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執筆者:しろすずめ
交通安全観世音菩薩特集

慰霊の「交通安全観世音菩薩」とは 
交通安全におすすめの寺社も紹介

執筆者:しろすずめ
執筆者:しろすずめ

こんにちは!神社大好きライター「しろすずめ」です(*^∋^*)

春は心がウキウキ弾み、お出掛けにはもってこいの季節です。
そんな心浮き立つこの時期にこそ、気をつけたいのが「交通事故」。一瞬の気のゆるみが大惨事を引き起こします。

みなさんは、交通事故で亡くなった方の慰霊として建立される「交通安全観世音菩薩」をご存知でしょうか?道路脇や寺社の境内で見かけたことがあるかもしれませんね。

今回は、そんな交通安全にまつわる観音様について、毎年この時期に行われる「春の全国交通安全運動」にちなみ解説していきます。

記事の後半では、交通安全に特にご利益があるとされる京都の神社仏閣を5社ご紹介しています。ぜひ最後までご覧ください!

【春の全国交通安全運動】とは

「全国交通安全運動」とは、毎年春と秋の時期、内閣府や警察庁などが主催して行う交通安全の啓発運動です。

運動の期間中は、こどもや歩行者の安全確保、事故の防止や安全運転意識の向上などを目指す、交通安全指導や活動などが全国で実施されます。

令和5年の「春の全国交通安全運動」の期間は以下のとおりです。
【運動期間】 5月11日(木)から20日(土)までの10日間
【交通事故死ゼロを目指す日】5月20日(土)

※内閣府公式サイト:https://bit.ly/3Je4pMJ

近年では「あおり運転」や「ながらスマホ」、電動キックボードの普及などによる事故の増加が目立っています。

私たち一人ひとりが交通ルールを守り、日頃から安全意識をしっかり持って事故防止に努めることが求められます。

慰霊と交通安全を願う「交通安全観世音菩薩」

事故や災害、戦争などで亡くなられた方の追悼のため、建立されるものに「慰霊碑」があります。犠牲者の霊魂を慰め、「二度と同じ悲劇が起こらないように」と祈りや戒めを込めて建立されます。

そんな交通事故犠牲者の慰霊碑とも言える、観音像やお地蔵さんがあるのをご存知でしょうか。おもに「交通安全観世音菩薩」と呼ばれる、慰霊のための仏像です。

「交通安全観世音菩薩」とは

「交通安全観世音菩薩」とは、交通事故によって亡くなられた方の慰霊のため、そして「事故の無い安全な世の中になってほしい」との祈りを込めて全国各地に建立されている観音像です。

「交通安全観世音菩薩」や「交通安全祈願聖観世音菩薩」などと呼ばれ、観音様のほかにお地蔵さんやお不動さんなどもあります。

安置される場所は、事故現場周辺の寺院や道路脇などさまざま。事故犠牲者の親類縁者や有志の方によって建立されることが多いようです。

なぜ観音様なの?

交通安全祈願の仏像に、そもそもなぜ観音様が多いのでしょうか。
その理由の一つに「馬頭観音(ばとうかんのん)」という観音様が関係していると言われています。

馬頭観音とは

馬頭観音とは観世音菩薩の化身で、恐ろしい忿怒(ふんぬ)の形相をし、頭上に馬の頭をいただく異様なお姿の観音様です。

その激しい怒りの力によって魔や諸悪を打ち伏せ、馬が草を食べるように人々の煩悩を食い尽くすと言われています。

馬頭観音は奈良時代以降、暮らしの重要な一部であった家畜(牛馬)を守る観音様として信仰されてきました。馬の健康や安全を守護することから「旅の道中(交通)の安全」にもご利益があると信じられています。

【馬頭観音をお祀りしている主な寺院】
・京都府:浄瑠璃寺
・福岡県:観世音寺
・福井県:中山寺
・石川県:豊財院

こうした由来から、交通事故で亡くなられた方の追悼や無事故安全への祈りのため、交通安全観世音菩薩が建立されているのです。

京都・檀王法林寺の「供養地蔵尊」

京都には、そのような慰霊と交通安全祈願のために建立された「お地蔵さん」があります。

京都・祇園で2012年4月12日、通行人7人が死亡し12人が負傷した自動車暴走事故が起きました。
現場近くの「檀王法林寺(だんのうほうりんじ)」の境内には、その事故犠牲者の方の慰霊と交通安全祈願のためのお地蔵さん「供養地蔵尊」が安置されています。

  • 檀王法林寺 川端門
    檀王法林寺 川端門
  • 檀王法林寺境内 石仏が安置されています
    檀王法林寺境内 石仏が安置されています
  • 供養地蔵尊 穏やかな表情です。みずみずしいお花が供えられていました
    供養地蔵尊 穏やかな表情です。
    みずみずしいお花が供えられていました

檀王法林寺では毎年、事故の発生日に追悼の法要が行われています。
こうした痛ましい交通事故がなくなり、安全な世の中になることを祈るばかりです。

犠牲者の方のご冥福を、心よりお祈りいたします。

交通安全祈願におすすめの神社仏閣【京都】

注意してもしきれない交通事故。自分がどれほど安全に気をつけていても、時には不慮の事故に巻き込まれてしまうことも。恐ろしいですね……。

全国には、そんな交通安全に特にご利益があるとされる神社仏閣があるのをご存知でしょうか?
交通安全祈願や車のお祓いはもちろん、車両用のお守りやステッカーなど交通安全に特化した授与品も用意されています。

「新車を購入したからお祓いしてもらいたい」
「大切な人が事故に遭わないよう、交通安全のお守りを贈りたい」
「家族が事故にあったから、特に交通安全にご利益のある寺社でご祈祷してもらいたい」

そんな方にぜひおすすめしたい、交通安全にご神徳の高い京都の神社仏閣を5社、厳選してご紹介します!

1.須賀神社・交通神社

須賀神社・交通神社 石鳥居
須賀神社・交通神社 石鳥居

まさに交通安全の神様とも言える「交通神社」。
こちらは須賀神社・交通神社の二つの名を持つ神社で、厄除けや交通安全にご利益があるとされています。

「須賀神社」の歴史は古く、創建されたのは平安末期の永治元年(1142年)。創建当初は現在の平安神宮の境内にあり、「西天王社(にしてんのうしゃ)」と呼ばれていました。
ご祭神は素戔鳴尊(すさのおのみこと)と櫛稲田比売命(くしいなだひめのみこと)。厄除けと縁結びにご利益があると言われています。

本殿 向かって右が須賀神社、左が交通神社です
本殿 向かって右が須賀神社、左が交通神社です

一方、「交通神社」は昭和期1964年に創建された比較的新しい神社です。外敵を塞ぎ止めたという逸話を持つ「久那斗(くなど)」の神様らがご祭神です。

歴史が古い須賀神社よりも、交通神社で交通安全のご祈祷やお守りなどを求める参拝客が多いとのこと。交通安全や無事故の祈願に全国から参拝客が訪れています。

社務所には交通安全のお守りのほか、
・シートベルト守り(600円)
・ステッカー(300円・200円)
・車守り(700円)
といった車両専用のお守りも並んでいました。

もちろん、境内で愛車のお祓いもしてくださいます。 「交通神社」は日本で唯一の神社。交通安全祈願にはもってこいの神社ですね。

アクセス

所在地 聖護院円頓美町1
・京都駅から京都市営バス206号系統「熊野神社前」下車 ・四条河原町から京都市営バス31, 201, 203号系統「熊野神社前」下車 ・京阪三条から京阪電車「神宮丸太町」下車 ■駐車場:自家用車15台分あり(無料)

2.狸谷山不動院(たぬきだにさんふどういん)

狸谷山不動院本堂への石段登り口 狸の置物がいっぱい!
狸谷山不動院本堂への石段登り口 狸の置物がいっぱい!

「京都で交通安全祈願といえばここ!」と言われるほど、交通安全のご利益で有名な狸谷山不動院。

京都で初めて交通安全自動車祈祷を行った寺院と言われ、多くの人が愛車やバイクのご祈祷に訪れます。京都市内では「狸谷山」と記された交通安全の赤いステッカー(1000円など)が貼られた車両をよく見かけます。

交通安全自動車祈祷殿 見晴らしの良い場所です
交通安全自動車祈祷殿 見晴らしの良い場所です

狸谷山不動院は交通安全のほか、ガン封じや難病平癒のご利益でも有名です。これはご本尊である不動明王の強い眼力により、病魔を退散させることに由来します。

狸谷山不動院の本堂は清水寺のように、山の斜面に接するような「懸崖造り(けんがいづくり)」で建てられています。修験道の寺院であるため参道も長く厳しいですが、交通安全や諸病平癒の祈願には心強い寺院と言えるでしょう。

アクセス

所在地 京都市左京区一乗寺松原町6
・市バス「一乗寺下り松町」より徒歩約10分
■駐車場:あり(無料)
入山料 500円
公式サイト:http://www.tanukidani.com/

3.正行院(しょうぎょういん):輪型地蔵(わがたじぞう)

正行院 一般の方の参拝は受け付けられていません
正行院 一般の方の参拝は受け付けられていません

正行院は天文七年(1538年)、円誉上人(えんよしょうにん)により開創された寺院です。円誉上人は動物(猿)にまで南無阿弥陀仏の名号のお守りを与え、それにまつわる伝承により「猿寺」とも呼ばれています。

輪型地蔵のお堂 看板や提灯には「交通安全」の文字が
輪型地蔵のお堂 看板や提灯には「交通安全」の文字が

交通安全にご利益があるとされているのが、正行院に隣接するお堂に安置されている「輪型地蔵」です。
「車石(くるまいし)」に由来するこのお地蔵さんは、交通安全や旅の無事を願う人々から信仰を集めています。

車石とは車の車輪がスムーズに走れるよう、道に敷き並べた石の上に二本のくぼみをつけたもの。輪型地蔵は、かつて京都・伏見間の竹田街道に敷かれていた車石から出現したと伝えられています。

そのお姿は高さ1メートルほどの石仏で、ふっくらとした慈悲深いお顔をしておられます。道行く人々の安全をお守りくださる、ありがたいお地蔵さんです。

アクセス

所在地 京都市下京区東洞院通塩小路下ル東入
・JR京都駅 下車すぐ
・市バス 京都駅下車 徒歩約3~5分
■駐車場:なし
※輪型地蔵尊は堂外からの参拝可(無料) ※正行院(猿寺)への一般の参拝は受け付けていません。

4.松原道祖神社(まつばらどうそじんじゃ)

松原道祖神社 市街地の中に祀られています
松原道祖神社 市街地の中に祀られています

平安時代から続くとされる松原道祖神社。こちらも交通安全にまつわる神様です。

「道祖神」とは道路の魔や厄災を防ぎ、行人を守る神様のこと。境界をつかさどる「塞の神(災厄を塞ぐ)」とも考えられており、交通安全や旅行の守護神として信仰されてきました。

本殿 規模は小さいですが由緒ある神社です!
本殿 規模は小さいですが由緒ある神社です!

ご祭神は猿田彦大神(さるたひこのおおかみ)と天鈿女命(あめのうずめのみこと)で、夫婦円満や縁結びにもご利益があると言われています。

民家の間にこぢんまりと祀られている社ですが、大変由緒ある神社です。旅路の安全祈願におすすめです。

アクセス

所在地 京都市下京区藪下町
・京都市烏丸線 四条駅から徒歩約12分 車で約2分 ・京都市烏丸線 五条駅から徒歩約13分 車で約2分 ■駐車場:なし

5.幸神社(さいのかみのやしろ)

幸神社 石鳥居
幸神社 石鳥居

閑静な住宅街にたたずむ幸神社。

ご祭神は前述の松原道祖神社と同じく、猿田彦大神と天鈿女命です。
「幸(=塞・さい)の神」という境界の守護神であり、災厄や魔を塞ぐ道祖神として「道の安全」にご利益があるとされています。

この神社の見どころの一つは、鬼門を守る「猿神像」。

幸神社の本殿をぐるっと回り込んだ東側の隅には、「三番叟(さんばそう)」という猿の神像が安置されています。三番叟は鬼門(北東)の方角を向いており、「猿=(魔が)去る」として邪悪なものから京の都を守護しているのです。

三番叟の像 烏帽子を被り御幣(ごへい)をかついだ姿で鬼門を監視しています
三番叟の像 烏帽子を被り御幣(ごへい)をかついだ姿で鬼門を監視しています

また、幸神社は「日本最古の縁結びの社」とも言われ、最強の恋愛パワースポットとしても有名です。

境内には、拝むとご縁や幸せが訪れる「石神さん」「おせきさん」と呼ばれるご神石も安置されています。ありがたいご利益ですが、触れると祟りがあると言われていますのでご注意を!

石神さん 平安時代からずっと変わらぬ姿で残っているというご神石
石神さん 平安時代からずっと変わらぬ姿で残っているというご神石

ややこぢんまりとした境内ながら、見どころもご利益も満載の幸神社。訪れた際には、鬼門に目を光らせる三番叟の像もぜひご覧くださいね。

アクセス

所在地 京都市上京区寺町通今出川上ル西入ル幸神町303
・京阪電車「出町柳」駅下車 徒歩約15分 ・市バス「同志社前」下車 徒歩約5分 ・市バス「河原町今出川」下車 徒歩約10分 ■駐車場:なし

まとめ

今回は「交通安全観世音菩薩」という、事故犠牲者の慰霊と交通安全を祈る観音像や、お地蔵さんについて解説しました。

記事の後半では、京都での交通安全祈願にぜひおすすめしたい神社仏閣を5社、厳選してご紹介しています。愛車のお祓いや交通安全祈願をしたいという方は、ぜひ足を運んでみてください。

日頃から交通ルールをしっかり守り、安全に十分配慮してお出掛けを楽しみましょう。

参考文献

・竹村 俊則著「新撰京都名所図絵 第四巻」1962年・白川書院 ・竹村 俊則著「新版 京のお地蔵さん」2005年・京都新聞出版センター ・京都新聞社編「京の社寺を歩く」2000年・京都新聞出版センター