
笑うかどには「ふくろうの神社」~鷲子山上神社~

こんにちは。神社仏閣や史跡を訪ねるのが大好き、47都道府県2巡目の、ライターにうと申します。 今回は、県境のど真ん中に建つ、大変珍しい神社に参拝してまいりましたのでご紹介します。 珍しいだけでなく、思わず笑みがこぼれてしまう楽しい神社でしたので、少しの間お付き合いいただけると嬉しいです。
全国でも珍しい神社
今回伺ったのは「鷲子山上神社」。
栃木県と茨城県の県境の真ん中にある、全国でも珍しい神社です。
ほかに県境に建てられた神社がないか調べてみましたが、この鷲子山上神社のほかには、長野県と群馬県にある熊野皇大神社しか確認することができませんでした。
ちなみに鷲子山上神社の読み方は「わしこやま」ではなく、栃木県では「とりのこさん『し』ょうじんじゃ」、茨城県では「とりのこさん『じ』ょうじんじゃ」と、県により異なっているそうです。
御祭神は天日鷲命(あめのひわしのみこと)・大己貴命(おおなむちのみこと)・少彦名命(すくなひこなのみこと)。
「神社の境内で栃木県から茨城県へ越境したら楽しそう」というしょうもない理由で伺うことにしましたが、この神社、「ふくろう(不苦労)の神社」として有名で、とりわけ金運のご利益があるそうです・・・!
※漢字が読みにくいのと、栃木県と茨城県で読み方が異なるため、以下、「鷲子山上神社」を「ふくろうの神社」と書いてご紹介します!
ナゾの看板「ここは出口です」
ふくろうの神社へは、栃木県を埼玉方面へ南下するかたちで向かいました。
初めて伺う場所なので、カーナビに目的地をセットして出発。
3ケタ国道の、のどかな田園風景を抜けると、徐々に上り坂になっていく・・・!
県境は山の上にあることが多いため、いよいよ神社に近づいてきたか!と期待も膨らみます。
「マモナク、ヒダリニ、マガリマス」
上り坂を上がり切ったところでカーナビが指示したのは、国道から分かれた細い道。
でも、カーナビは「マガリマス」と言っているのに、曲がり角に建てられた看板には
「ここは出口です/入口はこの先茨城県より」
と書かれていました。
「なんで?」
首をかしげつつも、途中で行き止まりになっていたら嫌なので、カーナビの言うことは聞かずに栃木県から茨城県へ向かうことにしました。
栃木県から茨城県への越境は境内で行うつもりだったのに、早くも野望がついえて残念無念。
ところが茨城県側からふくろうの神社へ向かう峠道は狭くて、とても残念無念している場合ではありません。
「これで対向車が来たらどうしよう・・・」とハンドルを10時10分の位置キッカリに握りしめながら時速10kmで進みました。
*
なお、参拝を終えて帰路につく際は、元来た道を戻るのではなくて当初カーナビが示した栃木県側に抜けたのですが、本当の本当のほんとうに道が狭かったです!
ところどころすれ違うための待避場所はあるのですが、それでもギリギリすれ違うことができるかな?程度の広さ。
元来た茨城県側の道よりもさらに狭く、ここは車道じゃなくて歩道では?と思うくらいでした。
もしもカーナビの言うとおりに侵入して対向車が来ていたら、私の運転能力では完全にアウト。
「ここは出口」の看板に従って正解でした。
巨大すぎるフクロウ像
車を駐車場に停め、境内に向かう遊歩道を進むと、道沿いにフクロウの石像が。
そして参拝中、あらゆる場所でフクロウの石像を見ることになります。
御祭神が天日鷲命(アメノヒワシノミコト)といわれる鳥の神さまで、フクロウはこの神さまの使いであり幸福を運ぶ神鳥として崇敬されていることから、多くのフクロウ像が祀られているそうです。
石像につけられたタイトルを見てみると、
「身体健全ふくろう」
「家内安全ふくろう」
はては「職場円満ふくろう」「環境保全ふくろう」まで。
参拝される方の願いはさまざまで、また、時代のニーズに合わせて、フクロウたちが神さまから遣わされているのかもしれません。
*
そして遊歩道を抜けると、
「なにあれ、デカ!」
本宮(かつての本殿)に向かう階段の下から、チョー巨大なフクロウ像が見えました。しかも黄金色!
この写真、画像編集ソフトでフクロウだけを拡大しているわけではなく、縮尺などはそのままです(笑)
本宮の手前に飾られているのは「日本一の大フクロウ(不苦労)像」。
ふくろうの神社の中でも一番の人気のあるパワースポットなのだとか。
たしかにインパクト抜群、SNSなどに写真を載せたら話題になりそうですね。
本宮の境内はあまり広くないので、自撮りで「大フクロウ像」と一緒に撮影する場合は、今回載せた写真のように、本宮に向かう階段の下から撮影するとちょうど良いと思います。
また、撮り方を工夫すれば、頭の上に黄金のフクロウがちょこんと乗っている写真が撮れそう。
お出かけの際はぜひお試しください!
ちょいちょい現れる「県境アピール」
本宮の参拝を終え、いよいよ本殿へ。
社務所を通り過ぎ大鳥居に向かうと、参道の真ん前にあったのは「県境」と書かれた看板。
「ここが県境なのか・・・!」
県境が目に見えるわけでもないのに妙に意識してしまい、普段は「参道の真ん中は神さまが通る道だから端を歩こう」と心がけているにも関わらず、この時ばかりはと真ん中を歩きました(笑)
左足が栃木県、右足が茨城県に所属している感じです。
神さまに対して失礼だったかもしれませんが、とても楽しかったです。
このあと、ふと足下を見るとちょいちょい現れる「県境」の表示。
表示を見つけるたびに「あ!あった!」と嬉しくなります。
フクロウの像と言い、県境表示と言い、神社を管理されている宮司さまはじめ神職の皆さまがサービス精神旺盛なのでしょう。
神社参拝というと畏まった形で行いますので幼いお子さんは退屈してしまいがちですが、フクロウの数を数えたり、「県境」の表示を見つけたりするなど、これならお子さんも楽しく参拝することができそうです。
(ちなみに、バリアフリーのお手洗いもありました♪)
本殿まで楽しい
本殿まで続く96段の石段は、往復することで96×2=不苦労のご利益があるとのことです。
石段の奥行が狭いので、小さなお子さんやお年を召した方はちょっと歩きにくいかもしれません。
その場合は、石段以外にもゆるやかな坂道を登るルートがあります。
なお、ゆるやかなルートは悪路ではないものの、ベビーカーなどは操作が難しそうに思えました。
高所恐怖症の私は、「振り返ったら負け」とばかりに階段を一気に駆け上り、本殿へ。
本殿は歴史が感じられる造りで、繊細な彫刻がとても見事でした。
それだけでも見ごたえ充分ですが、ここにもフクロウの像や「県境」の表示があり、極めつけは本殿前(拝殿)の左右に奉納された栃木・茨城両県のフクロウ像。
(おちゃめか!)
心のなかでツッコミを入れつつ笑みがこぼれました。
本殿での御祈祷は社務所で受け付けていて、希望される場合は本殿を参拝する前に社務所に立ち寄ると良さそうです。
先に本殿を参拝してから御祈祷の申込をするとなると、96段の石段を2往復することになります。
本殿に備え付けられた参拝者記帳簿をぱらぱら拝見すると、北は北海道から南は福岡まで、全国から参拝者が訪れていることが分かりました。
それだけご利益があるのでしょう、中には宝くじが高額当選した方もいらっしゃるようです。
私もご利益にあやかろう・・・!と思いつつも、パッと思いつくお願い事が特になかったことから、
「参拝する皆さんのお願い事が叶いますように」
と願ってきました。
ですので、もしもこの記事をご覧になって「ふくろうの神社に参拝して宝くじが当たった!」という方がいらっしゃいましたら、ジュースをおごっていただけると嬉しいです(笑、冗談です)
社務所も栃木・茨城とふたつ
社務所も、県境を挟んで向かい合わせにふたつありました。
栃木側の社務所では祈祷の受付やお守りの授与が行われていて、一方で茨城側では五月節句の展示がされているのみで無人でした。
このふくろうの神社は栃木県・茨城県それぞれにカウントされていてふたつの神社とされているとのことでしたので、栃木側、茨城側にそれぞれにお守り授与所があるのかなと思っていました。
それなのに栃木側にしか職員の方が見当たらない。
御朱印を受ける際、栃木社務所の方に訊ねてみることに。
「社務所がふたつあるのに茨城側は無人のようですが、茨城側には職員の方は常駐していないんですか?」
「はい」
「イベントの時などにいらっしゃる感じですか?」
「いえ、いつもこんな感じで無人です」
どうやら栃木側の社務所は祈祷の受付などに使用し、茨城側の社務所は祭典などの際のスペースとして使用するというように、使い分けがされているようです。
社務所がふたつあるので「栃木バージョン」「茨城バージョン」のお守りやお札があるのかなと勝手に思い込んでいましたが、そこは一種類に統一されているようでした。
*
御朱印は手書きのもののほかシール式のものがあり、御朱印帳を忘れてきてしまった場合でも帰宅後に自分で貼り付けることができます。
今回は手書きのものをお願いしました。
栃木県・茨城県のスタンプが押されていて、一目で「県境の神社!」と思い出すことができます。
なお、御朱印を待つ間は近くを散策していましたが、「福ふくろうロード」という100体のフクロウ像が並んだ小路を歩いたり、「亀井戸」という清水が湧きだしている井戸で水みくじを引いたりするなど、飽きずに待つことができました。
金運だんごの先に・・・
帰り際に立ち寄った休憩所はスペースが2つに区切られていて、そのうち1か所はペット可となっていました。
ペット連れでも気兼ねなく休むことが出来るので、愛犬家の私としては嬉しい限り。
せっかくご配慮いただいているので、飼い主側としても節度をもってペットと参拝したいですね。
そして、ここの休憩所は山菜おこわが有名なようですが、「テレビで紹介されました!」と書かれた金運だんごが気になってしまい、そちらを注文することに。
黄色いまんまるだんごに甘じょっぱいタレをつけていただきました。
なかなかのボリュームで、参拝後のおやつにぴったり!むちむち優しいお味でした!
*
だんごをいただく前に写真を撮ろうと休憩所の外の席でカメラを構えると、
金運だんごの先に映る地面に、「県境」の表示が。
思わぬ偶然に噴き出してしまいました。
「参拝者に楽しんでもらいたい!」という神職皆さまの思いがフクロウを通じて神さまに届いて、その結果、たくさんのご利益があるのかもしれませんね。
最後に
今回参拝させていただいた鷲子山上神社(ふくろうの神社)は、たくさんのフクロウ像や県境表示など、ご利益を授かりに伺うばかりでなくて参拝に至る前やその後も楽しく過ごすことのできる、ちょっとおちゃめな神社でした。
神社参拝で、こんなに楽しい思いをしたのは初めてです。
もしかしたらなのですが、楽しんでしまう、笑ってしまうことで苦労も苦労ではなくなる(不苦労になる)ことを、「おちゃめな神社」という形で体現されているのかなと感じました。
「最近、笑えてないなあ」と思われたら、少し足を伸ばして参拝にお出かけになってみてはいかがでしょうか。
なお、令和5年のゴールデンウイーク期間中は、この神社にある大黒天(室町時代の造立)が15年ぶりに御開帳されるそうです。
タイミングが合う方はぜひ!
最後までお付き合いいただきありがとうございました。