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執筆者:善之介
臨済宗特集

京都水無月旅 〜臨済宗四本山を巡る〜

執筆者:善之介
執筆者:善之介

  通常記事

  児童向け
記事

皆さんは、日本の仏教には大きく分けていくつの宗派が存在するかご存じでしょうか。
浅学の私は知りませんでした…。
調べたところ、法相宗、律宗、華厳宗、真言宗、天台宗、日蓮宗、浄土宗、浄土真宗、融通念仏宗、時宗、臨済宗、曹洞宗、黄檗宗と…その数は全部で十三になります。
この中のいくつかは皆さんにも馴染みがあることでしょう。
(ちなみに、それぞれの宗派はさらに細かく五十六派に分かれているそうです。)
今回は、十三の宗派の中の臨済宗の本山を四つ紹介します。
本山とは各宗派の中心的な寺院のことで、臨済宗には全部で十五の本山があります。
つまり、臨済宗は十五の宗派に分派している、ということになりますね。
今回紹介する四寺院は、
・相国寺派相国寺
・天龍寺派天龍寺
・東福寺派東福寺
・建仁寺派建仁寺
です。いずれも立派な、京都を代表する寺院です。

臨済宗とは?

さて、臨済宗の本山を紹介するにあたって、まずは「臨済宗」とはどんな宗派なのか、簡単に解説します。
鎌倉時代の僧侶である栄西(えいさい)は、仏教の修行のため中国に渡り、禅宗について学びました。そして、悟りの境地に至ったのち、印可証明なるものを受け取ります。(印可証明とは、わかりやすく言えば資格証明書のようなもの)
そして、日本に戻り広めたのが臨済宗だったのです。
つまり日本の臨済宗の起源は中国にあったわけですね。
臨済宗の特徴は、これまた簡単に解説しますと「座禅によって悟りを得る」というものになります。
「禅」と言えばいかにも日本的な文化だと思っていたのですが、中国からきたものだったんですね。
日本には、臨済宗の他にも曹洞宗、黄檗宗といった禅宗の宗派があります。

さて、それでは、臨済宗の四本山について紹介していきましょう。
今回は、それぞれの寺院参拝に際して、良いところはもちろん、あえて少し残念だなと感じたところにも焦点をあててみたいと思います。

① 相国寺派相国寺

相国寺(しょうこくじ)は先に述べたように、臨済宗相国寺派の総本山で、京都五山(京都にある五つの禅宗の寺院)の中で第二位の寺院とされています。
相国寺には十五の塔頭寺院があり、なんと金閣寺、銀閣寺も相国寺の山外塔頭寺院なんですね。
逆に言えば、金閣寺、銀閣寺の親寺が相国寺である、ということになります。
※塔頭(たっちゅう)寺院…大寺に所属する小寺のこと
今回初めて相国寺を訪ねたのですが、とても便利な場所にありました。
阪急京都線の四条烏丸(からすま)駅で地下鉄烏丸線に乗り換え、今出川駅で下車。
地下鉄今出川駅を地上に出ると、同志社大学のキャンパスがすぐで、そのキャンパスに隣接しているのが相国寺です。
また、南側には京都御所も広がっています。つまり、相国寺は京都市の中心地にあるわけですね。
相国寺の境内は非常に広大で、京都の中心でありながら、とても静かな空間が広がっていました。
広大、と書きましたが、実はかつての相国寺の敷地は、現在とは比較にならないほどの規模であり、東は寺町通りから西は大宮通りにまで及んでいた、と言えば、京都を知っている方なら、それがとてつもない広さであったことがおわかりでしょう。

さて、南側に位置する総門から境内には入ると、道の両側には松林が広がっていて、ちょうど梅雨の晴れ間であったこともあり、気持ちよく散策することができました。

相国寺総門
相国寺総門

まっすぐ歩いていくとまず目をひくのが、右手に見える洪音楼(こうおんろう)です。

洪音楼
洪音楼

「袴腰付鐘楼」ともいわれる、大型で立派な鐘楼なのですが、写真では伝わりにくいかもしれません。しかしこのような大きな鐘楼は初めて見ました。

さらに歩を進めますと見えてくるのが「法堂」です。

法堂
法堂

ほうどう、ではなく「はっとう」といいます。
法堂とは、主に禅宗の寺院において、僧侶が修行者などに経典を講義・説法するためのお堂のことで、相国寺の法堂は、慶長十年(1605年)、豊臣秀頼の寄進により再建された、法堂建築としては最古のものです。
さて、相国寺の拝観において人気が高いのは何と言ってもこの法堂の天井に描かれている「蟠龍図(ばんりゅうず)」。
蟠龍図は、安土桃山時代の狩野派の絵師、狩野光信の筆によるものです。
天井の下の特定の場所で手を叩くと音が響くことから「鳴き龍」とも呼ばれています。
※禅宗の法堂の天井には、仏法を守護する空想上の動物として龍の絵がよく描かれています。

この人気の高い鳴き龍を見ることが出来る法堂ですが、春と秋の特別拝観時以外には入ることが出来ません…
つまり、今回は鳴き龍を見る事が出来ませんでした。残念!

法堂蟠龍図案内
法堂蟠龍図案内

ちなみに令和5年度の特別拝観は
春の特別拝観が、3月24日(金)~6月4日(日)(法堂・方丈・浴室)
秋の特別拝観が、9月26日(火)~12月10日(日)(法堂・方丈・開山堂)
となっています。

また、御朱印も、(特別拝観期間は除く)平日しか頂けないとのことです。つまり特別拝観期間以外の場合、土日祝日には御朱印は頂けませんのでご注意下さいね。

さて、法堂の北側には方丈があり、枯山水庭園や、秋には紅葉が美しい裏方丈庭園などがあるんですが…残念ながらこの方丈も、春と秋の特別拝観の時期のみ拝観可能となっています。

方丈
方丈

ただ、残念ではあったのですが、見事な鐘楼や法堂、方丈、塔頭寺院などを見ながら散策しているだけで、心が洗われていくようでした。

方丈のさらに右奥には、承天閣美術館という立派な美術館があり、伊藤若冲、円山応挙などによる優れた文化財が数多く収蔵されているとのことですので、若冲ファンの方などにはおすすめです。

承天閣美術館
承天閣美術館

ここで、少し残念だったことをあえてまとめますと…
・法堂、方丈などを拝観できるのは限られた特別拝観の期間のみであること。(鳴き龍を見ることができなかった…) ・御朱印が頂けるのは平日のみである。 ・境内にある全景図や、各所案内に外国語表記が無かったこと。(外国人観光客の方には、やはり外国語表記があった方がわかりやすいのでは、と感じました。) ・トイレはわかりやすい場所(法堂と方丈の西側あたり)にあり、比較的清潔でしたが、男子トイレは和式でした。海外の観光客の方は戸惑うかもしれません。(多機能トイレは洋式)

これくらいでしょうか。

さて、今回は相国寺を初めて訪ねたのですが、とても清々しい気持ちで境内を巡ることができました。
また、特別拝観の期間に「鳴き龍」を見に行きたいと思います!

② 天龍寺派天龍寺

さて、次にご紹介する臨済宗の本山は、「天龍寺派天龍寺」。
天龍寺は京都五山(京都にある五つの禅宗の寺院)の中で第一位の格を誇る寺院です。
正式名称は、霊亀山天龍資聖禅寺といい、京都市右京区嵯峨に位置します。
こう言われてもピンとこない方のために説明致しますと、京福電鉄嵐山本線(嵐電…らんでん)の嵐山駅を出て、嵐山観光のメインストリートの向かい側に見えるのが天龍寺で、まさに嵐山の中心地と言ってもよいでしょう。
渡月橋や竹林の道、野宮神社もすぐ近くにあり、行き交う観光客の数もとても多く季節問わず賑わっています。(賑わいすぎという話も…)
さて、天龍寺に総門から入り、右手に塔頭寺院を、左手に放生池を見ながら、ゆるゆると歩いていくと法堂が見えてきます。

  • 天龍寺総門
    天龍寺総門
  • 塔頭寺院
    塔頭寺院
  • 天龍寺境内案内図
    天龍寺境内案内図

途中、境内案内図が設置されていたのですが、外国語表記がないため、外国人観光客にとってはわかりづらいのでは、と思いました。

法堂は拝観することができ、参拝料は500円。
法堂の天井には「どこから見ても龍が睨んでいるように見える」ことで有名な「雲龍図」を見ることができます。

  • 法堂入り口受付
    法堂入り口受付
  • 法堂外観
    法堂外観

この雲龍図、日本画家加山又造画伯の筆によるもので、平面に描かれているにもかかわらず、立体的に見えるほど迫力ある龍の姿は圧巻とのこと。
が…観光サイトの天龍寺のクチコミを見ると海外からの観光客と思われる方が「500円支払ってスカイドラゴン(雲竜図)が見られるだけ」というような手厳しいコメントが数多く見られました。
なぜこのようなコメントが多いのか、他の方のコメントも見ると、法堂拝観、庭園、諸堂拝観にそれぞれ料金が必要で、合計すると1300円になる、という点に不満を感じる方が多いようです。
このあたりは人によって感想は違ってくるでしょうが…

さて、法堂を過ぎて進むと庭園の入り口がありました。
私は今回は法堂の拝観はせずに、庭園のみ見ることにしました。
この庭園こそが、天龍寺の一番の見どころと言えるのではないでしょうか。
500円を支払って入園すると、まず目に入るのが「石庭」です。

  • 庭園入り口
    庭園入り口
  • 天龍寺の石庭
    天龍寺の石庭

石庭と言えば有名な竜安寺の石庭が思い浮かびますが、この天龍寺の石庭も竜安寺とは趣向が違いますが、なかなかのものです。
大方丈の廊下に腰をかけてゆっくりと眺めるのがよいかもしれません。
私は庭園の入場券だけしか持っていませんので、方丈には入ることはできません。
さて、大方丈を横にしてくるりと進むと、曹源池庭園が目の前に現れます。

嵐山を借景にした曹源池庭園
嵐山を借景にした曹源池庭園

この庭園は今の季節でも素晴らしい風景を見せてくれるのですが、春の桜の頃や、秋の紅葉の季節には、嵐山の桜、紅葉を借景にして息をのむような素晴らしい景観が広がることでしょう。
曹源池をぬけて、さらに庭園の参拝コースをすすむと、小路にはアジサイなど多くの花を見ることもできました。今はアジサイでしたが、季節ごとに花も種類も変わり、散策を楽しむことができるようです。

庭園の小路に咲くアジサイ
庭園の小路に咲くアジサイ

さて、庭園を散策しているうちに、トイレに行きたくなったのですが、最初にトイレの場所を確認していなかったので少々焦りました…
あとから、境内図を見ると、境内には数ヶ所トイレが設置されているようでした。
ただし、トイレに関しても観光サイトのクチコミに「敷地内のトイレにはトイレットペーパーがなく、100円で買わなければならないのはいかがなものか」といった意見が散見されました。
どうも「ここが良くない」という意見は、各種料金に関するものが多かったですね…。

では改めて、少し残念だった、という観光サイトのクチコミをまとめますと…
・法堂拝観、諸堂拝観、庭園、それぞれに料金がかかる。 ・法堂の雲龍図は撮影禁止である。 ・トイレットペーパーを100円で購入する必要がある。 ・案内の看板が少ない。(外国人観光客のクチコミより)

まぁ、このような意見はありますが、私としては天龍寺の素晴らしい庭園は一見の価値ありだと思います。
6月の緑の季節でしたが、やはり秋にもう一度訪れてみようと思いました。(もちろん紅葉の季節の嵐山の観光客の数は尋常ではありませんが…)

③ 東福寺派東福寺

東福寺は正式名称「慧日山(えいにちさん) 東福禅寺」といい、臨済宗東福寺派の大本山です。
東福寺と言えば秋の紅葉スポットとして誰もが知る京都の有名な寺院ですが、その名の由来は、奈良の東大寺と興福寺から一文字ずつ取って「東福寺」としたとのこと。
また、京都五山の第四位の禅寺で、本尊は釈迦如来、創建は嘉禎2年(1236年)となっています。
今回初めて東福寺を訪れたのですが、季節は梅雨時であり、紅葉で有名な秋の東福寺とは違った魅力を写真を交えてお伝えすることが出来れば幸いです。
さて、東福寺へのアクセスですが、JR京都駅から東福寺駅までは一駅で約3分、そして東福寺駅で下車して東福寺の北門までは徒歩で約10分と、こんなにJR京都駅から近いとは知りませんでした!
北門を入ると、塔頭寺院を見ながら、南へと進んでいきます。

  • 雲源院
    雲源院
  • 明暗寺
    明暗寺

いくら秋の紅葉の季節ではないとは言え、あの東福寺ですから、それなりに多くの観光客で混雑しているのでは?と予想していました。 しかし良い意味で予想は完全に裏切られ、殆ど観光客の姿は見かけず、静かな境内を落ち着いて散策することができます。 しばらくすると、趣のある橋の姿が目に入ってきました。

臥雲橋
臥雲橋

この臥雲橋から東側を眺めると、青もみじの向こうに有名な「通天橋」が見えます。 つまり、臥雲橋からは、通天橋から見る紅葉とは逆方向から紅葉の絶景を見ることができるわけです。今は青もみじですが、それでも素晴らしい眺めでした。

期待は膨らみ、日下門から三門の方へと向かいました。
すると、目に飛び込んできたのは…
予想以上のスケールの大きさをもつ本堂と三門でした。
東福寺の名の由来は奈良の東大寺と興福寺から取ったものだと書きましたが、十分に納得させられるものであり、写真では残念ながら伝わりづらいかもしれませんが、実際に三門と本堂を目のあたりにすると、その迫力に圧倒されます。
『東福寺の伽藍面』と称されているのにもうなずけます。

  • 東福寺三門 室町時代初期の再建
    東福寺三門
     室町時代初期の再建
  • 東福寺本堂
    東福寺本堂

外からですが、本堂の天井に蒼龍図を見ることが出来ました。

本堂天井の蒼龍図
本堂天井の蒼龍図

三門と本堂に圧倒させられた時点で単純な私は既に「東福寺…素晴らしい寺院ではないか」と感ぜずにいられませんでしたが、まだまだ見どころは続きます。

そう言えば今回の記事のテーマとして「良いところはもちろん、あえて少し残念だなと感じたところにも焦点をあててみたいと思います。」と書きましたが、果たして残念な点が見つかるのか、不安になってきました…いや、別に不安になる必要はありませんが…。

さて、いよいよあの有名な通天橋・本坊庭園の拝観です。
今回は、通天橋と本坊庭園の共通チケットを1,000円で購入しました。
そのあと、実は間違って通天橋とは違う方向に歩いていってしまったのですが、拝観受付の方が親切に背後から「こちらですよ~!」と教えてくれました。感謝。
ちなみに通天橋のみのチケットでは、通天橋、洗玉澗(通天橋から見渡すことができる小渓谷)、そして開山堂を拝観することができます。
秋の紅葉シーズンには、この通天橋が観光客でいっぱいになる映像をテレビニュースなどで見ますが、今回訪れたのは6月の下旬…人影はまばらです。

通天橋
通天橋

もちろん、通天橋から眺める紅葉はさぞかし美しいでしょう。しかし、青もみじもまた清々しく、目を楽しませてくれるのに十分でした。
ちなみに紅葉シーズンにはあまりに人が多すぎるため、通天橋で立ち止まるのは禁止されているようです。もちろん今回はゆっくり写真を撮ることもできました。

通天橋からの眺め
通天橋からの眺め

通天橋を渡り、開山堂へと進みます。
東福寺には方丈に「八相の庭」という有名な庭園があるのですが、開山堂にも、素晴らしい庭園がありました。

  • 開山堂の庭園
    開山堂の庭園
  • 市松模様の白砂の庭
    市松模様の白砂の庭

この開山堂が東福寺境内のいちばん北側に位置しますので、方丈庭園を拝観するために引き返します。
途中、通天橋下の洗玉澗を散策したのですが、ここの青もみじが美しかったです!
ぜひ皆さんも東福寺を訪れた際には通天橋を渡るだけでなく、橋の下に広がる小渓谷に降りてみてください。

洗玉澗の青もみじ
洗玉澗の青もみじ

最後に、方丈「八相の庭」を拝観しました。
八相の庭とは、方丈の東西南北に配された四つの庭園のことで、作庭家の重森三玲(1896-1975)の手によって1939年に完成しました。
比較的新しい庭であり、鎌倉時代の庭園の風格と現代芸術の精神を兼ね備えたともいえる意匠となっています。
まず、本坊庭園(方丈)拝観受付で先ほど購入した共通チケットを提示して受付を済ませます。

本坊庭園(方丈)入り口
本坊庭園(方丈)入り口

廊下を進むとまず最初に目に入ってくるのが、南庭です。

南庭
南庭

南庭は、写真を見て頂ければおわかりのとおり、枯山水の庭園であり、その大きさは約二百十坪。有名な竜安寺の石庭と比べると、こちらの庭はダイナミックさを感じました。
南庭を前にして方丈の廊下で、観光客の方たちが写真を撮っていたり、座ってじっと庭を眺めていたりと、思いおもいに、過ごしていました。
廊下を進み右に曲がると次に見えてくるのが西庭です。

西庭
西庭

この市松模様に刈り込まれたさつきの意匠は、あまりにモダンでびっくりさせられました。この意匠は古代中国の田制「井田(せいでん)」にちなんで「井田市松」と呼ぶそうです。
西庭を過ぎてまた右へ曲がると、次に現れるのが北庭。

北庭
北庭

こちらもまた、西庭同様、市松模様の意匠となっているのですが、北庭ではウマスギゴケの緑の中に敷石がランダムに配置されています。秋には紅葉とのコントラストが鮮やかであるとのこと。
最後に現れたのは東庭で、北斗の庭、と呼ばれています。

東庭(北斗の庭)
東庭(北斗の庭)

これは、写真を撮った時には迂闊にも気づかなかったんですが、「北斗の庭」と呼ぶだけあって、庭に配されている円柱型の石が北斗七星の形になっているんですね。写真では石が五つしか写っていませんでした…失敗しました。

と言うことで、八相の庭それぞれ全く違った世界観があり、楽しく鑑賞することができました。
東福寺を訪ねられる際には、通天橋だけでなく、この八相の庭はぜひ拝観することをおすすめします!

さて、今回初めて東福寺を訪ねたわけですが、正直な感想を述べさせていただくと、一言…素晴らしかったです。
圧倒されるスケールの三門や本堂、素晴らしい景観を見せてくれる通天橋と小渓谷、そして様々な世界を表している八相の庭…みどころ満載と言ってよいでしょう。

訪れた時期がいわば閑散期であったことも、逆に良かったと思います。
これが秋の紅葉シーズンであったなら、あまりの人の多さに、落ち着いて拝観できなかったかもしれません。
もちろん通天橋から眺める紅葉はおそらく素晴らしいでしょうが、落ち着いて静かに拝観したいのであれば、まずは一度閑散期に訪れてみることを強くおすすめします。
と言いつつ、私も観光客で賑わう秋の紅葉シーズンに、混雑覚悟で一度は訪れてみたいかなとも、思いましたが…。

さて、東福寺の良いところは自分なりに伝えさせて頂きましたが、残念なところはあったのでしょうか。
改めて観光サイトの東福寺のクチコミで残念な点について見てみたところ、「特別拝観の時期には、三門、本堂、塔頭寺院、通天橋、庭園etcそれぞれの拝観に別料金がかかり、すべて拝観するとなるとかなりの高額になってしまう」「紅葉シーズンには境内の駐車場が一般車両駐車禁止となり、マイカー客はどこに駐車すればよいのかわからず、案内が不親切」といったような意見が見られました。
拝観料については、今回オフシーズンでもあり、通天橋と方丈の庭の共通チケットで1,000円でしたので、高額ではありませんでした。
確かに、三門や本堂、塔頭寺院などすべての秋の特別拝観を見るとなると、5,000円を超えるとのことですので、高額に感じるでしょうが、逆にすべて拝観するのも疲れるかとも思いますので、拝観するのは、2、3箇所にとどめておいておけば良いのかな、と感じました。

また、東福寺境内にはトイレが数ヶ所あり、今回何ヶ所か利用させて頂きましたが、清潔に保たれており、トイレットペーパーもきちんと補充されていました。

と言うわけで、東福寺で少し残念な点をクチコミの意見などを踏まえてあえてまとめますと…
・秋の特別拝観では、それぞれの拝観が別料金となっており、すべて拝観すると高額になる。 ・紅葉シーズンには境内の駐車場が使えなかった。(公共交通機関の利用をおすすめします。)

以上のように、紅葉シーズンでの不満点が挙げられていました。
東福寺の紅葉と言えば、京都の人気観光地の中でも特に人気が高く、混雑必至で、ある意味致し方ない部分もあるのでは、と思います。
だからこそ…是非、オフシーズンに訪ねてみることを強くおすすめ致します!(笑)

④ 建仁寺派建仁寺

最後にご紹介するのは、京都最古の禅寺である建仁寺です。
建仁寺は、臨済宗建仁寺派の大本山で、開山は栄西禅師、開基は源頼家。
栄西と言えば、この記事のはじめの方に出てきましたね。
中国へと渡り禅宗を学んで、日本に臨済宗を広めたのが栄西です。

※さて、ここでお断りなのですが、建仁寺では写真の利用にはお寺の許可が必要とのことで、今回時間の都合で許可が取れなかったため、残念ながら建仁寺の写真は一切使用しておりません。
ちなみに、境内で個人的に写真撮影することに関しては自由のようですが、三脚をたてるなど迷惑になる行為は禁止となっています。

建仁寺へは何度か訪れたことがあるのですが、これまでは京都祇園の観光名所である花見小路を南に進み、突き当りにある建仁寺の北門から境内へと入っていました。

祇園花見小路 奥が建仁寺北門
祇園花見小路 奥が建仁寺北門

しかし今回は勅使門(境内の南側)横の入り口から入ることにしました。
さて、これまで相国寺、天龍寺、東福寺の三つの臨済宗の本山を訪ねてきましたが、境内に共通点があることに気づきましたか?
まず勅使門と三門の間には放生池(ほうじょうち)という池が必ずあり、どこの放生池にも蓮の花が咲いていました。
また、三門の先には法堂があり、その奥に方丈があります。
つまり、勅使門⇒放生地⇒三門⇒法堂⇒方丈…といった伽藍の配置になっているのです。(相国寺に関しては勅使門・三門⇒放生地⇒法堂⇒方丈…と少し違いましたが)
他の宗派のお寺の境内については、どういった配置になっているのかわかりませんが、今後は注意してみたいと思いました。
写真をご紹介できないのが残念ですが、建仁寺の境内は、さすが京都最古の禅寺だけあって、落ち着いた空間に三門、法堂、方丈などが風格あるたたずまいを見せていました。
600円の拝観料を支払えば、本坊、方丈、法堂を巡ることができ、俵屋宗達の最高傑作と言われる風神雷神図屏風(レプリカ)や、雲龍図(レプリカ)、潮音庭、○△□乃庭といった庭園、そして法堂天井には小泉淳作画伯筆による「双龍図」を見ることができます。
レプリカとは言え、最新デジタル技術と京都伝統工芸の匠の技の融合により再現された国宝・風神雷神図屏風は、間近で見るととても迫力があり、本物を見ているような気になりました。
また、2002年に創建800年を記念して描かれた法堂天井の双龍図は圧巻で、こちらも一見の価値ありです!
すべて、個人での写真撮影は可能となっていましたので、訪れた際にはぜひ写真に収めてみましょう。(法堂内はうす暗いため、高感度撮影を推奨)

境内にあるトイレは本坊内にある一ヶ所だけでしたが、リフォームしたてのようで、とても清潔で使い勝手も良かったです。
また、売店近くには飲みものの自動販売機があり、自販機横には大きめの缶・ペットボトル捨て場も設置されていました。
また、隣には無料のコインロッカーも設置されていましたので、荷物の多い方は、身軽で拝観できますのでご利用をおすすめします。

さて、今回の記事の締めくくりとして建仁寺を訪れたわけですが、本坊、方丈、法堂の文化財もゆっくり拝観できましたし、個人的には残念だなといった点はとくにありませんでした。
ただし、観光サイトのクチコミを参照すると、以下のようなコメントが少なからず見られましたので一応記しておきます。

残念な点
・境内での着物姿での写真撮影に対して厳しい。 ・着物姿での写真撮影は禁止。

たしかに、境内での守るべきマナーというものがあると思いますが、初めて訪日したような外国人観光客には、慣習の違いもあり、わからない点もあるのかもしれません。

※建仁寺のホームページには、
『当寺では、ご来寺いただく他の方々にご迷惑がかからないよう、特に下記の行動につきましては厳禁とさせていただきます。

許可なく境内を使用した作品の制作やスタジオとしての利用、営利や営利に繋がる作品の撮影。プロのカメラマンやメディアなどよる撮影を行うこと』
とあります。
境内で着物を着て一眼レフカメラ等で撮影する行為は、上記禁止事項とみなされてしまうのかもしれません。

あとがき

今回、臨済宗の本山である四つのお寺、相国寺派相国寺、天龍寺派天龍寺、東福寺派東福寺、建仁寺派建仁寺を巡ったわけですが、どのお寺も京都を代表する寺院だけに、立派な伽藍、庭園、文化財と、見どころ満載で楽しく拝観させて頂きました。
一方、残念だった点もあえていくつか挙げさせて頂きましたが、個人的には特にとりたてて不満に感じるようなところはなかった、というのが正直な感想です。
この記事をお読みになって、これらのお寺に是非行ってみたいな、という感想をもっていただけたなら幸いです。

みなさんは日本の仏教にはいくつの宗派(しゅうは)があるか知っていますか?
わたしは知りませんでした…
調べてみると、法相宗(ほっそうしゅう)、律宗(りっしゅう)、華厳宗(けごんしゅう)、真言宗(しんごんしゅう)、天台宗(てんだいしゅう)、日蓮宗(にちれんしゅう)、浄土宗(じょうどしゅう)、浄土真宗(じょうどしんしゅう)、融通念仏宗(ゆうずうねんぶつしゅう)、時宗(じしゅう)、臨済宗(りんざいしゅう)、曹洞宗(そうとうしゅう)、黄檗宗(おうばくしゅう)と、全部で十三の宗派がありました。
それぞれの宗派は、さらに五十六派に分かれているそうです。
今回は、臨済宗の本山(ほんざん)を四つしょうかいします。
本山とは、それぞれの宗派の代表的なお寺のことで、臨済宗には全部で十五の本山(大きなお寺)があります。
だから、臨済宗には十五の宗派があるということになります。

今回紹介する四つのお寺は、
・相国寺派相国寺(しょうこくじ)
・天龍寺派天龍寺(てんりゅうじ)
・東福寺派東福寺(とうふくじ)
・建仁寺派建仁寺(けんにんじ)
です。どれもりっぱな、京都を代表するお寺です。

臨済宗とは?

さて、臨済宗の本山をしょうかいする前に、臨済宗ってどんな宗派なのかについて、簡単に説明します。
鎌倉時代の僧侶(えらいお坊さん)である栄西(えいさい)は、仏教の修行をするために中国へ行き、禅宗(ぜんしゅう)について学びました。そして、よく学んで深く理解すると、日本に戻って禅宗のひとつ「臨済宗」を広めました。
つまり、臨済宗は中国から来たものだったのです。

さて、それでは、臨済宗の四つの本山(代表的なお寺)についてしょうかいしていきましょう。
今回は、それぞれのお寺の良いところはもちろん、ちょっと残念だな、というところもしょうかいします。

① 相国寺派相国寺(しょうこくじ)

相国寺は、臨済宗相国寺派を代表するお寺で、京都にある禅宗のお寺の中でも二番目の格(ランク)のお寺です。
相国寺には十五の塔頭寺院(たっちゅうじいん…大きいお寺の下にあるお寺)があって、なんと金閣寺も銀閣寺も相国寺の塔頭寺院なんですよ。
今回、はじめて相国寺に行ったのですが、京都市営地下鉄烏丸線(からすません)の今出川駅から歩いてすぐのところにありました。
相国寺の境内(けいだい…お寺の中)はとても大きく、そして静かでした。
とても大きいと書きましたが、昔はいまの相国寺よりももっと広く、東は寺町通り、西は大宮通りまであったそうです。
京都を知らない人にはわかりづらいかもしれませんね…

さて、相国寺の南にある総門(大きな門)からお寺の中に入ると、松の林がひろがっていて、とても気持ちよく歩くことができました。

相国寺総門
相国寺総門

まっすぐ歩いていくと、見えてくるのが、右側に見える洪音楼(こうおんろう)です。

洪音楼
洪音楼

「袴腰付鐘楼(はかまごしつきしょうろう)」といわれる、大きくて立派な鐘楼(しょうろう…かね突きのお堂)なのですが、写真では大きさが伝わりにくいかもしれません。しかしこんな大きな鐘楼は初めて見ました。

さらに歩いていくと、次に見えてくるのは「法堂(はっとう)」です。

法堂(はっとう)
法堂(はっとう)

法堂とは、禅宗のお寺で、僧侶(おぼうさん)が、仏教について教えたりするお堂のことで、相国寺の法堂は日本でも一番古い法堂のひとつです。
この相国寺の法堂の天井には「蟠龍図(ばんりゅうず)」という龍の絵が描かれていて、観光客にとても人気なんですよ。
この蟠龍図は、安土桃山時代の有名な絵師、狩野光信(かのうみつのぶ)が描いたものです。
天井の下で手を叩くと、その音がひびくので「鳴き龍」ともよばれています。

そんな人気の高い「鳴き龍」を見ることができる法堂ですが、残念ながら春と秋の特別拝観のとき以外には入ることができません。
ですから今回は鳴き龍を見る事はできませんでした…

法堂蟠龍図案内
法堂蟠龍図案内

ちなみに令和5年度の特別拝観は
春の特別拝観が、3月24日(金)~6月4日(日)(法堂・方丈・浴室)
秋の特別拝観が、9月26日(火)~12月10日(日)(法堂・方丈・開山堂)
となっています。

また、御朱印(ごしゅいん…お寺などにお参りしたときにもらえる印)も、平日にしか頂けないそうです。
つまり、特別拝観の時以外の土日祝日には御朱印はもらえませんので注意しましょう。

さて、法堂の北側には方丈(ほうじょう)があり、方丈にはきれいな庭園などがありますが、残念ながら方丈も、春と秋の特別拝観のとき以外は拝観(みることが)できません。

方丈
方丈

色々残念だと書きましたが、お寺の中の、法堂や鐘楼、方丈などを見ながら歩いているだけで、とても心が落ち着いて気持ち良かったです。

方丈の北側には承天閣(しょうてんかく)美術館というりっぱな美術館があって、有名な絵師の伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)や円山応挙(まるやまおうきょ)などによる文化財(作品)が展示されていますので、おすすめです。

承天閣美術館
承天閣美術館

ではここで、少し残念だったことをまとめてみました。
・法堂や方丈などを拝観(はいかん…中に入って観ること)できるのは春と秋の特別拝観の期間だけであること。 ・御朱印がもらえるのは平日だけ。 ・境内にある全景図(マップ)や、案内に外国語表記が無かったこと。(外国人観光客の方には、外国語表記があった方がわかりやすいのでは、と思いました。) ・トイレはわかりやすい場所(法堂と方丈の西側あたり)にあり、まあまあきれいでしたが、男子トイレは和式でした。海外の観光客の方は和式トイレの使い方がわからないかもしれません。(多機能トイレは洋式)

さて、今回はじめて相国寺をたずねましたが、とても気持ちよく境内を歩くことができました。
次は、特別拝観のときに「鳴き龍」をみに行きたいと思います!

② 天龍寺派天龍寺(てんりゅうじ)

さて、次にしょうかいする臨済宗の本山は、「天龍寺派天龍寺」。
天龍寺は京都五山(京都にある五つの禅宗のお寺)の中で第一位の格のお寺です。

正式には、霊亀山天龍資聖禅寺(れいぎざんてんりゅうしせいぜんじ)といい、京都市右京区嵯峨(さが)にあります。
こう言われてもピンとこない人のために説明しますと、京福電鉄嵐山本線(嵐電…らんでん)の嵐山駅を出て、すぐ向かい側に見えるのが天龍寺で、まさに嵐山の中心地にあると言ってもよいでしょう。
渡月橋(とげつきょう)や竹林の道、野宮神社もすぐ近くにあり、どの季節でも観光客の数がとても多い場所です。(多すぎる、という話も…)
さて、天龍寺に総門から入り、右側に塔頭寺院(たっちゅうじいん)を、左側に放生池を見ながら、ゆっくり歩いていくと法堂が見えてきます。

  • 天龍寺総門
    天龍寺総門
  • 塔頭寺院(たっちゅうじいん)
    塔頭寺院(たっちゅうじいん)
  • 天龍寺境内案内図
    天龍寺境内案内図

途中、境内案内図があったのですが、外国語表記がないため、外国人の観光客にとってはわかりにくいのでは、と思いました。

法堂は拝観することができ、拝観料は500円。
法堂の天井には「どこから見ても龍がにらんでいるように見える」ことで有名な「雲龍図」を見ることができます。

  • 法堂入り口受付
    法堂入り口受付
  • 法堂外観
    法堂外観

この雲龍図は日本画家の加山又造(かやままたぞう)画伯(がはく)がえがいたもので、平面に描かれているにもかかわらず、まるで立体的に見えるほど迫力があるそうです。
が…観光サイトの天龍寺のクチコミを見ると海外からの観光客と思われる人が「500円支払ってスカイドラゴン(雲竜図)が見られるだけ」というようなきびしいコメントがたくさん見られました。
なぜこのようなコメントが多いのか、他の人のコメントも見ると、法堂拝観、庭園、諸堂拝観にそれぞれ料金が必要で、合計すると1300円になる、という点に不満を感じる方が多いようです。
このあたりは人によって感じ方は違うでしょうが…

さて、法堂を過ぎて進むと庭園の入り口がありました。
私は今回は法堂の拝観はせずに、庭園だけ見ることにしました。
この庭園こそ、天龍寺の一番の見どころだと言えるのではないでしょうか。
500円を支払って入園すると、まず見えるのが「石庭(せきてい)」です。

  • 庭園入り口
    庭園入り口
  • 天龍寺の石庭
    天龍寺の石庭

石庭と言えば有名な竜安寺(りょうあんじ)の石庭が思い浮かびますが、この天龍寺の石庭もなかなか立派なものです。
大方丈の廊下に腰をかけてゆっくりと眺めるのがよいかもしれません。
私は庭園の入場券だけしか持っていませんので、方丈には入ることはできませんでした。
さて、大方丈を過ぎて進むと、曹源池庭園(そうげんちていえん)が目の前に現れます。

嵐山をうしろにした曹源池庭園
嵐山をうしろにした曹源池庭園

この庭園は今の季節でも素晴らしい景色を見せてくれるのですが、春の桜の頃や、秋の紅葉の季節には、嵐山の桜または紅葉を後ろにしてとても素晴らしい景観が広がることでしょう。
曹源池をぬけて、さらに庭園の参拝コースをすすむと、小路(こみち)にはアジサイなど多くの花が咲いていました。今はアジサイでしたが、季節ごとに花も種類も変わり、散策を楽しむことができるようです。

庭園の小路に咲くアジサイ
庭園の小路に咲くアジサイ

さて、庭園を散策しているうちに、トイレに行きたくなったのですが、最初にトイレの場所を確認していなかったので少し焦りました…
あとから、境内図を見ると、境内には数ヶ所トイレが設置されているようでした。
ただし、トイレに関しても観光サイトのクチコミに「敷地内のトイレにはトイレットペーパーがなく、100円で買わなければならないのはいかがなものか」といったような意見がいくつか見られました。
どうも「ここが良くない」という意見は、料金に関するものが多かったですね…。

では改めて、少し残念だったという観光サイトのクチコミをまとめますと…
・法堂拝観、諸堂拝観、庭園、それぞれに料金がかかる。 ・法堂の雲龍図は撮影禁止である。 ・トイレットペーパーを100円で買う必要がある。 ・案内の看板が少ない。(外国人観光客のクチコミより)

まぁ、このような意見はありましたが、私としては天龍寺の素晴らしい庭園は一度見る価値ありだと思います。
今回は6月の緑の季節でしたが、秋にもう一度訪れてみようと思いました。(もちろん秋の嵐山の観光客の数はものすごいですが…)

③ 東福寺派東福寺(とうふくじ)

東福寺は正式に「慧日山(えいにちさん) 東福禅寺」といい、臨済宗東福寺派を代表するお寺です。
東福寺と言えば秋の紅葉スポットとして誰もが知る京都の有名なお寺ですが、その名の由来は、奈良の東大寺と興福寺から一文字ずつ取って「東福寺」とした、ということです。
また、京都五山(京都にある五つの禅宗のお寺)の第四位の格の禅寺で、ご本尊は釈迦如来(しゃかにょらい)、創建は嘉禎2年(1236年)となっています。
今回初めて東福寺を訪れたのですが、季節は梅雨時で、紅葉で有名な秋の東福寺とは違った良さを写真を交えてお伝えすることが出来ればと思います。
さて、東福寺への行き方ですが、JR京都駅から東福寺駅までは一駅で約3分、そして東福寺駅で下車して東福寺の北門までは徒歩で約10分と、こんなにJR京都駅から近いとは知りませんでした!
北門を入ると、塔頭寺院(たっちゅうじいん)を見ながら、南へと進んでいきます。

  • 雲源院
    雲源院
  • 明暗寺
    明暗寺

いくら秋の紅葉の季節ではないと言っても、有名な東福寺ですから、それなりに多くの観光客で混雑しているかな?と予想していました。
しかし良い意味で予想は完全に裏切られ、ほとんど観光客の姿は見かけず、静かな境内(けいだい…お寺の中)を落ち着いて歩くことができました。
しばらくすると、いい雰囲気の橋の姿が見えてきました。

臥雲橋(がうんきょう)
臥雲橋(がうんきょう)

この臥雲橋から東側を眺めると、青もみじの向こうに有名な「通天橋(つうてんきょう)」が見えます。
つまり、臥雲橋からは、通天橋から見る紅葉とは逆の方向から紅葉の景色を見ることができるわけです。今は青もみじですが、それでも素晴らしい眺めでした。

期待しながら、日下門から三門の方へと向かいました。
すると、見えてきたのは…
予想以上の大きさの本堂と三門でした。
写真では残念ながら伝わりにくいかもしれませんが、実際に三門と本堂を目の前で見ると、すごい迫力でした。

  • 東福寺三門 室町時代初期の再建
    東福寺三門
     室町時代初期の再建
  • 東福寺本堂
    東福寺本堂

外からですが、本堂の天井に蒼龍図(そうりゅうず)を見ることが出来ました。

本堂天井の蒼龍図
本堂天井の蒼龍図

立派な三門と本堂だけを見て、「東福寺って素晴らしいお寺だな」と感じましたが、まだまだ見どころは続きます。

そう言えば今回の記事のテーマとして「お寺の良いところはもちろん、ちょっと残念だな、というところもしょうかいします」と書きましたが、残念な点が見つかるのかなと不安になってきました…いや、別に不安になる必要はありませんが…。

さて、いよいよあの有名な通天橋・本坊庭園の拝観です。
今回は、通天橋と本坊庭園の共通のチケットを1,000円で買いました。
そのあと、実は間違って通天橋とは違う方向に歩いていってしまったのですが、拝観受付の方が親切にうしろから「こちらですよ~!」と教えてくれました。(感謝)
ちなみに通天橋だけのチケットでは、通天橋、洗玉澗(せんぎょくかん…通天橋から見渡すことができる小さい谷)、そして開山堂(かいざんどう)を拝観することができます。
秋の紅葉シーズンには、この通天橋が観光客でいっぱいになる映像をテレビニュースなどで見ますが、今回訪れたのは6月の下旬でしたので、人影はまばらでした。

通天橋
通天橋

もちろん、通天橋から眺める紅葉はきれいでしょう。しかし、今回見た青もみじ(緑の葉のもみじのこと)もまたきれいで、目を楽しませてくれました。
ちなみに紅葉シーズンはあまりに人が多すぎるため、通天橋で立ち止まるのは禁止されているそうです。もちろん今回はゆっくり写真を撮ることもできました。

通天橋からの眺め
通天橋からの眺め

通天橋を渡り、開山堂へと進みます。
東福寺には方丈(ほうじょう)に「八相の庭(はっそうのにわ)」という有名な庭園(ていえん)があるのですが、開山堂にも、素晴らしい庭園がありました。

  • 開山堂の庭園
    開山堂の庭園
  • 市松模様の白砂の庭
    市松模様の白砂の庭

この開山堂が東福寺境内のいちばん北側にありますので、方丈庭園を拝観するために引き返します。
途中、通天橋の下の洗玉澗を歩いてみたのですが、ここの青もみじが美しかったです!
ぜひ皆さんも東福寺に行ったときには通天橋を渡るだけでなく、橋の下に広がる谷にも降りてみてくださいね。

洗玉澗の青もみじ
洗玉澗の青もみじ

最後に、方丈「八相(はっそう)の庭」を拝観しました。
八相の庭とは、方丈の東西南北にある四つの庭園のことで、作庭家(さくていか…庭をつくる人)の重森三玲(しげもりみれい)(1896-1975)によって1939年に完成しました。
どちらかと言えば新しい庭で、昔の庭園の良さと現代の新しさを合わせたデザインとなっています。
まず、本坊庭園(方丈)拝観受付で先ほど買った共通チケットを見せて受付を済ませます。

本坊庭園(方丈)入り口
本坊庭園(方丈)入り口

廊下を進むとまず最初に見えてくるるのが、南庭です。

南庭
南庭

南庭は、写真のとおり、枯山水(かれさんすい…石や砂でつくった庭園)であり、有名な竜安寺(りょうあんじ)の石庭(せきてい)と比べると、こちらの庭はダイナミックな感じでした。
南庭を前にして方丈の廊下で、観光客の方たちが写真を撮っていたり、座ってじっと庭をながめていたりと、思いおもいに、過ごしていました。
廊下を進み右に曲がると次に見えてくるのが西庭です。

西庭
西庭

この市松模様(いちまつもよう…四角い碁盤のもよう)に刈り込まれたさつきのデザインは珍しくて、びっくりしました。 西庭を過ぎてまた右へ曲がると、次に現れるのが北庭。

北庭
北庭

こちらもまた、西庭と同じで、市松模様になっているのですが、北庭ではウマスギゴケの緑の中に敷石がところどころに置かれています。
最後にあらわれたのは東庭で、北斗(ほくと)の庭、と呼ばれています。

東庭(北斗の庭)
東庭(北斗の庭)

これは、写真を撮った時には残念ながら気づかなかったんですが、「北斗の庭」と呼ぶだけあって、庭に置かれている円柱型の石が北斗七星の形になっているんです。写真では石が五つしか写っていませんでした…失敗しました。

と言うことで、八相の庭それぞれ全く違った印象があり、楽しく観ることができました。
東福寺を訪ねたときには、通天橋だけでなく、この八相の庭はぜひ拝観することをおすすめします!

さて、今回初めて東福寺を訪ねたわけですが、正直な感想を言わせていただくと、一言…素晴らしかったです。
迫力ある大きさの三門や本堂、素晴らしい景色を見せてくれる通天橋と小渓谷(しょうけいこく)、そして様々な世界を表している八相の庭…みどころ満載と言ってよいでしょう。

訪れた時期がいわば閑散期(かんさんき…人が少ない時期)だったことも、逆に良かったと思います。 これが秋の紅葉シーズンであったら、あまりの人の多さに、落ち着いて拝観できなかったかもしれません。
もちろん通天橋から眺める紅葉はおそらく素晴らしいでしょうが、落ち着いて静かに拝観したいのであれば、まずは一度閑散期に訪れてみることを強くおすすめします。
と言いつつ、私も秋の紅葉シーズンに、混雑覚悟で一度は訪れてみたいかなとも、思いましたが…。

さて、東福寺の良いところは自分なりに伝えさせて頂きましたが、残念なところはあったのでしょうか。
改めて観光サイトの東福寺のクチコミで残念な点について見てみたところ、
「特別拝観の時には、三門、本堂、塔頭寺院、通天橋、庭園など、それぞれの拝観に別料金がかかり、すべて拝観するとかなりの高額になってしまう」
「紅葉シーズンには境内の駐車場が観光客の車は駐車禁止となり、どこに駐車すればよいのかわからず、案内が不親切」といったような意見が見られました。
拝観料については、今回閑散期でもあり、通天橋と方丈の庭の共通チケットで1,000円でしたので、高額ではありませんでした。
確かに、三門や本堂、塔頭寺院などすべての秋の特別拝観を見るとなると、5,000円を超えるということですので、高額に感じるでしょうが、逆にすべて拝観するのも疲れると思いますので、拝観するのは、2、3箇所にしておけば良いのかな、と思いました。

また、東福寺境内にはトイレが数ヶ所あり、今回何ヶ所か利用させて頂きましたが、清潔で、トイレットペーパーもきちんと補充されていました。

と言うわけで、東福寺で少し残念な点をクチコミの意見などを参考にしてあえてまとめますと…
・秋の特別拝観では、それぞれの拝観が別料金となっており、すべて拝観すると高額になる。 ・紅葉シーズンには境内の駐車場が使えなかった。公共交通機関(電車等)の利用をおすすめします。

以上のように、紅葉シーズンでの不満点が挙げられていました。
東福寺の紅葉と言えば、京都の人気観光地の中でも特に人気が高く、混雑はある意味仕方がないのでは、と思います。
だからこそ…是非、閑散期に訪ねてみることを強くおすすめ致します!

④ 建仁寺派建仁寺(けんにんじ)

最後にしょうかいするのは、京都で一番古い禅寺の建仁寺です。
建仁寺は、臨済宗建仁寺派を代表するお寺(大本山)で、開山は栄西(えいさい)禅師、開基は源頼家。
栄西と言えば、この記事のはじめの方に出てきましたね。
中国で禅宗を学んで、日本に臨済宗を広めたのが栄西です。

※さて、ここでお断りなのですが、建仁寺では写真の利用にはお寺の許可が必要ということで、今回時間の都合で許可が取れなかったため、残念ながら建仁寺の写真は一切使用しておりません。 ちなみに、境内で個人的に写真撮影することに関しては自由のようですが、三脚をたてるなど迷惑になる行為は禁止となっています。

建仁寺へは何度か行ったことがあるのですが、これまでは京都祇園(ぎおん)の観光名所である花見小路(はなみこうじ)を南に進み、突き当りにある建仁寺の北門から境内へと入っていました。

祇園花見小路 奥が建仁寺北門
祇園花見小路 奥が建仁寺北門

しかし今回は勅使門(ちょくしもん)横の入り口から入ることにしました。
さて、これまで相国寺、天龍寺、東福寺の三つの臨済宗の本山を訪ねてきましたが、境内に共通点があることに気づきましたか?
まず勅使門と三門の間には放生池(ほうじょうち)という池が必ずあり、どこの放生池にも蓮の花が咲いていました。
また、三門の先には法堂があり、その奥に方丈があります。
つまり、勅使門⇒放生地⇒三門⇒法堂⇒方丈…といった伽藍(がらん…お寺の建物)の配置になっているのです。(相国寺に関しては勅使門・三門⇒放生地⇒法堂⇒方丈…と少し違いましたが)
他の宗派のお寺の境内については、どういう配置になっているのかわかりませんが、今後は注意してみたいと思いました。
写真をご紹介できないのが残念ですが、建仁寺の境内は、さすが京都で一番古い禅寺だけあって、落ち着いた雰囲気の中に三門、法堂、方丈などが立派なすがたを見せていました。
600円の拝観料を支払えば、本坊、方丈、法堂を見ることができ、俵屋宗達(たわらやそうたつ…有名な絵師)の最高傑作と言われる風神雷神図屏風(ふうじんらいじんずびょうぶ)のレプリカや、雲龍図のレプリカ、潮音庭(ちょうおんてい)、○△□乃庭といった庭園、そして法堂天井には小泉淳作画伯が描いた「双龍図」を見ることができます。
レプリカですが、国宝・風神雷神図屏風は、間近で見るととても迫力があり、本物を見ているような気になりました。
また、2002年に創建800年を記念して描かれた法堂天井の双龍図はすばらしく、こちらも一見の価値ありです! すべて、個人での写真撮影は可能となっていましたので、訪れた際にはぜひ写真を撮ってみましょう。

境内にあるトイレは本坊の中にある一ヶ所だけでしたが、新しくリフォームしたてのようで、とても清潔で使い勝手も良かったです。
また、売店近くには飲みものの自動販売機があり、自販機横には大きめの缶・ペットボトル捨て場も設置されていました。
また、隣には無料のコインロッカーも設置されていましたので、荷物の多い方は、身軽で拝観できますのでご利用をおすすめします。

さて、今回の記事の締めくくりとして建仁寺を訪れましたが、本坊、方丈、法堂内の文化財もゆっくり拝観できましたし、個人的には残念だなといった点はとくにありませんでした。
ただし、観光サイトのクチコミを参照すると、以下のようなコメントがいくつかありましたので一応記しておきます。

・境内での着物姿での写真撮影に対してきびしい。 ・着物姿での写真撮影は禁止。

たしかに、境内での守らないといけないマナーというものがあると思いますが、初めて日本に旅行にきたような外国人観光客には、習慣の違いもあり、わからない点もあるのかもしれません。

※建仁寺のホームページには、
『当寺では、ご来寺いただく他の方々にご迷惑がかからないよう、特に下記の行動につきましては厳禁とさせていただきます。

許可なく境内を使用した作品の制作やスタジオとしての利用、営利や営利に繋がる作品の撮影。プロのカメラマンやメディアなどよる撮影を行うこと』
と書いてあります。
境内で着物を着て一眼レフカメラ等で撮影することは、上記禁止事項とされてしまうのかもしれません。

あとがき

今回、臨済宗の本山である四つのお寺、相国寺派相国寺、天龍寺派天龍寺、東福寺派東福寺、建仁寺派建仁寺をめぐったわけですが、どのお寺も京都を代表する寺院だけに、立派な伽藍(お寺のたてもの)、庭園、文化財と、見どころ満載で楽しく拝観させて頂きました。
一方、残念だった点もあえていくつかあげさせて頂きましたが、個人的には特に不満に感じるようなところはなかった、というのが正直な感想でした。
この記事をお読みになって、これらのお寺に是非行ってみたいな、という感想をもっていただけたならうれしいです。