2023年おすすめの神社・仏閣
※文章中の画像をクリックすると拡大画像が表示されます。
執筆者:しろすずめ執筆者
しろすずめ

嵐山では外せない!
全国でも珍しい「法輪寺」の知られざる魅力とは?

京都・嵐山の「虚空蔵法輪寺(こくうぞう ほうりんじ)」をご存知でしょうか?

「嵯峨の虚空蔵(こくうぞう)さん」という愛称で親しまれている法輪寺。1300年もの歴史を誇り、観光客で賑わうシーズンでも静寂に包まれるこの寺社は、実は知る人ぞ知る嵐山の絶景穴場スポットなんです。

「十三まいり」や「針供養」などの一風変わった行事や、日本で唯一の電気・電波にまつわる神様がお祀りされているなど、他の寺社ではなかなかお目にかかれない珍しい見どころが盛り沢山です!

今回は、そんな知られざる法輪寺の魅力や特徴をたっぷりとご紹介します。

法輪寺本堂
法輪寺本堂

緑と静寂に包まれた法輪寺。かつては日本の文化芸術の中心だった

法輪寺山門
法輪寺山門

まずは法輪寺についてご紹介します。

京都市左京区に位置する法輪寺は、観光名所の渡月橋から徒歩3分の場所にあります。ちょっとわかりづらい場所ですが、入り口あたりの道路脇に「法輪寺」と書かれた大きな看板があり、有料の駐車場もあります。

展望スペースからの眺め
展望スペースからの眺め

山門をくぐり緑に囲まれた石段を登っていくと、嵐山駅周辺の賑わいが嘘のように静寂に包まれます。早朝にお参りすると、地元の方が数人、ゆったりと参拝されていました。本堂に向かって右の方には展望台のようなスペースがあり、そこから嵐山の街並みをぐるっと一望できます。遠くには比叡山の山並みまで見渡され、風光明媚で開放的な風景に心が洗われます。

そんな法輪寺の歴史について見てみましょう。

法輪寺の公式HPによると、はるか昔、この嵐山のふもとの地域は「葛野(かずね)」と呼ばれ、中国からの渡来人によって繁栄していたそうです。産業や芸術もどんどん発展していき、当時の地域民たちの豊かな生活の様子は「古事記」や「日本書紀」にも記されています。

713年、真言宗の行基菩薩によって、この地域に「葛井寺(かづのいでら)」が建立されました。それが、現在の法輪寺の起源とされています。その後も、このあたりの地域は「平安の都(平安京)」としてますます栄え、日本の文化芸術の中心地となっていきます。
清少納言の「枕草子」にも、京都の代表的な寺社として法輪寺が挙げられています。

また、嵐山といえば桂川に架かる「渡月橋」が有名ですが、この橋は平安時代の836年に架設された当初、「法輪寺橋」と呼ばれていたのをご存知でしょうか?

現在の渡月橋という名称は、鎌倉時代の亀山天皇が舟遊びをした際、この橋を見て「くまなき月の渡るに似たり(満月が橋の上を渡るようだ)」と詠んだことが由来となっているそうです。
日本の歴史や文化に関わりの深いお寺ですね。

法輪寺のご本尊は、虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)です。虚空蔵とは「大宇宙」のことであり、この世の全て(森羅万象)を内包し、智恵を授け、技芸に秀でさせてくださると信じられています。
また、ご本尊のある本堂の両脇には、牛と寅の石像が狛犬として安置されています。虚空蔵菩薩は丑寅の方角の守護神とされており、丑年・寅年生まれの人にご利益があると言われています。丑年・寅年生まれの方には特におすすめのお寺です。

  • 本堂の狛牛
    本堂の狛牛
  • 本堂の狛寅
    本堂の狛寅

智恵を授かる「十三まいり」と針供養

さて、次は法輪寺で行われているユニークな行事をご紹介しましょう。

御本尊である虚空蔵菩薩は、智恵や福徳の仏様と言われています。法輪寺では毎年春と秋に、数え年で13歳を迎えた男女が、虚空蔵さまに知恵と幸福を授けてもらう「十三まいり」という成人儀礼が行われています。

「13歳」はちょうど干支を一巡し、幼少期から青年期へと変わっていく転換期とされています。この人生の節目に「智恵を授かって立派な大人になり、幸福な人生を送ることができますように」と虚空蔵さまに祈願するのです。

古来から写経を奉納するのが最も丁重な参拝方法だったことにちなみ、十三まいりを行う子どもたちは漢字一字を書いて、それを「一字写経」として虚空蔵さまに奉納します。「智」「学」「友」など、子どもたちは皆それぞれに好きな漢字を書きます。

渡月橋
渡月橋

さらに、この行事には最後に重要なことがあります。「十三まいりで虚空蔵さまに授かった智恵は、渡月橋を渡り切るまでに振り返ると全て失ってしまう」という言い伝えがあるのです。子どもたちは法輪寺を出てからうっかり振り返らないように、みな真剣な面持ちで橋を渡って帰っていきます。
面白い行事ですね。

また、法輪寺には「針供養」という行事もあります。

毎年2月8日と12月8日に行われるこの行事は、平安時代に清和天皇によって廃針を納めるお堂が作られ、「皇室で使用された針をご供養せよ」との命により始められたと言われています。
全国から寄せられた使用済みの針の供養が行われており、12月の法要の際には皇室からお預かりした針の供養もされています。

供養に来た参拝客は、飾り糸のついた30cmもの大針を特製のコンニャクにさしていきます。こうして、日頃せっせと働いてくれる針に感謝し、裁縫の上達を祈るのです。

「一生懸命働いてくれた針を柔らかいコンニャクにさして、ゆっくり休んでもらおう」という、何ともほっこりあたたかな気持ちになる行事ですね。ユニークな行事ですので、長年お世話になった裁縫針とともに、私もいつか供養に参加してみたいです。

日本で唯一!電気・電子の守り神「電電宮」

法輪寺には、世にも珍しい電気・電波の神様が鎮守社としてお祀りされています。その名も「電電宮(でんでんぐう)」。電気や電波、電子といった電気関連事業の発展と安全にご利益があるとされています。

いかにも最近できた社のように思えますが、意外にもその歴史は古く、西暦800年頃の平安時代にまで遡ります。

かつて法輪寺には、自然の事象にちなむ神々の鎮守社が5社あり、その一つが雷神・電電明神を主神とする明星社でした。今で言うところの電気や電波の神様です。

1864年に焼失しましたが、戦後しばらくして復興され、法輪寺山門をくぐってすぐ右手には「電電塔」と呼ばれる五輪塔が、そして石段途中の左手には「電電宮」が建立されました。

電電塔
電電塔

電電塔の背後の石壁には、丸いレリーフの肖像が2つ刻まれています。向かって右側には、アメリカの発明王トーマス・エジソンが、そして左側にはドイツの物理学者で電磁波の存在を証明したハインリヒ・ヘルツが掲げられています。

日本のお寺に欧米の発明家や科学者のレリーフがあるのは、とても珍しいですね。この電電塔は電気・電波の事業に携わった人々の慰霊のために建立されたものであり、発展の基を築いたエジソンとヘルツが代表として飾られているのです。

電電宮
電電宮

その電電塔を通り過ぎて石段を登っていくと、左手に電電宮があります。こちらには主神として、電気や電子を司る電電明神が祀られています。

全国の家電メーカーや電波関連会社、IT事業者など、多くの電気関係者に信仰されています。
例年5月23日に行われる電電宮大祭(でんでんぐうたいさい)では、全国各地の電気事業関連の企業から多くの人が参詣し、電電宮の神徳を讃えるとともに業界の安全と発展が祈願されています。

IT業界や通信技術は日進月歩で進化し続けています。それに伴い、震災や停電、サーバーダウンなどの電気電波関連のトラブルが私たちの生活に及ぼす影響も、日増しに大きくなっています。これからの時代、ますます頼りになる神様ですね。

まとめ

いかがだったでしょうか。

大勢の観光客で賑わう嵐山で、心なごむ静寂さに包まれている法輪寺。今回はそんな法輪寺の知られざる魅力の数々についてご紹介しました。

風光明媚な嵐山の絶景に加え、ユニークな行事や世にも珍しい電気の神様など、どれも一見の価値ありです!

嵐山を訪れた際には、渡月橋を渡ってぜひ訪れてみてください!