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執筆者:ナナセ
梅に関する特集

菅原道真公を慕った梅の伝説

執筆者:ナナセ
執筆者:ナナセ

はじめまして、ライターのナナセです。
お出かけや旅行が好きで、休みの日は家にいるより、外へ出かけることの方が多いです。
まだまだ寒い日が続きますが、2月4日には立春を迎え、暦の上ではもう春ですね。
そんな春の訪れを告げる花といえば、「梅」の花。
今回はそんな梅と関わりの深い、九州で一番の梅の名所をご紹介していきます。

春の訪れを告げる花

梅の開花のニュースを聞くと、春の訪れを感じる方も多いのではないでしょうか。
紅や白の花を咲かせ、数百種類の品種がある梅。
梅の木の原産は中国だそうですが、日本には約1500年前に伝来したとされています。

太宰府境内の梅
太宰府境内の梅

万葉集などにも梅にまつわる和歌が多数収録されており、日本でも古来より親しまれています。
そんな梅と深い関係がある、菅原道真公。
今回は菅原道真公をお祀りする、「太宰府天満宮」についてご紹介していきます。

太宰府天満宮について

太宰府天満宮は、福岡県太宰府市にある神社です。
菅原道真公の御神霊(おみたま)をお祀りしていて、「学問・至誠(しせい)・厄除けの神様」として、毎年たくさんの方が参拝に訪れています。
特に学問の神様として有名で、受験シーズンなどは、多くの受験生が合格を祈願しに訪れます。
福岡県の方は、受験シーズンに太宰府天満宮のお守りをいただいたことのある方も多いのではないでしょうか。
また日本のみならず、外国の観光客の方も多く、年間1000万人程の方が参拝に訪れるそうです。

最寄駅は西鉄電車の太宰府駅で、駅からは徒歩5分程。
お土産屋が参道に軒を連ねているので、周りのお店を眺めつつ歩いていると、あっという間に到着します。

太宰府天満宮の境内には、200種類程の白梅、紅梅があり、梅の名所としても知られています。
たくさんの種類の梅があるため、早咲きのものや遅咲きのものまで様々。
1月下旬〜3月初旬頃まで、梅が楽しめますよ。

  • 2月初旬の太宰府境内の白梅
    2月初旬の太宰府境内の白梅
  • 2月初旬の太宰府境内の紅梅
    2月初旬の太宰府境内の紅梅

飛梅伝説

菅原道真公 歌碑
菅原道真公 歌碑

太宰府天満宮のご神木は、「飛梅(とびうめ)」なのですが、この飛梅に伝説があるのをご存知でしょうか?

時は遡ること平安時代。
菅原道真公がご存命の頃のお話です。
当時、右大臣を務めていた菅原道真公が、左大臣の藤原時平の陰謀により、無実の罪で太宰権帥(だざいごんのそち)として、太宰府に左遷されてしまうことになりました。
そして、故郷である京の都(みやこ)を離れる際に、庭の梅に対して惜別(せきべつ)の想いを込め、以下の歌を詠みました。

“東風(こち)吹かばにほひおこせよ梅の花 あるじなしとて春な忘れそ”

その後道真公を慕った梅が、一夜のうちに京の屋敷より太宰府の道真公のもとへ飛んできた、という伝説です。

なんともロマンチックな伝説ですよね。
きっと長い間共に過ごしてきて、道真公と飛梅の間には深い繋がりが芽生えていたのでしょうね。

そんな飛梅は、御本殿の右横で見られます。
毎年境内の梅で一番に開花するそうで、今年は1月23日に開花しています。
道真公の歌のまま、現代でも主の隣で春の訪れをしっかり告げてくれています。
飛梅の見頃は2月中旬だそうです。

今回、一足先に開花した飛梅を見にいってきました。
まだ咲き始めでしたが、たくさんの方が写真を撮ったり、眺めたりしていました。

  • 御本殿横の飛梅
    御本殿横の飛梅
  • 2月初旬に開花していた飛梅
    2月初旬に開花していた飛梅

太宰府天満宮参拝のポイント

毎年多くの方が訪れる太宰府天満宮には、飛梅以外にもたくさんの見所があります。
そこで参拝の順に沿って、ポイントをご紹介していきます。

御神牛像

御神牛像
御神牛像

参道を登り、鳥居をくぐってすぐ目の前にあるのが、御神牛像です。

道真公が亡くなった際、ご遺体を牛車で運んだそうですが、現在の太宰府天満宮の本殿の場所で、牛が動かなくなったため、その地に埋葬されたそうです。
道真公は丑年、丑の日の生まれで、亡くなったのも丑の日だったそう。
生前より、牛を可愛がっていたということもあり、全国の天満宮には牛の像が設置されています。
この御神牛像は、頭を撫でると「頭がよくなる」とか、具合の悪い場所を撫でると、「怪我や病気が回復する」と言われています。
そのため、人が多い日は行列を作っていることも。
参拝の際は、願いを込めて御神牛像を撫でてみてはいかがでしょうか。

境内にある10体の御神牛像のうちの1体
境内にある10体の御神牛像のうちの1体

境内にはこの御神牛像以外にも、他に10体の御神牛像がありますので、よかったら探してみて下さいね。

心字池

御本殿に向かう道の途中に、「心」の形をした池があります。
「心字池(しんじいけ)」は池の形が由来となり、名付けられたそうです。
この心字池には3つの橋がかかっているのですが、それぞれに意味があるのはご存知でしょうか。
3つの橋は、太鼓橋、平橋、太鼓橋の順でかけられています。

  • 太鼓橋 
    太鼓橋 
  • 太鼓橋と平橋
    太鼓橋と平橋

それぞれの橋は、過去、現在、未来を表しているといわれています。
心字池の上の3つの橋を通る間に、心身が清められるという意味合いもあるそうです。
またこの橋は渡る際に注意点もあります。

過去の橋:振り返らない
現在の橋:立ち止まらない
未来の橋:つまずかない

なんだか人生の教えみたいですね。
未来の橋をつまずかずに渡ることができると、良いことがあるというジンクスもあるみたいです。
私は気をつけて歩いたので、なんとかつまずかずに渡りきることができました。
今後良いことが起こるといいなぁと密かに期待しています。

また帰り道にこの橋を渡ると、順番が逆になってしまうため、橋は渡らずに帰るほうがよいとされています。
脇道から抜けることができるので、そちらを通ることをお勧めします。
脇道から帰る際は、太鼓橋の朱色と緑の木々のコントラストが綺麗なので、風景を楽しむのもおすすめです。

心字池と太鼓橋の風景
心字池と太鼓橋の風景

麒麟像

麒麟像
麒麟像

橋を渡りきった右手に麒麟(きりん)像があります。

「麒麟」は、中国の空想上の聖獣で、良いことのある前兆として姿を現すとされています。
道真公の、善政や誠心を貫いた生涯と重ね合わせ、博多の商人たちから、1852年に奉納されたものだそうです。
かの有名な、日本の産業革命に貢献した貿易商、トーマス・ブレーク・グラバー氏も、この麒麟像を一目見て気に入り、譲ってほしいとお願いしたとされています。
現代でも、すごく精巧で立派な造りとなっているので、当時はもっと人の目を奪う魅力があったのでしょうね。

手水舎

手水舎
手水舎

朱色の外観が目を引く手水舎(てみずや)。
霊峰宝満山山腹より切り出された、1枚岩で作られているとても立派なものです。
なかなかこのサイズのものはお目にかかれないと思います。
中央には神亀(じんき)の浮き彫りがありますので、参拝前に手と口を清める際には注目してみてください。

楼門

御本殿側と、太鼓橋側で形状の異なる、珍しい楼門となっています。
表側からみると上下に屋根のある二重門、内側からみると一重門にみえる造りになっています。
行きと帰りで外観が違うので、初めて訪れた際は不思議に思ったことを覚えています。
現在の門は、明治の火災で焼失した後、大正3年に再建されたものだそうです。
参拝の際は、外観の違いにも注目してみてください。

  • 太鼓橋側の楼門
    太鼓橋側の楼門
  • 御本殿側の楼門
    御本殿側の楼門

御本殿

菅原道真公の墓所があった場所に、919年、左大臣藤原仲平が醍醐天皇の勅命にて造営したそうです。
その後数度焼失し、現在の御本殿は、小早川隆景が豊臣秀吉の命を受け、1591年に再建したものだそうです。
桃山時代の建築様式を採用しており、約400年経過した現代でも、美しさを感じます。
御本殿は、国の重要文化財にも指定されています。

御本殿
御本殿

仮殿

2月初旬、仮殿建設予定場所手前での参拝の様子
2月初旬、仮殿建設予定場所手前での参拝の様子

2027年の「菅原道真公 1125年記念大祭」に向けて、2023年の5月より、124年ぶりの「御本殿」の大改修工事が行われるそうです。
改修期間中は、御本殿の前に仮殿が建築されるそうですよ。
そのため、現在は仮殿建設予定場所手前での参拝になっています。
仮殿は2月から工事開始し、5月には完成予定だそうです。
仮殿もどんな様子になるのか楽しみですね。

おみくじ

祈りを込めて結ばれたおみくじたち

1月1日からおみくじの色が、梅をイメージした桃色に変化しています。
太宰府天満宮では、季節に合わせておみくじの色が移り変わって行きます。
おみくじの色が変わるというのは、とても珍しいですよね。
この季節に合わせたおみくじの色の変化は、「新日本様式100選」にも選定されているそうです。
様々な色のおみくじがありますが、私は、この季節の淡いピンク色のおみくじが大好きです。
祈りを込めて結ばれたおみくじたち、とても綺麗です。

梅ヶ枝餅

太宰府といえば梅ヶ枝餅、といっても過言ではないくらい有名ですよね。
参道のお土産屋にもたくさんの梅ヶ枝餅のお店があります。
この梅ヶ枝餅、県外の方に食べていただくとよく言われるのが、「梅、入ってないんだね」という言葉。
梅ヶ枝餅という名前から、梅が中に入っていると誤解されがちですが、小豆餡を餅生地で包んだ素朴な焼餅なんです。 表面には梅の刻印が入っていますよ。

では、なぜ梅ヶ枝餅と呼ばれるようになったのでしょうか。
それにはこんな逸話があります。

菅原道真公が太宰府に左遷された際、罪人同様の生活を強いられていたそうです。
そんな、日々の食事にも事欠く様子を見かねた老婆が、梅の枝に餅を刺して差し入れをした、ということが由来になっているようです。

見つかってしまうと、老婆も罪に問われるおそれもあったと思うので、見つからないようにこっそり差し入れしたのでしょうか。
無実の罪でそのような境遇に陥っていた菅原道真公を思うと、なんともやるせないですよね。

梅ヶ枝餅
梅ヶ枝餅

そんな梅ヶ枝餅ですが、お店によって味が微妙に違います。
人それぞれ好みがありますが、私は「寺田屋」の梅ヶ枝餅がおすすめです。
参道を登りきる頂上の左手にありますよ。
食べ歩きでテイクアウトすることもできるのですが、店内で食べることもできます。
時間に余裕のある方は、店内で美しい庭園を眺めながら、梅ヶ枝餅とお茶のセットを頼むのもおすすめです。
焼きたての梅ヶ枝餅はパリッとしていてとても美味しいですよ。
お持ち帰りでおみやげに持って帰っても、もっちりとしていて、焼きたてとはまた違った美味しさが味わえます。

寺田屋
寺田屋

まとめ

今回は菅原道真公ゆかりの太宰府天満宮についてご紹介させていただきました。
飛梅の逸話は、学生の頃古文の授業の際に先生より教わりました。
なんだか素敵な話だなぁと印象深かったので、よく覚えています。
境内の中で御本殿の隣にある飛梅が、一番に花を咲かすというのも素敵ですよね。
今でも道真公を慕っているようで……。
これから見頃を迎える境内の梅の花を、梅の香りとともに楽しんでくださいね。
その際は、桃色のおみくじと梅ヶ枝餅もお忘れなく。

アクセス

住所:福岡県太宰府市宰府4丁目7番1号
最寄駅:西鉄太宰府駅 太宰府天満宮へは徒歩5分程度
参拝時間
開門時刻:春分の日より秋分の日の前日まで 6時00分/上記以外の日 6時30分
閉門時刻:4月・5月・9月・10月・11月 19時00分/6月・7月・8月 19時30分/12月・1月・2月・3月 18時30分