)
- 松林靖明氏「慈光寺本『承久記』の合戦叙述―後人加筆説にふれて―」
(matsubayashi1988.pdf (konan-wu.ac.jp)) - ◇ 仏母院 HomePage-寺歴◇ (daigo.ne.jp)