
マルハナバチ
和歌山の神秘の山と海と空を遊び尽くす!
~行き当たりばったり旅行記@和歌山~
こんにちは!好奇心と心配性のはざまで揺れる主婦ライター、マルハナバチと申します。
突然ですが、旅に出たい。
ぽっかりと予定の空いた週末直前、そんな思いが突然降ってきました。
スマホ片手に調べながら、想像は膨らみます。
この季節に行くなら和歌山がいいなあ。わりと近いけど山も海もいいし。
そういえば、熊野古道!歩いてみたいと思ってたんだった!
海はこの時期きついけど、山ならいいんじゃない?
え、しかも私がずっと乗ってみたかった、モーターパラグライダー体験ができるところがある!!
決まりました。和歌山へ行く!
ではまず、熊野古道のどこを歩くかを考えなくては。
熊野古道は、古来から熊野詣をするための歩きのルート。
熊野三山、つまり熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社の三つの神社をつなぐ山道です。
ひとくちに熊野古道といっても、おおまかに分けてルートが三つ。
・田辺から熊野本宮に向かう中辺路(なかへじ)
・田辺から海岸線沿いに那智・新宮へ向かう大辺路(おおへち)
・高野山から熊野本宮へ向かう小辺路(こへち)
その中から初心者向けのルートを探すことにしました。
すると、和歌山県観光連盟の熊野古道HPで紹介されている、中辺路の一部『大門坂駐車場→那智大社→青岸渡寺→那智の滝→大門坂』ルートが、所要時間が約3時間とちょうどよさそうな感じです。
HPの写真がまた素敵なのです。
今は冬なので日が短いし、市街地にもどるバスに乗るには16:30には駐車場に戻ってこないといけない。
ということは、遅くとも13:30までには出発の必要あり、ということがわかりました。
ワタクシは愛知県在住です。名古屋からならうまく交通網繋がってないかな?
あ、名鉄バスセンターから新宮まで三重交通の高速バスが出てる!
しかし、始発は8:10。三交新宮駅着が12:44。そこからJRで那智駅まで移動する電車が…ないのです。
時刻表を調べると、JR紀勢本線は1時間になんと2、3本。特急、特急、普通、と実にシンプル。
なんと特急よりも普通電車の方が本数が少ないのです!
それでは那智駅に移動すると夕方になってしまう…
思い付きで行くには、和歌山の交通網は手ごわいことがわかりました。
結論、車で行こう。
車なら、最悪宿がとれなくても車中泊できますしね…
1日目①自宅から一路、那智へ
さて、出発当日は、起きたら快晴!
ちょっと寒いけど、旅日和になりそうです。
伊勢湾岸道に乗り、一路、和歌山県の那智を目指します。
2時間ほど走り、伊勢自動車道嬉野PAで休憩をとることに。
PAだけどここは売店もあって嬉しいのです。
ちょっとあたたかいものが欲しくなり、チーズ棒(370円)を購入。その場で焼いてくれるのであっつあつ!
ここで、モーターパラグライダー体験が今日できるか電話をします。
しかし残念ながら…
「今日は風の向きが悪くて…」
と言われてしまいました。やっぱり予約なしはいろいろと無理ですね。
しかし、一泊の予定であることを伝えると、
「それなら、たぶん明日の午後は大丈夫ですよ!風の予報が良くなる予定だから」
とのこと。やったー!
今日の17:00ごろに、翌日の予報をみてまた連絡をもらえることになりました。
帰りのことを考えると、午後早くに飛びたいものです。
ということは、熊野古道を歩くのは今日の午後に決定。
まず熊野の山を歩いて、翌日、空から熊野を見る。それもいいかもしれない!
高速の無料区間から、国道42号へ。
下道に降りると、新宮あたりから混みだします。
なにせ道路自体がほとんど一本。
生活道路と物流、観光すべて一つの道に集中してしまうので無理もないのです。
和歌山県は面積も大きく、とにかく移動に時間がかかり、どちらかといえば交通の便の悪い地域と言えるでしょう。
このあたりは急激に過疎化が進んでいるということなのですが、そういったことも原因にあるのかもしれません。
しかし、その行きにくさによって過度の観光地化がされず、自然環境が守られているという側面もありそうで、観光立国を目指す日本の課題のひとつかもしれない、などと考えてしまいました。
1日目②ビストロ・ボヌールにて昼食
さて、お昼少し前に那智駅付近に到着。
早速、どこか美味しいお店で昼ごはんを食べたい。
でも和食は夜にとっておきたいし、和食以外のお店となると、このあたりではなかなか難しい。
そこで見つけたのが『ビストロ・ボヌール』。
お店の入り口の黒板の『まぐろの料理ランチ』という言葉が目に入りました。
ビストロでまぐろを頂ける!これは見逃せない。
お店に入ると、テーブル席が3つほど。
開店時間を過ぎたばかりのせいか、他にお客さんの姿はまだありません。
黒板メニューを見て心に決めていた、まぐろカツのタルタルソースと、まぐろのほほ肉のオーブン焼きを注文。
まず、あっさりした野菜のコンソメスープとサラダ、こんがり焼いたバゲットとともに、まぐろカツのタルタルソースが出てきました。
ふんわりしたまぐろのカツに、さらっとしたタルタルソースがよく合います。
付け合わせにたっぷりの蒸し野菜と、トマトソースのパスタも美味しい。
これはいいお店に当たりましたよ!
やや時間をおいて、まぐろのほほ肉のオーブン焼きの登場!
まぐろのほほ肉は初めて食べましたが、脂がのり味が濃縮されていてトマトソースとよく絡み、ペロリといけちゃいます!
ふらりと立ち寄ったお店が当たりだなんて、幸先いい感じです。
しかしこれ以上ゆっくりしている時間はありません。
私は熊野古道を歩く前に、補陀落山寺に行きたいのです。
1日目③補陀落山寺・浜ノ宮神社
補陀落渡海をご存じですか?
仏道の修行者が行う捨身行のひとつとして、船に打ち付けられた箱に入り、海に出て潮に流されるまま、暗闇の中でひたすらに経を唱えつづけ、補陀落(観音浄土)に至るというものです。
即身仏と同じように、俗世への未練どころか命まで捨ててひたすらに誦経しながら浄土への転生を目指す。
那智勝浦では868年から1722年までに20回の記録があるという、想像を絶する行なのです。
そして、その補陀落渡海の出発地がまさにここ。
天台宗の補陀落山寺は、補陀落渡海を管掌する寺であると同時に、この寺の住職自身もまた何人も補陀落へと旅立ちました。
そのなかには、渡海が不備に終わったものもありました。
補陀落山寺の接する那智湾内に、金光坊島という島があります。
そこは、旅立ったにもかかわらず、生身で戻ってきてしまった金光坊が上陸した島だとのこと。
そしてそのあと、村人たちの手で金光坊はまた船に乗せられ、旅立っていったのですが…
それは、本来の渡海といえるものだったのでしょうか。
そのことがあってのち、補陀落山寺の住職の渡海は、ただ一人を除き、遺体の水葬という形で執り行われることになりました。
井上靖の短編『補陀落渡海記』では、金光坊自身の渡海の一部始終を描いています。
住職の渡海が何代か続いたことによって、いつのまにか自分も渡海するものと思われ、その強制力に抗うことも、渡海に無心で臨むこともできない。
自ら発心しての渡海ではないことに対する金光坊の葛藤と渡海の顛末、そのすべてを見届け、自ら生身での最後の渡海者となった清源上人を思うと、信仰とは何なのかを考えずにいられません。
境内には、再現された補陀落船が展示されています。
那智勝浦にいらっしゃるなら、ぜひ補陀落山寺を訪れて頂きたいと思います。
補陀落山寺に隣接して、小さな無人の神社があります。
ここは、浜ノ宮神社。浜ノ宮王子とも呼ばれます。
熊野古道には、百以上の『王子』が存在します。
熊野本宮大社のHPによれば、
“九十九王子とは、熊野詣の先達を務めた修験者により、12~13世紀にかけて組織された一郡の神社です。
本来、熊野古道の近隣住民が在地の神を祀っていた諸社を「王子」と認定し、熊野詣の途中で儀礼を行う場所としました”
とのことで、実際は百以上の王子が存在するそうです。
浜ノ宮王子は、中辺路、大辺路、伊勢路の分岐点となる場所にあたります。
熊野古道参詣はもうここから始まっているのです。
1日目④熊野古道・大門坂
いよいよ、熊野古道を歩きましょう!
補陀落山寺から大門坂駐車場へは、車で約10分。
今は冬。シーズンオフにも関わらず、意外と車が停まっています。
といっても和歌山はわりと暖かく、雪が積もることもほぼないので冬でも十分楽しむことができます。
トップシーズンはバスでの観光客が押し寄せるため、ゆっくり楽しむなら、すこし外した季節の方がよいかもしれません。
出発前に、駐車場に併設された案内所に寄ることをお勧めします。
係の方がウォーキングマップを手渡してくださり、てきぱきとルートと所要時間を説明してくれます。
大門坂駐車場→(20分)→青岸渡寺・那智大社→(20分)→那智の滝→(30分)大門坂駐車場
ぐるっと回って、休憩を入れて所要時間3時間はみてください、とのこと。
さあ、出発!
大門坂駐車場からしばらく道路沿いに歩き、途中から山の方へ入る細い道のほうへ。
石碑が建っていますね!
しばらくは民家があり、茶屋や土産物屋などがあります。
小さな橋を渡ると鳥居が。ここからすでに神の領域なのです。一礼して歩き出します。
石畳の道が始まるところに生えているのが夫婦杉。
直径が何mあるのでしょうか。 おかしな人影も写っていますが、そっとしておきましょう。念願の熊野古道を歩いてテンションが上がってしまっているようです。
石畳の道に入ると、本当に静かな空気に包まれます。
すぐに『多富気王子跡』がありました。
杉木立の放出するフィトンチッドを吸い込みながら、ひたすらに石段を登ります。
立て札がついているものをみると、どの木も800年と同じくらいの樹齢のようです。参詣道のために一度に植えられたものなのでしょうか。
並木の中には朽ちて、大きなうろができているものもあります。
石段のひとつひとつが意外と大きいので、段差に気を付けて上りましょう。
それにしても、この石畳はしっかりとしていてとても美しいけれど、これを維持することはどれだけ大変かが偲ばれます。雨も多く、台風も多いこの地方では土砂災害も多いことでしょう。
気温を心配していましたが、歩いているうちに体が温まり、防風フリースを脱いで薄着で歩いても平気なほど。
森の空気を吸い、無心に歩くことでエンジンがかかったような感覚になってきました。
たまに人とすれ違う時は笑顔で挨拶をかわします。
30分ほどで木立がまばらになり、石畳の道の終わりが見えてきました。
ここからは再び、土産物屋などが並んでいるアスファルトの道を歩きます。
1日目⑤青岸渡寺
閉まっている土産物屋もある中、大きなすずり屋さんがありました。
那智の特産である、きめが非常に細かく石肌が美しい那智黒石。
黒の碁石などにも使われています。
この石で作られたすずりは最高級品として知られています。とても欲しかったのですが、当然ながらお値段もかなりよかったので、代わりにちいさなフクロウ(440円)を買いました。ご利益ありそう!
しばらく平地を歩いたら、またまた石段が始まります。あと少し、きっとあと少しだよ!
石段の途中に山門があり、通り過ぎたあとに見下ろすと、自分がいまかなり高いところにいることがわかります。
やっと、青岸渡寺に着きました。
参道に比べて人が多いのは、山頂までバスや車で来ることができるから。
石畳の道の静寂が嘘のように、参拝客で賑わっています。
大きな手水舎が設えてあり、1月にふさわしく、南天や水仙などが活けられています。
これもまた花手水というのでしょうか。水音とあいまって、すがすがしさに心まで洗われるようです。
青岸渡寺は、伝承の上では4世紀、インドの僧裸形上人が那智の滝において修行し、その滝つぼから8寸の観音菩薩を感得し、それを本尊として庵をむすんだのが始まりと言われています。
そのころは、いわゆる歴史で習う仏教伝来より前。
この仏教伝来というのは、欽明天皇の代に、百済の王より経典や仏像などを贈られたという事実を指してのものです。これにより、大陸での最新の文化である仏教を国策として取り入れていく流れになりました。
しかし、それ以前に渡来人自身が信じる宗教としての仏教はすでに持ち込まれていた可能性も高く、百済を介してインドの僧が日本にたどり着き、熊野の地、那智の滝で修行したというのもまったくの伝承にすぎないわけではないかもしれません。
そんな想像をしながらお参りをしましょう。
風雨に洗われた本堂は、参拝客でにぎにぎしく、活気がありながらもどこか懐かしい気持ちになります。
1日目⑥熊野那智大社
では、隣接する熊野那智大社へ。
青岸渡寺に先に参拝された方は、境内からそのまま小鳥居をくぐって那智大社へと進めますが、やはりちょっと戻り、この大鳥居をくぐってお詣りすると気分が違います。
もう何回目になるかわからないような石段を登りきると、山頂にあると思えない広い境内に驚かされます。
那智大社の祭神は、熊野夫須美大神(伊邪那美神)。
平安時代から鎌倉時代にかけて、白河上皇をはじめとした上皇たちが、熱心に熊野御幸を行いました。
それによって熊野三山がメジャーになり、『蟻の熊野詣』と言われるほど庶民にまで広まったのは、その後世の中に浄土信仰が広まりを見せたことが影響しているといいます。
那智大社の祭神熊野夫須美大神も、垂迹思想により観音菩薩の化身であるとされています。
あらゆる衆生を救うという観音菩薩の性質ゆえに、遠く山々を越えてまで熊野古道を歩み、人々は熊野三山を詣でたのでしょう。
そんなことを考えながら、崖の上に張り出すように作られた休憩処で景色を堪能します。
山並みを下に眺め、遠くには海も見えます。
その海の彼方には、補陀落渡船がめざした補陀落浄土があるのでしょうか。
1日目⑦飛瀧神社
ちょっと体が冷えてきたので、休憩処に入りました。
黒飴ソフトクリームなるポスターも目に入りましたが、今はさすがにちょっと挑戦できません。
代わりに、体があたたまりそうなあめ湯というものを注文しました。
生姜の効いた甘い飲み物で、水あめが使用されているのであめ湯と呼ぶんですね。冬にピッタリ!
ひとしきり休憩したら、次は那智の滝に行きましょう。
アスファルトの道を下りていくと、那智の滝の写真でよく見かける三重塔が見えてきました。
この三重塔、写真ではとっても素敵なんですが、近づいていくとなんとも懐かしいチープな塗装。
なんだか古い遊園地の施設を想起させます。
展望台になっているようなので、ある意味怖いもの見たさで入ってみることに。
ふたり入ったらもう一杯になりそうな狭いエレベーターで最上階の4Fを目指します。
『最上階からは那智の滝の滝つぼまで覗くことが出来ます』と書いてあったんですけどね。
4Fは落下防止の金網が張ってあり、金網の穴から滝を眺めるという謎の仕様でした。やっぱりな!
2Fから見える景色の方がよかったことをご報告いたします。ただし滝方面は木に隠れて見えず。
B級的な観光施設も楽しめちゃう方、ぜひ三重塔にも挑戦してみてください。
さあ、どんどん那智の滝に近づいていきましょう。
坂を下ると、高い高い杉並木と飛瀧神社(ひろうじんじゃ)の鳥居が見えてきます。
- 神秘的な飛瀧神社の鳥居杉並木と再びの石段
今日だけで一体どれだけの石段を上り下りするのでしょうか。
滝の真ん前に陣取った写真屋さんが
『ここの石段は133段あります。瀧の高さの133mに合わせてあるんですよ』
と教えてくれました。帰りに数えてみよう。
では、やっとたどり着いた飛瀧神社にお詣りしましょう。御朱印をお願いした時に、こんな入り口を見つけました。
ここまで来たら最奥まで行きたい!300円を払って入場してまた石段を上り下り。
水占いや神霊石(みたまいし)など興味深いものがたくさんありましたが、お伝えしきれません!
しかし那智の滝を訪れるならここまで入らないと損、これだけは言えます。そしてついに、一番奥まで来ました。
那智大社ももともとは、修験道の霊場だったこの那智の滝から始まっています。
考えてみれば、今のように参道が整えられていなかったころ、ここで修行した人たちはすごい。
青岸渡寺、那智大社とめぐってきましたが、一番感銘を受けたのは飛瀧神社でした。
滝は各地で修行の場として霊場になり、そこを拠点として神社仏閣へと発展していくことが多いですが、その理由を直感的に理解できます。
ひんやりとあたりに漂う冷気、絶え間ない瀑布の音、尽きず流れゆく大量の水。
理屈ではない、自然の圧倒的な力。人間はそれを神と呼ぶのでしょう。さて、そろそろまた山を下りて、人間の世界に戻りましょうか。
まずはこの133段の石段を上るところからですね…
気を紛らわすために、カウントしながら上ります。132、133、134!あれ、1段多い?
どこかで数え間違えたのでしょうか。
同じようにカウントしてみた方、情報をお寄せください。お待ちしております!さあ、那智の滝前バス停まで戻ったら、今度は大門坂まで土産屋の多い通りを歩いて戻ります。
やっていないお店も多いのが少し気になります。春から秋の営業なんでしょうか。大門坂まで戻ったら、ぜひ杖立てから杖を借りていきましょう。
スニーカーを履いていれば、滑りやすいということもありませんが、石段が意外と高さがあるため腰にくるのです…往路よりも早く、鳥居のある橋まで戻ってきました。
日が傾きかけていたこともあり、民家を見かけてほっとします。
大門坂駐車場まで戻る頃には、出発してからきっかり3時間経っていました。熊野古道を歩いてみて、せっかく熊野詣をするなら少しでも歩く方がいい、と実感しました。
山の中を歩くことで得られる心身のリフレッシュ効果はもちろん、自分の足で一歩一歩踏みしめていく行程があるからこそ、たどり着いたときの嬉しさ、ありがたさが身に沁みるのだと感じました。
山に詣でることは、それ自体がひとつの修行であり、功徳を積むことであるという考え方には大いに共感できます。自分で額に汗して歩くことが大切なのです。
今回歩いたのは熊野古道のほんの一部。
次に機会があったら、どのコースがいいかな、と車に乗り込みながら考えます。
でもとりあえず今日は、もう石段は上りたくなーい!1日目⑧桂城での夕食と、ホテルかつうら御苑
日が沈むと、一気に夜の闇が押し寄せます。
大門坂からまずスーパーを探し、Aコープなちにたどり着き、明日のためにいろいろと購入。それから、夕食のお店を探します。
那智勝浦と言えばまぐろ。お昼は洋食で頂き、夜はやっぱり王道の和食で!
ということで選んだ桂城は、寡黙な大将がやっているまぐろのお店。メニューをみて悩みましたが、大将のまぐろおまかせ7品にすることにしました。
まず目の前に置かれたのはお通し、マグロの内臓の辛子味噌と、くじらの佃煮。辛子味噌はかなり辛子が効いていて、内臓は歯ごたえがあります。
くじらの佃煮はちょっとワタクシ世代には懐かしい味。なぜか愛知県でも給食に出ていたんですよね。
呑める人ならお酒が進みそうなラインナップ。昼間のまぐろほほ肉に続き、カマの塩焼きは初めて食べました! これは癖になりそう。
本日2回目のまぐろカツも、ミニ漬け丼と味噌汁、柴漬けまでしっかり完食。
いや本当に、まぐろは揚げてもこんなに美味しいとは知りませんでした。お料理を楽しんでいると、南紀パラグライダーさんから電話。
明日の午後、風は大丈夫でしょうとのこと。
集合は12:30、太田川河口。
二日目のメインイベントが無事に決まったところで、さあ、泊まるところを探しましょう。
いくつかホテルがあるので、きっとどこかは空いているはず。
もし取れなければ車中泊!確実に腰に来るね!幸いにして、かつうら御苑というホテルをとることができました。オフシーズンでよかった!
かつうら御苑は那智駅から車で10分ほどの、古き良き観光ホテルといったところ。
室内は清潔で広々。
温泉はぬるめで、ゆっくり浸かれます。
しかし、露天風呂はこの時期、海からの風を受けてとても寒いので、挑む方はご覚悟を。湯上りにAコープなちで見つけた、新宮市の畑中製菓の『ヤキリンゴ』(135円)をパクリ。
これも当たりでした!スポンジに挟まれたカスタードにはリンゴの角切りが入っています。
このかわいいパッケージといい味といい、これはきっとずっと地元で愛されているお菓子だろうな。
前情報なしで、地元のスーパーでこういうものを見つけるのがまた楽しいのです。その夜、熊野古道を歩いた疲れから、まぶたを閉じたとたんにぐっすり…かと思いきや。
ひそかに『大丈夫だろうか…私は飛べるんだろうか…いざとなったらビビッてしまって飛べなくなるんじゃ…』
などと不安になり、布団の中で輾転反側としていたチキンハートなワタクシであります。2日目①午前中は観光地巡り
思い悩みながらも、気づけばしっかり寝ていたようで6時半ごろに起床。
カーテンを開ければ、部屋の前の海が朝焼けに染まっています。
ワタクシが旅行をする際は、長期でない限り朝食は頼まず素泊まりにするのが常です。
なぜなら、夜は地元のお店に行きたいし、朝は時間に縛られてしまうのが嫌だから。お茶を入れ、Aコープ那智で購入しためはりずしや、インスタントのスープパスタなどを部屋で頂きます。
うーん、でもやっぱりホテルのあたたかい朝食のほうがよかったかな…
まあ、そんな風に思う時もあります。さあ、ここで本日の予定を確認。
午前:串本に向かいながら、観光地を巡ってみよう
午後:12:30からモーターパラグライダー!そのあと、帰路へモーターパラグライダー以外はあってないような予定ですが、とにかく出発しましょう。
かつうら御苑を早々にチェックアウトし、一路南下。今日は何に出会えるかな?くじらの町、太地町
くじら漁で有名な太地町で、大きなくじらの親子に会いました。
近くで見ると圧巻です。
2009年に公開されたアメリカのドキュメンタリー映画『The Cove』において、太地町のイルカ漁が煽情的に取り上げられ、地元の漁師さんやスーパーまでもが、過激な愛護団体に土足で生活圏に踏み込まれ、その日々の営みが荒らされました。
太地町漁協スーパーのくじら類の棚の古い張り紙『無断で写真を撮影しないでください』は、単なるいたずら防止ではありません。声なき怒りなのです。道の駅たいじでは、レストランでこの地方の大切な伝統料理であるくじらを使った竜田揚げ定食やカツ、焼き肉などのメニューを頂けます。
日本では古来よりくじらは貴重なたんぱく源であり、まさに神からの恵みでした。
くじら漁に携わる人々は命がけでくじらを獲り、その命に感謝し、皮から骨にいたるまで全身余すことなく利用していました。
その文化を知り、人々がくじらに対して抱いてきた敬意と愛情を理解し、その文化がしっかりと受け継がれていくことを祈ります。
ちなみに、太地町ではこんなかわいいポストがあります!本州最南端、潮岬
時間があったら串本駅でレンタサイクルを借りて潮岬までサイクリングしようか!
と思っていましたが、想像していたよりも距離があり、断念することとなりました。
潮岬は本州の最南端。
ここまでくると、急に視界がひらけ、みごとな芝の広場が広がって…
おや、芝が見事に焦げてる!
真っ黒ですが焦げ跡がきちんと線を引いたようにきれいで、火事ではなさそうです。
いったい何があったのか。帰宅してから調べたら、その前日(1月第3土曜日)に毎年恒例の『本州最南端の火祭り』が行われていたとのこと。うーん見たかった!
この焦げっぷりからすると、とても迫力のある火祭りだったに違いありません。本州最南端、潮岬からの眺めは最高。
高台になっているので、はるか彼方の水平線まで一望できます。
ぐるっと見回すと、水平線がほんのり弧を描いているのがわかります。午後に予定しているモーターパラグライダーも、季節や気象条件によっては会場がここになるとのこと。
しかし気をつけろ!潮岬のお土産物屋さんはオープンが10:30。早く行っても空いてないぞ!橋杭岩
串本から紀伊大島の方向へ、約850mに渡り大小40以上の岩が整列しています。 弘法大師と天邪鬼が賭けをして、一晩で建てたという伝説が残っているのだとか。
なるほど確かに、橋を架けるための杭が並んでいるみたい!
案内板によれば、橋杭岩は、地表に噴出したマグマが風雨と波の浸食により今の姿になったものだそう。
道の駅『くしもと橋杭岩』は新しく、お土産も充実しているのでぜひ。うどんとうなぎの古座川
古座川沿いの古民家を改装したうどんとうなぎのお店。
障碍をもつ方が一般就労に向けてスタッフとして訓練をされる場所でもあるそうで、その旨がメニューの最初に載っており、文章からオーナーのお人柄が伝わってきます。
スタッフの方にはとても丁寧に接客して頂き、こちらも嬉しくなりました。
店内では、テーブル席の他に窓際のカウンター席も設けられており、古座川の清冽な流れを見ながらお食事を頂けます。
寒い日だったので鍋焼きうどんを注文。ずっと外を回って冷えた体に、あつあつのうどんが沁みわたる!
心も体もほっかほか。いいお店です。
食べ終わってしばらくすると、店員さんが『もうすぐ銀河が通りますよ!』と教えてくださいました。
銀河、それはWEST EXPRESS銀河。
紺碧のボディが渋い、JRきのくに線の素敵な観光列車なんです。観光列車だけあって、古座川にかかる陸橋で少し速度を落として運行していたので、ちょっと遠いけど写真を撮れました。
なんだかとっても得した気分。こういった心遣い、嬉しいですよね。
『うどんとうなぎの古座川』。応援したくなる、人に教えたくなるお店です。2日目①モーターパラグライダー
さあ、今回の旅のもう一つのメインイベントのお時間がやってまいりました!
ああ、自由に空を飛べたらな…ねえドラえもーん!
そう思ったことはありませんか?
人類の夢である、空を自由に飛ぶ。それが叶うのです、モーターパラグライダーならね!テレビなどで、空を滑るように飛び、鳥が飛んでいるように山や町の景色を俯瞰する映像を見かけませんか? あれはモーターパラグライダーから撮った映像です。
モーターパラグライダーは、通常のパラグライダーにエンジンをつけたもの。
風に流されるだけでなく、平地から離着陸ができ、自分で高度や方向を調節できるというすごい乗り物なんです。
今回は、南紀パラグライダーさんにお世話になりました。さて、時間通りに太田川河口に着くと、細い道に『パラグライダー会場』と小さな看板が出ているので、それに従って進みます。
途中で結構細い道を通るので、ご注意を!現地で出迎えてくれたのは、イケメンの立野さんと、美人な奥様。お子さんたちも砂浜で遊んでいます。ステキ家族だなあ…。
挨拶したら、早速ブリーフィングを行います。
乗り物酔いの有無、ピアスなどは外すこと、直前にダイビングをしていないか、などいくつかの項目を聞かれます。ここで突然のまめちしきコーナー!
ダイビングの後は、パラグライダーやスカイダイビングなどのスカイアクティビティや飛行機の搭乗、また登山は禁忌とされています。減圧症の原因となるからです。
スキューバダイビングでは、水圧のかかった状態でタンク内の気体を吸入しているため、酸素だけでなく窒素をも、血液や体組織に吸収した状態となっています。
地上に戻り時間が経てば、徐々に体外に排出されていき、なんの問題もありません。
しかし、体内に窒素が残っている状態で高い所に行くと、血中に溶け込んでいた窒素が、血管内で気泡を作り、めまいや疲労感、関節の痛みなどの諸症状を引き起こします。
重症になると、減圧室での治療が必要になるなどの大事になってしまいます。
ダイビングのあと、必要な時間はおよそ12時間~18時間。
よって、和歌山をはじめ沖縄や海外リゾートなど、スカイアクティビティとダイビングを楽しめる旅行先に行くときには、スケジュールの組み方が重要になります。ぜひ覚えておいてくださいね!さて、必要項目確認の後は、離陸時、着陸時の注意。
実際のフライトは、立野さんとのタンデムで、一人ずつ飛ぶことになります。
滞空時間自体は全部で15分ほど。
しかしブリーフィングと準備などで、1フライトに40分は必要。
また、風向きが悪くなった場合は向きが変わるのを待つ必要もあるため、時間に余裕をもって臨む必要があります。
本日の風向きはどうでしょうか?
なんと、ワタクシの常日頃の行いが良いからか、それとも前日の熊野詣でのご利益か、冬には珍しいベストコンディションですって!
良かった、本日のメインイベント、決行です!
おまけに、コンディションが良い日は、通常の高度200mよりも高く、400mまで昇れるのだとか。
400mか…倍だなあ…離陸の様子は同行者の写真でお伝えします!
まず、プロテクター等を装着し、無線で会話できるヘルメットもしっかりと装着します。といっても全てやって頂けるので、されるがまま。
風向きが変わってしまったら、風を待ちます。東風来―い!立野さんがエンジンをかけ、合図で走り出します。体が浮くまで走り続けろ!
あっという間に浮き上がり…そして小さくなっていきます。この高さですでに高度100mくらいだそう。
走り出して体が浮き上がるまでは本当に一瞬。
恐怖を感じる間もなく上昇気流によって高度が上がり、ぐいぐい昇っていきます。
しかし高度200mまで来ると、視界が広がってきたからか、ちょっとしたパニックに。
ここで立野さんから無線。
『いま200m、どうする?400mまで行きますか?』
普通この場面ならイエス一択なのですが、ワタクシの口から出た言葉はこうでした。
『しょ、しょうじき怖いです…』
ああ、なんたることでしょう。
恥を忍んで包み隠さず申し上げます。めちゃくちゃ怖かったです。
景色はとてもいいけれど、時折ふわっと落ちるような感覚がすることがあり、それがとても怖いんです!
ジェットコースターで落ちる瞬間、または飛行機でエアポケットに入った時に感じる、怖い人にはとても怖いアレです。
アレを高度数百mで感じるわけです。
ああ、鉄の心臓がほしい。
ビビりであることをこんなに恨めしく思うことも滅多にありません。
あとから考えると、この時点で緊張と揺れ、寒さで酔ってしまい、恐怖感が加速してしまったのだと思われます。
乗り物酔いの経験がある人は、酔い止めを飲んでおかれること、上半身だけでなく、下半身もボトムを重ね履きするなどの防寒対策、その二つを強く強く推奨いたします!結局、200mでGoPro写真を撮って頂きました。
『ハイ、笑顔でカメラの方を向いてー!』
『はい、バーから手を離してバンザイしましょう!』
立野さんからてきぱきと指示が飛んできますが、不思議だなあ、手がバーから離れないのですよ、恐怖で。
ともかく画像をご覧ください。地球は…いや和歌山の海は青かった。『では、ここから降りていきますよ~』
降りる時は、なぜか恐怖感はあまりなく、あっさりと降りてきます。
最後、地上に着いたらパラグライダーが閉じるよう、パラグライダーの方を向いて少し走ります。
そうして無事、なんとか地球にふたたび降り立ちました。ああ、怖かった。
しかし、これではベストの風景をお伝えすることができない…なんということでしょう。
仕方なく、同行者に望みを託します。
頼む、400m行ってくれ!
そして、あっさりと同行者は飛び立ち、順調に高度400mの世界へ。諸君、刮目せよ!これが高度400mの世界だ!
やはり200mと400mでは、景色の見え方が違うのがよくわかるかと思います。
それにしても、串本の海の色、なんて素晴らしいのでしょうか。
完全に南の海の色をしていますよね。
串本は本州にいながらにして熱帯魚を見ることができるので、ダイビングも盛ん!
しかも、この海岸はウミガメの産卵地なのだそうで、その季節には運が良ければ上空からウミガメたちが泳いでいるのを見ることができるそうです。もはや夢の世界ですね。ワタクシ自身は200mしか飛べませんでしたが、それでも十分に楽しんだ、と言いたいところ。
でも、やっぱり悔しい。次こそは400mに行きたい。
そのためにはこのチキンハートをなんとかしなくては!
こうしてリベンジを誓い、家路についたのでした…これを読んで頂いた皆様、我こそはと思う方にはぜひともモーターパラグライダーの素晴らしさを体験していただきたいです!
ちなみに、南紀パラグライダーさんの公式HPから直接予約すると、GoProでのこんな素敵な写真がサービスになるそうですので、お忘れなく。(先に知りたかった…)行き当たりばったりで挑んだ和歌山の旅、いかがでしたでしょうか。
1泊2日では、和歌山を楽しみつくすにはあまりに短すぎました。
世界中から旅人が訪れる世界遺産熊野古道をはじめ、美しい海山空すべてを満喫できるモーターパラグライダー、また本州にいながら南の海の魚たちを間近で見られるダイビング、世界的にも珍しいほどのパンダの繁殖数を誇るアドベンチャーワールド、などなど、和歌山は本当に数えきれないほどの魅力があふれています。
どうか和歌山を、あなたの次の旅の目的地候補に加えてください!※冒頭の熊野古道大門坂のイメージ写真は、公益社団法人和歌山県観光連盟よりご提供頂いており、著作権は同法人に帰属しています。